飛翔の術を使って降り立った先は、正に阿鼻驚嘆の地獄絵図に酷似していた。

死んだ兵士が立ち上がって、敵味方関係無く襲い掛かる。襲われ喰われた兵士が、また立ち上がる。

そして、ソレにすら爪を振り上げ牙を立て、屠り喰らう――――――熊より大きな汚れた虎。




 




 




 






禍神、現る、の巻。

~くんなって言ったじゃんあたし!!~





 




 




 




 
兵士達は、見るからに混乱してた。

どうして戦場に、人間以外の、獣がいるのか。

どうして、獣に噛み付かれ肉を喰われて絶命した筈の人間が、立ち上がるのか。

どうして、元は味方だったその死体が、自分達を襲うのか。

誰も彼も、解らなくて混乱していた。





とん、と。

地面に足を着くと同時に、飛び掛かってきた野犬共を撃ち落とす。

ぎゃうん!!と鳴いて転げ落ちたソイツの目は、赤く濁ってた。





――――――ちっ。多いな。

まさかこんなに、狂気に引き摺られた獣がいるなんて。

しかも、既に両手の指の数じゃ足りないくらいの屍肉喰らいが生産されてる。

加えて、濃い瘴気の所為で視界も悪い。





「ひぃっっ!?」

今まさに、兵士を襲おうとした屍肉喰らいのドタマぶっ飛ばし。

がんがんがん!!と近場の獣も撃つ。





「あ、あ――――――」

「さっさと逃げな!!」





へたり込んだソイツに吐き捨てながら走り出せども、数メートルとたたずに行く手を遮ってくれやがる屍肉喰らい。

「邪魔!!」

あたしは、あの虎に用があるんだ!!





がん!!と胸部にでっかい穴をこさえれば、右から猪が突っ込んでくる!!

いくら猪突猛進だからって!!

舌打ちながら眉間を撃てば、今度は狼が左から!!・・・・・・って、げっその後どころか四方八方から狐!?

多過ぎだこんちくしょう!!





「先生!!」

斬――――――!!





がんがんがん!!と目の前の獣を撃ち落とすと同時に、でっかい剣があたしの死角から襲って来ようとしてた獣を吹っ飛ばした。

「大丈夫かい、先生?・・・・・・にしても、こりゃまたすっごい事になってんねぇ」

・・・・・・・・・・・・って。この、声。

「~~~~何で風来坊こんなトコいんの!?」

あたし引けって言ったよね!?ねぇ言ったよね!?





思わずムキーッと頭掻き毟りたくなったトコに、背後から屍肉喰らい。

だけどソイツは、振り下ろされた6本の刀に、盛大に吹っ飛んだ。

「よぉ。油断は禁物だぜ?」

「ひ、筆頭さん!?」

おたく一国の主じゃないの!?





口をぱくぱくしてる間にも、筆頭さんの背中を守る様に屍肉喰らいを切り捨てる腹心さん・・・・・・腹心さん!?

「って右目まで!!あんたナニご主人こんな危ないトコに突っ込ませてんの!!止めなよ!!お目付け役でしょ!?」

「・・・・・・・・・・・・悪い。ソレ以上言わねぇでくれねぇか。頼むから」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん。ごめんもう言わない。





「・・・・・・せんせい、よそみ、だめ。」

沈痛な声に消沈したあたしの横には、何時の間にか野犬に苦無を放つ小太までいるし。





「・・・・・・・・・・・・うんだからごめ・・・・・・ぢゃなくて!!何でおたくら来てんの!!」

「Ah?邪魔しなきゃいーんだろ?」

「兵士達は成実と鬼庭に任せて、あのまま待機させてる」

「うんソレはありがとうって違う!!俺が言いたいのはっっ」

「美人は怒っても美人だっていうのはほんと・・・・・・っていやいや、ああは言ったけどさ、実際先生1人じゃココ抜けるのもきついだろ?」

「・・・・・・せんせい、まもる。こたのしごと。」





――――――・・・・・・・・・・・・うん。もういい。

なんか疲れた。





「・・・・・・・・・・・・仕方ない・・・・・・・・・・・・けど!!怪我すんなよ!?おたくら婆裟羅者は憑かれ易いんだから!!」

「え。そなの?」

「そーなの!!・・・・・・ったく。だからくんなっつったんだよ俺は!!」

「・・・・・・政宗様、今からでも遅くはありません。ココは玄人であるの言葉を受け入れて――――――」

「Ah?小十郎、お前まさかこの俺に敵前逃亡しろってのか?」

「・・・・・・・・・・・・」

「こたは、はなれない、から。」





――――――・・・・・・・・・・・・うん。ほんと、もういいや。





でっかい溜息を吐きながら襲い掛かってくる野犬をまた撃ち落として。

「・・・・・・・・・・・・取り敢えず。あのでっかい虎んトコまで突っ切るから。援護よろしく」

半分投げやりなイキオイで言ったら、 「応!」 ってすっごい景気のイイ返事が返ってきて。





あたしはまた、でっかい溜息を吐いた。




 




 




 











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