リングの上に上がったハリセンボン・・・・・・もといギタラクル(仮名)とキルア。

アル中みたいなギタラ・・・・・・ああもうメンドい、イルミは、見た目あんまり変わり映えしないけど。

――――――なんでキルア、こんな闘志ムンムンなんでしょーか。





イルミもソレに気付いたみたいだ。

ちょっと首を傾げて、キルアを見る。

だよね。おかしいよね。コレってやっぱり、もしかしたら、もしかしなくても。





「・・・・・・・・・・・・ねぇ、

「ああ、うん。4次試験の時に、こっそり教えておいた」





――――――・・・・・・・・・・・・やっぱり。




 




 




 





 
最終試験に臨んだ日。




 




 




 




 
開始の合図と同時に、キルアが飛び出す。

うん。良いスピード。良い踏み込み。初っ端から全力投球ですな。

だけどやっぱり相手は長男。ずーっと長い間キルアに恐怖を植え付けてきた元。

あっさりさっぱり交わす。掠りもしません。





・・・・・・・・・・・・あ。キルア飛ばされた。

いってぇ、とか言いながら、切れた口元拳で拭って立ち上がる。

目の奥の闘争心は、まだ、失われていない。





「・・・・・・・・・・・・大丈夫、かな」

「大丈夫だよ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・随分な自信だね

「うん。だってあの子が殻を破るのは確定してる――――――だったら。ソレが今であっても、問題ないハズだ」





確かに。

キルアが結局、家族、という箱庭から飛び出す事をあたし達は知ってる。

ゴンの手を取る事を、知ってる。





向かって行っては転がされて。投げられて。

なんかハゲとゴンとの戦いに似てる気がしなくもない。

だけどアレは原作通りだったから、ある意味安心して見れてもいた。

けど、コレは。この戦いは、違う。原作から大きく脱線してる。

何が起こるか分からない。ハラハラしながら見てるしか出来ない。





やがて、イルミが針に手をかけた。

べきごきばきっっ、と色んなトコに刺さったソレを抜いて、垂らしてたヨダレの跡すらなくなったキレーな素顔が姿を現す。

キルアの、揺れる闘争心――――――まだだ。まだ、消えてない。

だけど、やっぱりソレはあのイルミの一言で一気に霧散した。





「殺し屋に友達なんて必要ないんだよ、邪魔になるだけだから・・・・・・よし、ならゴンを殺そう」





ソレから、なんかイルミとじーさまがごちゃごちゃと話をして。

レオリオが叫んで、キルア側の人間が扉の前でバリケードを作る。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん。原作でも全くおんなじシーンあったけどね。

「でもさっきのイルミの理論でいくと、殺し屋には家族も必要ないよね」

「なのに過保護なんだよな、イルミもキキョウさんもキルアには。カルトも何気にキルアに対してブラコンだしさ」

思いついたままをと一緒になってポロっと言ったら、ピキンっと空気が凍った気がした。





ぎぎぎぃ、と。まるで立て付けの悪い扉みたいに、イルミがコッチを向く。

「――――――白猫、黒猫。口を挟まないでくれる」

「いや別に挟んだつもりはないぞ」

「うんただ感想言っただけで」

だから殺気まで向けないで。





しばらくじとーっとあたし達を胡乱な目で見てたイルミだけど、やがて小さく息を吐く。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そう言えば忘れてたよ。君達が天然と小悪魔だったって事」

「っはぁ!?」

「ちょっと待てが天然なのは解るが小悪魔って何だ小悪魔って!!」

「ってお前が待て誰が天然だ誰がっっ!!」

「五月蠅いよ」

「「・・・・・・・・・・・・ご、ごめん」」

だから殺気に念込めないで。





今度はもう少し大きめの息を吐いて、イルミがキルアに向き直った。

ぽかん、とコッチを見てたキルアが、慌ててイルミに意識を向ける。

だけどその目に浮かぶのは、恐怖。

すっかり委縮してしまって、イルミに上から押さえ付けられる様になんか言われてるキルアを見て、溜息を零した。





「動くな。少しでも動いたら戦いの合図と見なす。同じく、俺とお前の身体が触れた瞬間から戦い開始とする」





イルミの手が伸びる。ソレはひどくゆったりとした動作だ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・じゅーぶん引っ掻き回してはやったつもりけど、ココで原作に戻る、か。

やっぱり、キルアに植え付けられたモノは生半可なもんじゃなかった。ココで、あの子の殻は、破れない。

そう思って、目を伏せた――――――まさにその時だ。





――――――ぱんっっ!!





乾いた音がして、顔を上げた。

目の前のリングの上。ソコには、かたかた震えて、でも気丈に兄を見上げるキルアと。

叩き落された手を呆然と見ているイルミ。





「――――――どういうつもり、キル」

「・・・・・・・・・・・・って、・・・・・・・・・・・・っだ」

「聞こえない」

「――――――って!!だってゴンはっ、俺んコト知って、それでも友達だって言ってくれた!!手ぇ、つないでくれたんだ!!」





泣きそうな声だった。実際、涙浮かべてる。

そんなキルアを呆然と見ていると、尚もキルアはイルミに向かって言い募った。





「強い想いは力になるってが言った!!確かに俺じゃ兄貴に勝てないけどっ、だけどっ、俺はゴンを死なせたくない!!」

「何を――――――」

「命は重いってが言った!!兄貴にとっては軽くても、俺にとっては重いんだ!!ゴンのも――――――兄貴のも!!」





――――――・・・・・・・・・・・・ああ、と思った。

あたしの、そしての言葉は。ちゃんと、キルアの中に、根を下ろしていたんだ。

ソレが、泣きたくなるくらい、あたしは嬉しかった。




 




 




 










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