「あれ?先生は団子食わないのかい?もしかして甘いの嫌い、とか?」

気付いた風来坊が背中を反らせて呼び掛けて来た。

ソレにあたしはふるりと首を横に振って。ソレから。



 




 




 






風来坊、嵐を持ってくる、の巻。

~なんかこの人すっごいの憑けてきてんですけど。~





 




 




 




 
「――――――や。甘味は大好物」

「そっか!なら早くしないと、全部小太に――――――」

「けどアンタに近付きたくない」





どキッパリと言ったら、ぴきんっ、と空気が凍った・・・・・・気がした。





「・・・・・・・・・・・・せんせい?どうし、たの・・・・・・?」

あたしの硬い雰囲気に、心配した小太がテコテコと四つん這いでやってくる。

「・・・・・・・・・・・・Ahー・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・幾ら何でもソイツは少し・・・・・・・・・・・・」

筆頭さんと右目さんは困った様に、うろうろとあたしと風来坊の顔を行ったり来たり。





そして件の風来坊はといえば、泣きそうな顔ででもへにゃりと笑ってぱたぱた手を振った。

「・・・・・・・・・・・・あ、あははー。俺の事なら気にしなくていーよ独眼竜、右目さん。誰にだって、好き嫌いってのがあるんだしさ」

とか言いつつすっごい無理してますね風来坊さん・・・・・・って、あたしの言い方も悪かったんだども。





「・・・・・・アンタが嫌いな訳ではないんだけどね」

「じゃ何で!?」

うわ喰い付き早っっ!!

コレ理由言わなきゃダメ?・・・・・・ダメだよね。





「・・・・・・・・・・・・アンタの――――――」

「俺の!?なになに!?ねえ何!?」

何でそんな必死なんですか風来坊。





「――――――アンタの連れて来た風が、宜しくない」

「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」」」」





・・・・・・・・・・・・どぉしてみなさん目が点になってるんでしょーか。

あたし何か変なコト言った?――――――言ったねうん確かに。





「・・・・・・・・・・・・かぜ?俺風邪なんか引いてないぞ?」

「病の風邪じゃない。風、だ」

「――――――おい、。如何いう意味だ、そりゃ?」

「其のままの意味だけど」





たった、一陣だ。

たった一陣で、青葉城の空気を澱ませた・・・・・・・・・・・・あたしのいる、ココを。

ソレだけの、瘴気だった。

今もまだ、名残が風来坊に纏わりついている。





血臭。腐臭。鉄に油に火薬の匂い。

慾と恨みと苦痛と嘆きの陰。

踏み荒らされる草、倒され腐る樹、蒸発する川、焼ける大地の声無き悲鳴。





「・・・・・・・・・・・・人というものは、多かれ少なかれ穢れを纏う生き物だけど、さ」

なのに、彼がココまで穢れを纏ってしまったのは・・・・・・きっと、彼が風に愛されていたから、なんだろうと思う。

風に愛されて、だから行く先々で病んだ風に助けてと縋られたんだ。風来坊の気質――――――魂の色は、とてもキレイだから。





ふ、と息を吐いて。隣であたしの顔を覗き込む小太の頭を撫でる。

小太だってそうだった。あの時の謡で、大体は浄化されたけど。やっぱり、普通じゃないくらいの澱みの風を、纏っていた。

小太だけじゃない。拾った時の筆頭さんも、初めて会った時の腹心さんも。周りの人と比べると、そりゃあ、見事に穢れまくりだった。

多分ソレは、この〈界〉の、バサラとかいうのに関係してる、と思う。

・・・・・・こーゆー時、もーちょっと頑張って原作プレイしとくんだった、って思うよ。その辺すんごいうろ覚えだから。





視線を、小太から風来坊に移す。

ソコまでの穢れを纏って、どうして身体を壊さないのか不思議だけど。





「――――――風来坊。アンタ、此処に来る前は何処にいたの」

見据えたあたしの問い掛けに、風来坊はぐびりと息を呑んだ。




 




 




 











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