狼さんの案内で、半日近くかかって無事に森を抜けられました。

・・・・・・・・・・・・のはいんだども。

こーゆー事も起こり得るって事、ちゃんと頭に入れとけば良かった。ぐすん。




 




 




 






戦国武将、拾っちゃう、の巻。

〜まさかのドンパチ!?いやいややりませんとも!!〜





 




 




 




 
うん。腕の中の彼はたった一人で森の奥まで迷い込んだんだもんね。

しかもでっかい傷こさえて。

だったら、近くにある人の群衆が彼の命を狙う・・・・・・敵、であってもおかしくはないよね。





     『みこさま』

「下がってな、狼」

     『いいえ、いいえ。おまもりします』





ぐるる、と身を低くして、あたしの横で、狼さんは何時でも飛び掛かりおっけーな体制。

目の前にはダース単位でたむろしてる足軽 (?) さん達。

あたしはといえば、ひょい、と左腕一本で彼を抱え直し、ズルッとポーチから拳銃を引っ張り出していた。





「Hey!お前、ソレ、Pistol、じゃねぇか!?」

「それが?」





しかも持主の念を弾丸にして飛ばす、リロードのいらない銃さふふふん。

おまけに念の弾丸には一発につき1個だけだけど、色んな効力が付加されるのさへへへん。

だから、あたしが今コレに『眠り』の効力乗せたら、飛び出る弾は全部麻酔弾になるのさあははん。





・・・・・・・・・・・・つくづく、念ってばなんて反則的に便利なモノなんだろう。





「もう一度言うよ、狼――――――下がれ」

     『いいえ、みこさま。おまもりします。おまもりしたいのです』

「・・・・・・お前の美しい毛皮を血の赤に汚したく無い。だから、下がりなさい」





ゆっくりと。言い聞かせる様に言葉にすれば。

狼さんはしゅん、となって、だけどちょっと嬉しそうに低い体勢のままあたしの後ろに下がる。

うん。イイ子イイ子。

あたしはふありと狼さんに笑みを落として。次いで、視線を上げてどっかの軍の兵隊さん達を睨め付けた。





「――――――で。お前達は何処の手の者だ?」

その視線だけで「ひぃいっっ!!」と腰を引かした兵隊さん達は。

「ぅ、ぅるせぇっ!おめぇが連れてるのは、奥州筆頭の伊達政宗だな!?」

「そっ、その首、貰い受けるっ!!」

ソレでも、目の前にぶら下がった人参・・・・・・いやもとい、彼の御首に、無い勇気を振り絞ったみたいだ。

――――――・・・・・・・・・・・・諦めりゃいいのにさ。はぅ。





ちっちゃい溜息をひとつ。

ソレからあたしは、日曜日に公園でパパンに片手で抱き上げられてるちっちゃなお子ちゃまみたいな彼をそのままに。

さらりふわりと突進してくる兵隊さん達を避ける。

ふむ。イマイチどころかイマヨン・イマゴくらいですな。





「くっ、のらりくらりと・・・・・・っ!」

ふふん。木の葉の双璧の片割れを師匠に持つこのあたしの足捌き、にゃめんにゃよ?

出てきて早々プレイヤーにばっさりヤられる雑魚キャラなあなた方とは違うんですから。

「Excellent・・・・・・!!お前、本当に、忍じゃないのか!?」

「だから違うって」

は元・忍だけどね。





って、何時までもこんなトコで時間潰してたってしゃーない。

あたしは流れる様に突進してきた兵隊さんそのいちそのにを避け、どんどんっ、とその背中に麻酔弾を撃ち込む。

そしてそのまま軸足でくりん、と1回転。続け様にどんどこどんっ、と引き鉄を引くコト6回。

着かず離れずあたしの後ろにくっ付いていた狼さんと、揺れの少ない腕の上でおっかなびっくりあたしを見下ろしてる彼とに、ちろん、と視線をやって。





「此処、抜けるよ」

「What!?抜ける!?この敵陣の中を!?このままで!?」

「このままで、って・・・・・・ああ、アンタ抱えたまま?とーぜんっしょ。アンタ無理出来ないんだし――――――狼、お前は如何する?」

     『おともいたします、みこさま』

「着いて来れる?」

     『どこまでも』

「なら――――――着いて来な」





に、と笑って地面を蹴った。

半拍遅れで、狼さんも続く。

突進してくる兵隊さん達は、間合いに入る前に麻酔弾で眠ってもらって。

飛んできた矢や石礫は、腰に着けてたウォレット・チェーン (伸縮自在の念込め済みです) で、ボトバタ落とす。





・・・・・・・・・・・・うん。常日頃からに 「だらしない!!」 てよく叱られてたけど。

そのだらしなさのお陰でフル装備のまんまベッドにダイブした自分に万々歳。

お気に入りのコートだけはハンガー掛かりっぱなしなんだろうけどね!





「Ya−ha!!すっげぇ!!馬より早ぇんじゃねえか!?」

「・・・・・・大口開けてると舌噛むよ」

つか何かすっごい興奮してるけど大丈夫か奥州筆頭。

「Ha!!この俺がんなMistakeおこすかよ!!」

ダメだこのオレ様、聞く耳持たずだ。

「・・・・・・・・・・・・狼、速度を上げる。良い?」

     『はい、みこさま』





断りを入れてから更にぐぐんとスピードアップ。

新幹線にも負ける気しません・・・・・・には負けるけどね。





やがて、降ってくる矢や石礫もなくなり、飛び掛かってくるでっかい的も出てこなくなった頃。

あたしはようやく足を止めた。

さっきまであたしを攻撃の的にして下さってた兵隊さん達は、既に遥か彼方塵芥の大きさ。

あたしの視力でソレだから、あちゃらさんは絶対あたしら見えてない。

ハッハッ、とあたしの横で息を荒くしてる狼さんがなんかちょっとかわいそう・・・・・・

ごめんね狼さん。付き合わせちゃって。





「・・・・・・お前、見かけによらず随分Toughだな」

まあ、あんだけの速さで人を1人抱えててあんだけの距離走ったにも関わらず、息ひとつ乱してないあたしを見ればそう思うかもしれませんが。

「・・・・・・・・・・・・そうでもないけど」

はあたしより体力あるから。





ちょっと落ち着いたらしい狼さんの様子を見て、あたしはまた足を動かし出す。

つっても今度は走らない。

ほてほてゆっくりのったり歩き出す。





     『みこさま、みこさま』





ぴぃ、と頭上で鳴いた声。

見上げてみれば、数羽の鳥さん。





     『みこさま、みこさま。ひとがみえます』

     『うしとらのほうがく、ひとがみえます』

「――――――丑寅の方角に、人?」

「Wait?・・・・・・ああ、今度はBirdか」

「特徴は、ある?」

     『あおいころもの、たくさんのひと』

     『たくさんのあおい、ころものひとです』





ふむ。

青い衣、とな。





「――――――奥州筆頭」

丑寅の方角・・・・・・ココからだと、えーと北西だ北西。

ちこっと考えもって呼んだら、ぴく、とあたしの左肩に置かれた彼の手が動いた。

「Shit・・・・・・やっぱ知ってんじゃねーか俺の事」

うん知ってましたよ。多分そーなんじゃないかな〜?程度には。

でも、確信を持ったのは。





「さっきの足軽達がアンタをそう呼んだ。違うのか?」

「・・・・・・・・・・・・違わねぇよ」





はいコレで決定。

あたしが生まれ育った現代の、400年くらい前の歴史にはまったくなさげな鎧装束。

英語・・・・・・今はまだ南蛮語かな?・・・・・・混じりのこのしゃべり方。

100%どころかもう確実に、コレ――――――戦国BASARAの世界だ。

・・・・・・ごめんあたしアクション系ダメなんだよ買ったけどオープニング見てストーリーモードやろうとして直ぐに挫折したんだよ。

だから主要キャラクターなんかも、当然うろ覚えなんですよ。





「――――――で?」

「・・・・・・ん?」

「俺が奥州筆頭伊達政宗だって解ったら、てめぇはどうするつもりだよ?」

「別に、どうも――――――このまま当初の予定通り送り届けるだけだけど」

「・・・・・・ハァ・・・・・・Wait、イイのかよお前はソレで」

「何が」

「・・・・・・・・・・・・何処ぞに俺の首持ってけば、Promotionも夢じゃねぇんだぜ?」

「手当をした意味がなくなる。其れに俺は階級に興味は無い」





すっぱりキッパリ。

言い切ったら、何か彼は少しの間視線と思考をあらぬ方向へ巡らした。

・・・・・・・・・・・・なんか、有り得ねぇ、とかって声が聞こえたよーな・・・・・・いやいや気のせいだろう。





「・・・・・・お前、ホント何者だ・・・・・・?」

「只の旅人」

「タダのTravelerはBirdやBeastと話したり人の言葉を話すBigSnakeに頭下げられたりしねぇ!!ついでに南蛮語も知らねぇ!!」

「言い直そう。只の旅の術師」

「・・・・・・・・・・・・術師?」

「ピンは失せ物探しから、キリは医者の真似事から悪霊払いまで。この辺りでは・・・・・・そうだな、陰陽師と呼ばれる者に近い生業をしている、んじゃないか?」

「陰陽師だと!?」





あっさりサックリ。

したら彼は、すっごい驚きの顔であたしを凝視した。

・・・・・・あれ。この時代ってゆーかこの世界、陰陽師って珍しいのかしらん?

・・・・・・まあいいや。取り敢えず脱線した話を元に戻そう。





「奥州筆頭」

「・・・・・・・・・・・・んだよ?」

「青い衣、に。心当たりは?」

「Blue clothes?」

「鳥達が言ってる。丑寅の方角。沢山の青い、衣の人がいる、と」

「Hey!!そいつぁ俺の仲間だ!!」





言うや否や早く早くと急かしてくるオレ様筆頭。

そんな彼をあたしはあーはいはい、ってなノリで。

よいしょ、と彼を抱え直して、ほてほて、と歩く速度を、すたすた、に変えた。




 




 




 











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