実に数ヶ月ぶりに、あたしはポーチから引っ張り出した自前の服に腕を通す。

あたしの服は白系ばかり。だから黒地のコレは、のもの。

やっぱね。着慣れない着物なんかよりも慣れた洋服の方が動き易いからね。うん。




 




 




 






土地神様、戦場に降り立つ、の巻。

~あたしは何時でも重装備さ!!~





 




 




 




 
「・・・・・・・・・・・・Hey、。何だその格好は」





みんなの前に現れたあたしを見て、筆頭さんが開口一発目にしたのはソレだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん。視線がグサグサ突き刺さってイタいです。

しかも突き刺してんの筆頭さんだけじゃないよ!腹心さんとか伊達三傑の人達とかその他モロモロもだよ!!





じろじろ、じろ。

上から下まで、そんな値踏みするよーに見ないでクダサイ。

――――――ま。見た事もない格好だろうから仕方ないだろうけどね。





身体のラインを強調する様なノースリーブの上から、太腿までの長さの立て襟のジャケット。

ソレから指無しの手袋に、レザーパンツの裾はアーミー系の黒いロングブーツの中。

そして腰には毎度お馴染み、4次元ポケットなポーチ。

――――――・・・・・・・・・・・・青い特服団体の中で、異様に浮いておりますあたくし1人だけ。





「ドコにそんなん隠し持ってやがった」

「・・・・・・Trade secret (企業秘密) 」

ポーチの中から引き摺り出してきました、とはサスガに言えません。





あたしに言う気が無いのを悟った筆頭さんが、仕方なさげに溜息を吐く。

だってあたしの事は詮索しないって筆頭さん約束したしね。上辺だけは。色んなトコに忍飛ばしてるけど。

奥州の最北のこれまた海の向こうからやってきた腕の良い異国の医者ですって通して、すでにソレ定着してるんだもんね。





「・・・・・・・・・・・・。お前、用意しておいた鎧は如何した」

「There in no necessity (必要無いよ) 」

着慣れなくて動き辛いモノなんて、戦争に着て行けません。

と、ドきっぱり腹心さんの質問に言い切ったら、ミナサマに呆れた様な目を向けられました。





「必要無ぇって・・・・・・、あんたな・・・・・・あまりにも軽装過ぎだろ?」

まあ、うん。見た目はね。筆頭さんの言いたい事も解ります。けどコレ念込め済のヤツだから。

「そーでもない」

このジャケットの袖なんて、すっごい丈夫な手甲並みに刃物受け止めるよ?・・・・・・試しはしないけど。





「・・・・・・ですがせめて、胸当てくらいは着けませんか、殿」

いえ、そうは言いますが綱元さん。

「機動性が落ちるのはちょっと、ね」

動き難いのはイヤです。断固拒否です。





「・・・・・・でもさ、せんせー。そんな見た事もないよーな目立つ格好、戦場じゃ 『襲って下さい』 って言ってるよーなモンだよ?」

「幾ら腕が立つとはいえ、殿は医者でしょう?大丈夫なのですか?」

ええ、そーですね。でもね成実くん綱元さん。

「だいじょーぶ。襲われるつもりは無いさ」

前みたく突っ切るし。刀向けられる前にトンズラこくさ。





ソレでも納得しかねるミナサマの表情に、あたしはふ、とひとつ息を吐く。

そして。





――――――ヒュッッ





「ぅわっ!?せんせー!?」

一番近くにいた成実くんの首目掛けて、右脚を振り上げてやった。

驚いた成実くんは腕でブロックしながらあたしの脚を止めて、その爪先を見てぎょっとする。





「し、仕込み刃!?」

「こんなんもあるよ」

言いながら、今度は左手首から、袖の中に仕込んでた平たい刃をスラッと抜いて振り上げた脚を引きながらまた首を狙う。

「うをっ!?なんでそんなトコから!?」

「陰剣、ていうらしい――――――後は、こういうものとか」





左のふとももに着けてたホルダーから抜いた千本を3本ほど、後ろに跳びずさって陰剣を避けた成実くんの足元に飛ばして蹈鞴を踏ませ。

腰に着けてたウォレットチェーンで更に追い打ち。

「ちょっ、まっ、うわっ!?」

「待たない――――――ほら、チェックメイト」

そして、バランス崩してどてんっ!と尻もちついた成実くんの額に、ピタリとジャケット内部の脇のホルダーにさしてた拳銃の銃口を向けた。





「――――――コレでも、まだ不満?」





お遊びはコレっくらいでイイかな、と。

ぽかん、と口を開けてあたしを見るミナサマに、拳銃を引きながらそう宣言してやる。

そしたら、ふしゅるぅぅう、と気の抜けたミナサマがでっかい溜息吐き出した。





「・・・・・・確かに・・・・・・不意打ちとはいえ、成実を其処まで追い詰められるのですから・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・そういやお前、あの風魔を簀巻きにした時は素手だったよな・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・てゆーかどんだけ武器を隠し持ってるんだよ、せんせー・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「まだあるよ」

「まぢで!?」





サラリ、と言ったら盛大に驚かれました。

そんな中、筆頭さんだけは驚愕もソコソコに油断なくあたしを見据えてたけど。





「・・・・・・・・・・・・・・・・・・Hey、aren`t you really a sinobi? (なあ、あんた本当に忍じゃねぇのか?) 」

あ。やっぱし思考はソコに行くワケですね。

「Yes、it`s really different (うん、本当に違う) ・・・・・・・・・・・・俺に戦い方を教えたのは、元忍者だったけど」

「・・・・・・Ah indeed (ああ、なるほど) 」

しかも納得した。筆頭さんだけじゃなく三傑さん達までうんうん頷いて納得した。

――――――まあ、納得してくれるんならいっか。





「身を守る方法も武器も持ってる。雑魚に殺されるつもりは無いよ」

ミナサマに宣言して、あたしは、に、と不敵な笑みを浮かべてやった。




 




 




 











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