「・・・・・・・・・・・・疲れた。」 いやもぉホント。 こんなに疲れるなら、発光体の泣き落としなんてスルーしとけばよかった。イマサラだけど。 |
戦国武将、拾っちゃう、の巻。 〜スキルアップしました。〜 |
気を失った彼の傷を手当てして。 浄化の祝詞を口ずさみながら、熱の所為かぶるぶる震えてる彼をフードマントにくるんで足の上座らせてぎゅってしてたら。 すっかり一夜が明けておりました。 ・・・・・・や。別に1日2日寝なくても大丈夫なんだけどね。 あたし惰眠を貪る事すんごい大好きなのに。 明るくなった空を、手を翳して見上げる。 ちくせう晴天だ。カラッとしすぎて逆にムカつくくらい晴天だ。 そんなあたしの耳に、聞こえてきたのは鳥のさえずり。 『みこさま』 『みこさま、おこってなさる?』 「ん?――――――いんや?」 つか何で鳥や獣の鳴き声が言葉として変換されるんでしょーか。 あたしそんなスキルなかったハズなんですけども。 『おおかみさまがおっしゃった』 『たすけてほしいとおっしゃった』 『みこさまとちをきよめてくださる』 『みこさまわれらをすくってくださる』 『おおかみさまのみしるしもったみこさまが』 『みしるしのたまをもったみこさまが』 『そのみこさまのおてつだい』 『してほしいとおおかみさまおっしゃった』 うん良く解った。発光体の仕業だな。 どーやらあんとき押し付けられ・・・・・・貰った勾玉が、鳴き声を言葉に変換してるよーだ。 っても、コレで神通力ガス欠間違いなしだろうけど。 「・・・・・・う、ん」 お。コッチは早くもお目覚めですか? アレだけ血を流してて、アレだけの怪我だったのに。 前に落ちた髪を梳き上げて、耳へと掛けてやる。 ・・・・・・・・・・・・しっかし。全くもってイイ男だな。 こんな、死にかけの状況じゃなければ、アッハンな妄想全開バリバリなのに。 あたしの左の肩に凭れていた頭が、ゆるゆると動いて、眼帯に隠れてない、左の目尻がふるりと震えた。 「――――――目、覚めた?」 うっすらと開いた瞼の奥。琥珀にも似た明るい茶色。ぼう、と霞んだソレはまだ夢の中にでもいそうな雰囲気。 けどそれは、一拍後には苛烈な意思を取り戻した。 「・・・・・・っってっ、めぇ・・・・・・っっ、さ、きは、よく、も・・・・・・っっ、つっ!!」 ・・・・・・・・・・・・戻ったと思ったらまたコレですか。 「暴れるな怪我人。傷開く」 「Shit・・・・・・!!てめ、に言われ、る、筋合、はねぇ・・・・・・っっ、はな、せ・・・・・・!!」 ・・・・・・・・・・・・ああ言えばこう言う・・・・・・・・・・・・誰だこんな我が儘に育てやがったのは。 「筋合い?筋合いならあるさ――――――アンタの傷の手当をしたの、この俺」 ぐ、とうるさい口を閉ざす為に、離せ触るなって喚いてる彼の頭を肩に押し付ける。 そしたら上から声が降ってきた。 『みこさま、みこさま』 『くだものどうぞ』 『おいしい、くだもの』 『みこさま、どうぞ』 鳥さん達が嘴に、葡萄みたいのや枇杷みたいなの (色がビミョーに違うからココはあえてみたいなの、で。) 咥えてた。 「――――――ああ、ありがとう」 右手を差し出せば、掌に果物が置かれて。 置けなかった分は、狐さんが引き摺って来たでっかい葉っぱの上に。 『みこさま、みこさま』 『さかな、いりますか?』 『かわのさかな、いりますか?』 あたしの足元で、その狐さん含む数匹、ぱたりと尻尾を振ってお伺いを立ててくる。 「――――――ん、魚はいいよ。火を、おこさなきゃならなくなるから」 だけどありがとう、と。笑ってお礼を言ったら、狐さん達はもう一度ぱたりと尻尾を振って、あたしの横にちょこんと座った。 ――――――ん? そーいえば、さっきからじたばたが収まってやしませんか? 不思議に思ってちろん、と視線を戻してみれば、何故だか目をまぁるくして果物を見ている彼の顔。 ・・・・・・・・・・・・この人公式設定の年いくつだったっけ・・・・・・・・・・・・あー、確か19? にしてはなんっかこの驚き方とか幼いんですけどー。 「――――――食える?」 取り敢えず声を掛けてみた。 したら、ハッとした様にまたバタバタしだした。 「っ、て、めぇっ、忍、か!!」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぃい? 「忍?――――――誰が」 「てめ、ぇ、だっ!鳥、や、獣、を、使役する、なんざ、忍、以外・・・・・・!!」 ああ、確かに見様によってはそーかもね。 だけど。 「使役なんかしてない――――――この子等はただ、俺に力を貸してくれているだけ」 そこんトコ間違えちゃダメよ、おぅけぃ? 「Ha!!なに、言っ、てやが、る・・・・・・しんっ、られ、かよ、んな・・・・・・うぶぐ」 「・・・・・・・・・・・・黙って食いな」 アナタ今大ケガしてるんだから重傷なんだから。 暴れて傷開いて最悪ぽっくり、なんて。笑い話にもならないっての。。 なので強制的に口ん中に皮を剥いていた枇杷(?)突っ込んで大人しくさせました。 そんな彼を抱えた状態のまんま、あたしはあたしで葡萄(?)をぱくりと口に含む。 ・・・・・・・・・・・・む。むむむ。甘いです瑞々しいです美味しいです。 やばい何か止まんない。 ぱくぱくと口を動かしてたら、彼もよーやく観念したのか、口に突っ込まれた枇杷(?)にもそり、と歯を立てた。 味覚にかなり合ったのか、ちょっと驚いた様に瞠目して、ソレから嬉しそうに美味しそうに咀嚼しだす。 ・・・・・・・・・・・・なんかカワイイ。 ぷちん、と房から摘んだ葡萄(?)を見せたら、あ、と口を開けたりなんかして。 ――――――餌付け?餌付けですかコレは!? 一見くーるびゅーてぃーさんなのにこんなにきゅーとなのってどうよ!? ・・・・・・・・・・・・やばいまずいホンットまぢやばい。 ああああ、おつちけ!!じゃない落ち着けあたし!!腐女子の妄想は一般ぴーぷーにはかなりの毒だ!! ハイ深呼吸!!すってー!!はいてー!! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふう。と、取り敢えず理性がうぃなー。 彼の事は・・・・・・直視しないでおこう、うん。 どーにかこーにか理性を立て直して、まだまだある枇杷(?)の皮を向いて口に放り込む。 んで、ぷちん、と房から摘んだ葡萄(?)の実を空になった彼の中にちょーど放り込んだ時だ。 『――――――御子よ』 さっきまで聞こえた鳥や獣の声よりも重厚で、しっかりとした声が鼓膜を震わせた。 首を巡らして視線を向けた、其処には。 「・・・・・・・・・・・・アンタこの森の、長?」 何時の間やら、枝には鳥が集い、あたしを囲む様に大小様々な獣達が伸びやかに屯していた。 その、獣達が。道を開ける様に左右に引いた。一本の筋の上に。 美しい、白い大蛇。 『御礼、申し上げまする。御子よ』 「イイよ礼なんて。――――――未だ息吹いてはないし」 『いいえ、いいえ、充分に御座いまする。御身は穢れを祓って下さった。澱みを清めて下さった』 「其れがアレからの頼みだからね。そして俺は引き受けた――――――違えは、しないさ」 『なれど重ねて。慈悲深き御子。この森の長として、この地を預かる者として、厚く、厚く御礼申し上げまする』 深々と。大蛇はその綺麗な胴を静かに動かし、鎌首を下げてあたしの前に頭を垂れる。 ・・・・・・や。だからそんな、畏まられてもね? ・・・・・・・・・・・・ああああ。腕の中の彼がすっごいびっくりして固まってるよ。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・頭を上げてくれないかな、土地神」 「What!?とっ、とちが・・・・・・っっ!?」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ。ついぺろっと。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・や。まあいーやスルーしちゃえ。 「其れでも礼を、っていうなら。ひとつ、頼まれてくれないかな」 『何なりと』 「彼を、彼の帰りを待つ人達の元へ、送り届けたい」 「・・・・・・・・・・・・え・・・・・・・・・・・・お、れ・・・・・・・・・・・・?」 「何を当り前な――――――道案内、頼めるかな?」 『承知――――――これ、其処な狼』 ゆらり、と大蛇の尻尾が動いて、指された獣が前へ出る。 年の若い狼さんだ。綺麗な灰色の毛並みがまた手触り良さ気な。 『みこさま、あない、いたします』 狼さんはそう言って、ぱたりと尻尾をひと振りあたしを促す。 「頼むよ」 あたしはこくんとひとつ頷いて、腕の中の彼もそのままに立ち上がった。 「う、わ・・・・・・!」 「バランスが取れない様なら首に腕巻き付けてな」 そのほーがあたしとしても楽だ。 狼さんの後を追っかけながら言ったら。 さっきまでの猜疑心はドコへやら。彼は大人しくきゅっと首に腕回してきた。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん。直視はホンットすっげぇやばい。 |
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