「あんたは自分を術師・・・・・・陰陽師だと言ったが、そんなモン、今じゃ殆ど紛いモノばかりで本物は俺ですら見た事が無ぇ」

真正面から、不敵に素敵な笑みでコチラを見据えて下さる筆頭さん。

その視線に耐えながら、あたしはぐるぐる考えを巡らす・・・・・・・・・・・・なんかナイかな。コレ回避できる方法。




 




 




 






不審者、お城へ招待される、の巻。

〜随分と遅い自己紹介ですが。〜





 




 




 




 
睨み合いはしばらく続いた。

筆頭さんはあたしの腹を探ってる感じだし、あたしはどーしよーこれー、とぐるぐるするだけ。





だって、ほんとーの事なんか言ったって、多分信じてはくれないだろうし。つか普通信じられないし。

言ったら余計不審者だ。てゆーか頭弱いのか?って思われるかも。

でも下手な言い訳もなぁ・・・・・・嘘はあんま吐きたくないし。





ほんともうどーし

「まあ、あんたが俺のBenefactorである事も敵で無い事も紛れもねぇ事実だから別にいーんだけどなあんたの素性なんざ」

「ってイイんかい。」





さっきの真剣さとは一変して、にやにやと笑みを浮かべる筆頭さんに、あたしは思わずツッコミ入れた。

だけどやっぱりニヤニヤをやめない筆頭さんに、溜息も自然重くなる。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・其れで良いのか一国の主」

思わず指でコメカミをぐりぐりもするってもんですよ。

「いーんだよ俺は」

いやそんなふんぞり返って言われてもね?





「ソレにあんた、小十郎に言ったろ?」

小十郎・・・・・・腹心さん?何言ったっけ?

「俺はまだ若ぇから、小十郎が疑ってかかるくらいで丁度良い、ってよ」

・・・・・・あー、うん言いました。

「俺の寝首掻く為に取り入ってきたヤツが素で言える科白じゃねぇよな。さっきの、其れで良いのか、ってのもよ。あんたActing全然得意そうにゃ見えねぇし」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ソレは貶してるんですか?貶してるんですね?

そりゃあたしみたくポーカーフェイス得意じゃないけどさっっ。





「・・・・・・・・・・・・俺が本当に、その寝首を掻きに来た奴だとしたら如何するんだよ」

「ソレは無ぇ。絶対無ぇ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だから、何故そう言い切れるんだって」

「Intuition。俺のは今まで外れたこたぁねーんだぜ?」





・・・・・・・・・・・・いやだからって。そんなけんもほろろに言い切らなくたって。

もーちょっと危機感とか持とうよでないとあの腹心さんいつか胃に穴開くよ?





しみじみ。ホンットーにしみじみとふっかい溜息を吐いてちょっと遠くなりかけた意識を引き戻す。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・で、あんたは何をしに来たんだ奥州筆頭」

まさかヒマだったから、だとか言わないでしょうねケガ人。





疲れ混じりに聞いたら、筆頭さんはきょとんとした顔をした。

んで、ぽん、と手を叩いて。

「Ah、あんたを呼びに・・・・・・って、何時までもあんた、ってのも呼び難いな。あんた、名は?」





あれ?あれれ?

「――――――言って無かったか?」

ココ数日ずっと一緒にいたのに?

「聞いてねぇ」

あらら。まぢですか。





「What your name?」

「――――――・・・・・・・・・・・・My name is・・・・・・・・・・・・だ」

「OK。――――――良い、名前だな」

「・・・・・・そう?」

「ああ・・・・・・優しい響きの、綺麗な名だ」

「・・・・・・・・・・・・其れは、どうも」





・・・・・・うーわー。はーずかすぅーい・・・・・・

なんかホント、こー、ボンっ!!て顔に血が集中しそうなトコまでキましたよ。

しかもしかも、ふっ、て感じの笑みが男の色気を醸し出してるってゆーか何てゆーか。

・・・・・・・・・・・・あたしこの人パッと見受け属性だって思ってたのに、もしかしなくても攻め属性ですか?





つかこの人いまサラッと言ったよね?たらし??たらし常装備???

しかも男にも発動するなんて、どんだけ節操無いんだ天然か天然なのか!?

・・・・・・こりゃ、泣かされた人なんて男女問わずいっぱいいるんだろーなぁ・・・・・・





そんな事あたしが考えてるなんて筆頭さんは露知らず。

「もう直ぐ宴が始まる。だからあんたを呼びに来た」

って言いながら、ほら、と差し出されたのは着物。

「あんたまだ一人じゃ着られねぇだろ?」

うん確かにそーなんですが。





ほら立て、って言われて、溜息噛み殺しながら立ち上がった筆頭さんの前にのっそり立ち上がる。

・・・・・・・・・・・・あ。筆頭さんあたしよりちょっと背ぇ低い。





帯を解かれて、肩から寝巻きにしてた着物がストンと落ちる。

代わりに差し出された着物に手を通して、前身頃をばさりとやって。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?

「――――――・・・・・・・・・・・・女物?」

「No・・・・・・ま、あんたなら似合うだろうけどな、華やかなのもよ」

いやコレだってじゅーぶんハナヤカじゃないですか?





上から下に下がるにつれ、白に近い水色から濃紺へと変わっていく、グラデーション。

その濃い濃紺の上には、青白い花に青白い蝶が飛び交っていて。

色は単調だけど、模様が華やかだ。

あたし男物の着物の柄なんて、縦じまくらいしかないと思ってた。

しかも、薄い青の帯にまで白い蝶の柄があしらわれてるし。





「うし、出来たぞ」

「・・・・・・あ、うん。どうも」

ぽん、と帯の結び目を叩く筆頭さんに返事を返す。

ソレにしても。

「Hey、どうした?」

「・・・・・・・・・・・・や、なんか違和感が」

浴衣は高校時代の夏祭りに着たっきりだし、着物なんて生まれてこの方着た事なかったから。

下手な動き方したら帯が解けるんじゃなかろーか、なんて考えながら、自分の今の出で立ちを見下ろす。





「似合ってんぜ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そう、かな?」

「ああ、Very beautiful。目と髪の色に良く合ってる」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・うんアナタが天然たらし常装備なのはもー解ったから。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ソレハドウモ。」

取り敢えずあたしは片言でソレだけ言って、筆頭さんから視線を逸らした。




 




 




 











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