初っ端から危ない人に絡まれた所為か、その後はだーれもあたし達に絡んでこなかった。
ちょっと期待してた新人潰しのトンパすら来なかったよ。
下剤入りのジュースなんて欲しくないから別にイイけどね。
そのまま、と2人して壁に凭れながら、何をするでもなく周囲の受験者観察。
うん。原作読んで覚えてる顔ちょっと、後は全然知らない顔って感じ。
とか思いながら視線を巡らせてたら、エレベーターが開いた。
降りてきたのは、年齢偽称のスーツ姿と、原作より美人なとある一族の生き残り。
そして緑の服着て釣り竿持った、黒い硬そうな髪の男の子。
(うっわホンモノ!!あ~ゴンかっわいい!!かいぐりしたい!!クラピカ綺麗!!抱き付きたい!!レオリオ渋い!!ホントに10代!?)
(ハイストップ。思った事即行動ってのはやめろな。ヒソカとかぶるから)
(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ごめんあたしが悪かった。)
初っ端から波乱を感じ取ってしまった日。
に釘を刺されて、あたしは消沈。
(てゆーかなにその刺し方。いくらなんでもアレと一緒は酷過ぎるでしょ!?)
(イヤそれくらい言っておかないとモード切り替わるっしょ)
・・・・・・・・・・・・ぐっ。そ、それは絶対ない!!・・・・・・・・・・・・って言い返せないのがつらい。
もんもんとしてるウチに、3人の傍にトンパが寄って行く。
――――――あ。ジュース出した。渡した。
おお。ゴン。やっぱりこの辺原作通りなのね。変な味がするよって、さすが野性児。
はぅあ~、と感心してたら、今度は違う方向から野太い男の絶叫が。
・・・・・・・・・・・・ああ、やっぱりソッチも原作通りなワケね。
イヤイヤ振り返って見てみると・・・・・・案の定、腕切り落とされてましたよ名も知らぬ受験者さん。
そりゃもうスッパリきれいさ切り口は。
・・・・・・・・・・・・あたしも大概、神経図太くなったね。あんなの見ても、うわ痛そー、くらいにしか思わない程度には。
エクソシストしてたからかなぁ・・・・・・ソレともの影響?元々の素質だとは・・・・・・思いたくない。
ソレにしたってホントに痛そうだ・・・・・・いや、本人ホントに痛いんだろうけど。
アレ以上放っておいたら出血多量だよね。
原作ではあの人死ぬんだっけ?
――――――・・・・・・・・・・・・ソレは、見たくないな。
ふ、と小さく息を吐いた。
そして、この世界では馴染みの薄い、エーテル――――――魔力を、集中させ始める。
「・・・・・・・・・・・・」
が気付いて、咎める様な声を掛けてきた。
・・・・・・でも、ごめん。どんなヤツでも、あたしは目の前で死なれたくはない。
今まで壊してきたAKUMAとは違うんだ。あの人は人間で、まだ、生きてるんだ。
「――――――白き乙女の聖なる御手よ 傷付きたる者に癒しの慈悲を」
ぽう、と。淡い翠の光が名も知らぬ受験者さんの切られた腕に灯った。
その光はくるくると回って。量を増やして。
光が消えた時、受験者さんの傷口は塞がっていた。
みんながみんな、その光景を唖然と見ていた。
誰もあたしがやったなんで気付いてもいない。当然だ、解らない様に呪文はちっちゃい声で、しかも遠隔発動までしたんだから。
よっしゃグッジョブあたし。確かに念より扱い辛いけど、ソコソコ使える様になったじゃん。
・・・・・・・・・・・・まあ、使ったのは初級の回復系で、ただ傷口を塞いだだけだから、落ちた腕は元には戻らないけどさ。
あたしだって、元の魂はアレだけど、だからといって決してカミサマというワケじゃない。
コレで、命を繋いだと喜ぶか。利き腕を失くしたと絶望するか。
ソレはあの受験者さん次第だ。
ぽん、とが肩を叩いてきた。
「ま。イイんじゃないか?ソレで」
笑って言ってくれる、がこういう時に傍にいてくれて良かったとつくづく思うよ。
「マッドピエロは、俺達の仕業だって疑ってるみたいだけどな」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんですと?
そろり、とフードの下から姿を探した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あー。うん。なんかすっごい目で見られてますね。
「レベル4を壊した時は念なんか使ってなかったし。今も一般人装ってオーラ垂れ流し状態だからさ。特殊能力でも持ってるんじゃ、って思ってるんじゃないのか」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あー。ソレでかー・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
確かに、この世界にはない術が使える事を特殊能力だといえば、持ってるし使えもしますが。
コレなら、念具で作った傷薬使った方が良かったかもしんない。
ソレからサトツさんがやってくるまで、すっごい粘着質な視線があたし達に絡まりまくっていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ちょっと早まったかなぁ。
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