遥か遠くに見えた巨大な門。沢山の敵兵。 戦を知らせる法螺の音。喧噪。馬が駆ける蹄の音。怒号。風にはためく旗の音。 ついさっきまで平和だったハズのこの場は、確かに今、戦場と化していた。 |
土地神様、戦場に降り立つ、の巻。 ~恨まれてますか?恨まれてますよね!~ |
「栄光門が閉じられたら厄介だ!!アソコまで一気に突っ込むぞ!!」 『Yeahーーーーッッ!!』 筆頭さんの怒号に、見た目暴走族軍団と化していた伊達軍は、ノリに乗った返事を返す。 そんな彼等を一瞥して、あたしは溜息を吐いた。 「・・・・・・テンション高っ。」 「Ha!!ったりまえだ!!」 あたしを後ろに乗せて馬を走らせる筆頭さんも、心なしかイキイキしていて。 ・・・・・・・・・・・・まあ、士気が低けりゃ戦争になんて勝てませんが。 でもあたしは気が乗らない。 何故か? ――――――だって、コレが戦争だから。 人を殺すのは嫌い。 死にそうな目に合うのも嫌い。 殺さなきゃ殺される事もあるって、ハンター世界で充分過ぎるホド学んだけれど。 ソレでも、嫌いなモノは嫌い。 あたし、何でこんな事してんだろう。 目の前の、弱り切って死にかけた土地を助けるワケでもなく。 何で、兵を率いる筆頭さんの後ろに、いるんだろう。 あたしの仕事は、澱み穢れの浄化だった、ハズなのに。 ・・・・・・・・・・・・こーゆー時、ほんっと自分の流されやすい性格がイヤんなってくる。 ふ、と。今度は筆頭さんにバレない様に息を吐き。 手綱も持たず、既に2本も抜刀してる筆頭さんの後ろで、ばたばた馬に轢かれて蹴散らされる敵兵さん達を横目で見送って―――――― 「――――――政宗!!」 呼び掛けと一緒に、あたしはウォレットチェーンを鞭の様に撓らせた!! キィン――――――ッッ!! 甲高い金属音と共に、あたしのチェーンに弾かれたのは、苦無。 「Shat!!忍か!?」 勢いの落ちた馬の上で、筆頭さんが頭上を振り仰ぐ。 地上はこんなにも土埃と怒号と血の匂いが充満してるっていうのに、憎たらしくなるくらいに真っ青な空。 ――――――その、一点に、影。 顔の上半分が鉢鉄で隠れた、忍刀を背負う、白と黒の装束・・・・・・紅い、髪の。 「Hay、てめぇが伝説の忍か!」 うっわ、ホントのホントにモノホンの小太郎だよアレ!! しかもさっきの苦無、筆頭さんってゆーよりあたし狙ってたよね!? さ、殺気なんかも、やっぱりあたしに向けられてますよね!? ええええやっぱりあたしがあの時簀巻きにしたのって小太郎だったの!?んで根に持たれてんの!?ねぇ持たれてんの!? 筆頭さんの声には無反応で、小太郎は凧から手を放して、ちゃき、とまた苦無を数本構える。 ――――――あたしをターゲットにしてるよやっぱり!! 「先に行きな!!」 「Ha!?おい!?」 あたしは慌ててタンッと馬から飛び降りながら、ついでにベチンッと馬のお尻を叩く。 イキナリの事で止まれなかった筆頭さんは、そのまま閉まり掛かった門へと突進していった。 その後ろ姿を確認して、あたしはくるりと空中で反転しながら再びチェーンを振るう。 キン、キィン!! 飛んできていた苦無をはたき落としながら片膝を着いて華麗に着地。うん。10点満点。 とか思ってたら、既に目の前にまで刀を抜いた小太郎が突っ込んできてて。 うわヤバ!!――――――なーんて、このあたしがそんな初歩的行動を見落とすハズがないさ!! ぎぃん!! 「っ!?」 驚いた様に、小太郎が息を呑む。 上段から振り下ろされた忍刀を、下段から掬う様に受け止めたのは、あたしがポーチから引き摺り出した『舞扇』。 使ったらしまえ、って何でもかんでもポーチに突っ込んでたに感謝! コレからはあたしも頑張って出したら入れる、をクセにしたいと思います。 ギチギチと、刃と『舞扇』の噛み合う音。 このまま力押し?・・・・・・・・・・・・試しの門を4まで開けた、あたしの腕力にゃめんにゃよ!? ぐ、と下段から力を込める。 体制的には、片手で、しかも逆手で『舞扇』を持つあたしの方が不利。 だけど実際に押されてるのは、上から圧力を掛けているハズの小太郎の方で。ずり、と。彼の、体重を掛けている足が、下がる。 「――――――っっ!!」 力に押されて、彼が距離を取ろうと地面を蹴ろうとする素振りを見せる。 注意1秒怪我一生!!!! あたしは空いてるもう片方の左手でザッ!!とジャケットの内側から拳銃を抜いた。 ドゥン――――――!! 標準を合わせるまでもない、至近距離からの発砲。 だけど小太郎は、無理やり身体を捻ってソレを避けた。 ってアレを避けるなんてサスガは伝説だね!!その所為で今度はでっかい隙が出来てるけど!! がらんどうになった胴に、あたしの蹴りが鮮やかにドカッ!!とクリィンヒットする。 ・・・・・・うっわ。感覚的に絶対肋骨何本か折れた。 しかもかなり体重乗せた蹴りだったから、モロに受けた彼は見事に吹っ飛んだよ。 ゆたり、と姿勢を正しながら、あたしは膝を着いた小太郎に声を掛ける。 「――――――さて、と。お前程の腕の持ち主なら、俺の力量も測れる思うけど――――――未だ、続ける?」 彼は蹴られた脇腹を片手で押えながら、ぎり、と。本当に悔しそうに唇を噛んだ。 |
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