「・・・・・・・・・・・・まぢですか。」 悠長に 『あ。コレ差し上げますぅ』 なんて勾玉引っ張り出してきた発光体を脅し・・・・・・いやいやお願いしてさくっと地上へ降り立ったあたしは。 目にしたソレに思わずでっかい溜息を吐いた。 |
戦国武将、拾っちゃう、の巻。 〜もしかして彼ってアレですか?〜 |
多分、どっかの林か森か何か、なんだろう。 直ぐ横には川。 空の星が月が水面に映って、水の透明度がどれくらい綺麗かが解る。 しかも重そうな雲で覆われた夜空から降ってくるのは雪。そんなに多くはないけど、白一色に染め上げるくらいには、積もってる。 吐く息は白くて、刺さる様に空気が冷たい。・・・・・・・・・・・・あたしに初っ端から遭難しろってか。 ソレだけじゃココがどんな世界なのか、だなんて解りっこないけど。 ピンポイントで答えの解る物体が、其処にいた。 「――――――生きてるかー?」 取り敢えず、血ぃだらだら流しながら身体の半分川の中に突っ込んでるその物体・・・・・・いやいや人物に、声を掛けてみる。 ・・・・・・・・・・・・うん。返事がない。 どうやら屍のやうだ。 「・・・・・・・・・・・・う・・・・・・・・・・・・」 っていややっぱ生きてた。 呻いたよ今。この人。 生きてるんなら行動だ。 手当、してやんないと。 ぱしゃり、と浅い川瀬に足を踏み入れて、彼の傍らに膝を着く。 んで、浸かってる水からその身体を抱え上げようと手を伸ばし・・・・・・ 「っ!」 「!?」 びっっっ、くりした。 全く動く気配のなかったその人が、イキナリあたしの手をはたき落としてばばっ!!と飛びずさったから。 だけどやっぱり傷が痛いのか、ばちゃん!!と両膝を着いて大きく肩で息をしている。 「無理を――――――」 「Don`t approach!! (近付くな!!) 」 ・・・・・・うん。 コレは子猫を取り上げられた母猫もまっつぁおな警戒様だ。 引っ掻かれるのは覚悟しとかなきゃ。 ちっちゃい溜息ひとつ。 ソレからあたしは、はたき落とされた手で前髪を掻き上げて。 ――――――次の瞬間には彼の両腕を掴み上げてた。 「っっ!!Wait!!はなっ・・・・・・!!」 「五月蠅い怪我人、大人しくしてな」 暴れようとする彼を力で押さえ付けて、ゴーインに横抱きで抱え上げて川瀬から離す。 ・・・・・・うっわ、軽っ!!何だいキミホントに男!? 痛みが響いたのか、ソレともあたしがちょっと乱暴だったからか、またまた小さく呻いた彼の身体が、あたしの腕の中で強張った。 そのまま有無を言わさず近くの木に近付いて。 今度はゆっくり、身体に響かない様に彼を地面に座らせその背中を幹に凭れ掛けさせる。 浅く息をする彼は、痛みで再び気が遠くなってるみたいだ。 伸びるあたしの手を見て払い落そうとして、なのにその手はあたしの手にヒットせず宙を切る。 ・・・・・・やー。ココまで警戒心バリバリだとちょっと悲しいモノがありますね。 でもあたしってばもーこの人助けるって決めちゃったし。 取り敢えず、傷の具合を見るに中級の回復一発、ってトコか? つーワケで早速さくっと。って思って息を吐いて。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・固まった。 ――――――え。ちょ。何でココこんなにエーテルの流れがまばらなの。 なんかビミョー、どころかかなり、澱んだの混じってるし。 集めようと集中すればするほど、暗く濁って病んでるのが、解る。 ざり、と足元の地面を撫でてみた。 ・・・・・・・・・・・・アーグも、だ。 この森(?)は見た目もまだイイし発光体が言ってた程じゃないや、って思ってたけど。 弱って、る。凄く。底の方で、周囲にあるんだろう、穢れた土地に侵されて、命が、細くなってる。 これじゃあこの森(?)が死ぬのも時間の問題だ。 要所要所を浄化してくれればイイって発光体は言ってたけど。 「――――――間に合うのか、コレ? ・・・・・・・・・・・・いや無理。十中八九無理でしょう。 コレはもー、片っぱしから浄化していくしかないぞ。 「・・・・・・く・・・・・・っ」 ・・・・・・あ、痛そう痛そう。いけない。ケガ人忘れてぐるぐる考え込んじゃうトコだった。 魔法一発って思ってたけどこんな弱々しくて不揃いでしかもなんか混ざってるエーテルなんて回復には使えない。 アーグ・・・・・・忍術もダメだ。が使えるからってあたしは使い方を 『思い出す』 事もしなかった。 魔術があるからって、回復系の念能力なんて開発してもいない。 ・・・・・・くそう。ちょっとくらいメンドーでも、回復系の念を開発するか仙掌術くらい出来る様にしておけば良かったよ。 って、そんな事を今考えたって意味がない。 回復魔法使えない仙掌術使えない、だったら他に出来る事を。 あたしはぼんやりまなこの彼の前にしゃがみ込んで、ポーチを漁る。 出したのはふたつの瓶。ソレゾレ白い錠剤と、カプセル入り。 蓋を開けて、1錠ずつ取り出す。 「飲みな」 「・・・・・・Ha、だれ、が、んなモン・・・・・・」 「鎮痛と、解熱剤だ・・・・・・良いから飲みな」 ずい、とやっても明後日の方に顔を向けてコッチを見向きもしない。 ・・・・・・ほーかそーくるかならあたしも。 あたしは薬瓶をポーチにしまい、6角形のガラスの瓶を引っ張り出した。 安い値で作った念具だ。コレ1本200ジェニー。でもあたしは元のオーラ量がアレなんで、けっこー使える。 しかも手作り工房のガラス細工屋さんで購入した瓶に、中身はの作った栄養ドリンクだ。ちなみにアセロラ味。 名前は 『ポーションもどき』 ・・・・・・・・・・・・って言えば、解る人はコレがどんな効力を付属させたモノなのか解るでしょう。 ソレから、出した1錠ずつは口に放り込んで。きゅ、と瓶の蓋を開けてくいっと口に含む。 そして彼の傍らに膝を着きズズイと迫って。 「・・・・・・て、めぇ何・・・・・・っっ!?」 鼻を摘まんで口塞いでやった。何で?モチのロン、口で。 痛みで力なんて入らないのに、ソレでも彼は目を見開いてうーうー唸ってどんどんとあたしの胸を叩く。 効きませんわよおほほのほ。 酸素を求めて開いた口に、あたしは舌を入れて液体を流し込んでふたつの錠剤を奥へ奥へと押し込む。 しかも念を込めて、とばかりに彼の喉をさするオマケ付き。 10秒くらいして、やっとごっくんしてくれた彼に、あたしは、ふっ勝った、と思った。 そしてパッと口も鼻も放してやる。 「っっ・・・・・・ぐっ、げほっ、Shit・・・・・・ッッ、きさ、ま・・・・・・っっ!!」 「ソレだけ元気なら大丈夫だろうけど、さ」 ほんっと、元気だ。 右肩と左の太腿にはまだ折れた矢が刺さってるし、腕と腹・・・・・・コレは太刀傷かな?見事にばっさりって感じなのに。 半分呆れ半分感心。そんな感じの溜息吐きながら、次にポーチから出したのはほっそい小柄みたいなナイフ。 ソレ見て彼は余計警戒心高めてすんごい目で睨み付けてきたけど、そんなん今更あたしには効きません。 ぐっと彼の上体を引っ張って、彼の顔を自分の肩口に押し付けた。 「・・・・・・Wait・・・・・・!はな・・・・・・っっ!」 「矢を抜く・・・・・・歯は食い縛るなよ。奥歯が砕けるから」 言いながら、血にまみれて汚れた衣服をナイフで切り裂く。 びくんっ、と震えた肩に張り付く衣。邪魔なソレをはがし。 現れた傷を見て、うわぁけっこー肉絞まってるよなんて思いながら、もう一回ぐ、と彼の頭を肩に押し付ける。 「噛むならあた・・・・・・俺の肩を噛め――――――良いね?」 「・・・・・・・・・・・・っっ!!!」 ナイフの切っ先を肉に潜り込ませたと同時に、肩に、熱。 あたしは痛みを、痛みとしてじゃなく熱として感じるから、やっぱり歯を立てられたんだろうけど。 悲鳴も上げないってのは、流石だ。 開いた傷口から、矢を抜いて捨てる。肉を抉っていたその鏃はギザギザ。 取り敢えず一息だ。あー緊張した・・・・・・まだ足が残ってるけど。 ほ、と思わず息を吐いたら、ずん、と腕に体重が掛かった。 ん?と思って抱き寄せた彼を見てみれば。 ・・・・・・・・・・・・うん。痛みで意識飛んじゃったんだろねコレ。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ま、いっか。意識ない方が手当するには楽っちゃ楽だし。 なんて事を考えながら。 あたしは取り敢えず彼を横たわせる為に、ポーチからずるずるとフードマントを引き摺り出した。 ――――――どっかで手に入るなら、毛布とかも突っ込んどこう、とか思いながら。 |
<<バック トゥ トップ ネクスト>> |