とうとう、堪えられなくなってひっくひっくとしゃくり上げ始めたキルアに、イルミの顔は困惑そのもの。
てゆーかちょっとナニぼーっと突っ立ってんだよ!!こんなおいしいシチュエーション!!
抱き締めろよ慰めろよあんた兄貴でしょ!?
・・・・・・っあああ!!テメーがやんねーんならあたしが!!
(落ち着けよ。どうどう。)
(だって!!)
(つか今のは完全イエローカードね)
(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ。)
あまりにキルアがカワイくてついついやっちゃいました。
――――――・・・・・・・・・・・・でも行動には移してないんだから完全はやめて完全は。
最終試験に臨んだ日。
それにしても、困惑とはいえ感情を表に出したイルミなんてちょーレアだね。
「・・・・・・何、俺のも、って」
うん。コッチはコッチでまたかわいーです。
叩かれた手を空中でうろつかせて、意味解りませんって顔でキルアを見下ろすイルミの姿に苦笑する。
――――――まあ、あの子もキルアと同じく、あのゾルディックで生まれ育ったから。
「キル」
「・・・・・・っ、」
ああ。そんな責めるみたいな声出さなくたって。
反抗期に突入したっていっても、キルアはまだあんたへの恐怖を完全に克服してないんだよ?
「――――――キル」
「・・・・・・っ、が、いったっ、んだ、・・・ぃのちはっ、だれっか、に、とってはっ、かる、く、かるくてもっ、ほ、ほか、のっ、だれかにとっ、たら、おもいっ、んだっ、だって」
「・・・・・・・・・・・・ふぅん」
あ。ナニそのなんかすんごい「イラン事吹き込みやがって」的な視線は。
「おっ、おれ、ごん、だいっじっ、だ、・・・はじ、てのともだっ、だか、ら」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そう」
うわ。更に機嫌が急降下。「あいつホントに殺してやろうか」って目が語ってるよ。
「でも、あっに、にきも、だ、ぃじだ、・・・だいじっ、な、あ、にきっ、だ、かっら、・・・だっ、から」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
だけど、しゃっくりで思いっきり噛みまくったキルアの次の言葉に、イルミの目がまあるくなった。
キルアの頭のてっぺんを見下ろす。
腕でぐしぐし顔を擦ってるキルアは、その事に気付かない。
「ど、ちもっ、た、ぃじだっ、から、だか、らっ、・・・あにっ、き、にっ、・・・ごん、・・・ころっ、て、ほし、く、ぅく、ほしくねぇよぉ・・・・・・っっ」
あ。ダム崩壊。
キルア本格的に泣き出したよ。
さすが12才。やっぱり12才。多感なお年頃だ。
だけどコレで、イルミがホントにゴンを殺す事はできなくなったね。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だって見えない矢で心臓打ち抜かれてきゅうんvvてなってるもん。
うろうろしてたイルミの手が動いた。
ぽむ、とキルアの頭に乗せられる。
ソレからなでりなでり、と動かして。
「――――――解った。まいった」
ほえ?
思わず目がテンになりました。
キルアも驚いて涙も引っ込んだ目でイルミを見上げてる。
そんな弟をイルミは軽々抱き上げて、ぽんぽんとあやす様に背中を叩く。
「・・・・・・あっ、にき?」
「しばらく見ないうちに、随分大きくなったね。強くもなった。今まで、俺に反抗なんてできなかったのに」
「・・・・・・・・・・・・」
「暗殺者の息子としてはどうかと思う強さけど、でも、強くなった」
イルミの言葉に、キルアの目が見開かれた。
あたしだってビックリだ。
まさかあのイルミが、モノホンのお兄ちゃんみたいな事を言うなんて、これっぽっちも思わなかった。
――――――あらら。キルアまた泣きそう。
あ。とか思ってるウチにホントに泣いた・・・・・・まあ、1度壊れた涙腺は、そんな直ぐには治らないか。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふぇ」
「何時からそんな泣き虫になったの。喜びなよ。この俺が褒めてるんだから」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぅえっ、っく」
「ご褒美として、ゴンは殺さないであげる」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ、ぅん」
「でも、家には1度戻りなさい。でないと母さんが何するか解んないから」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん、わかっ、た」
ぐしぐしと涙を拭って、キルアがきゅっとイルミの首に抱き付く。
ああ。羨ましいよ代わって欲しいよあんなカワイイ弟欲しいよ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ありがとぅ、おにいちゃん」
――――――・・・・・・・・・・・・撃ち抜かれたよイルミ。
もう、きれーにズッキュン!!てしたよ。
とかゆーあたしも撃ち抜かれました。鼻血吹きそうです。思わず手で押さえちゃいます。
いっそと交換したい。いえ是非交換して下さいイルミさん。
(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。ソレはちょっとひどくない?)
ひどくないよあたしはカワイイのが好きなんだ。キレイなのはその次だ。
なのにってば、キレイだけどあんまカワイくないし。あたしと同じガタイ同じ顔なんだから。
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