カナリアちゃんの後ろにくっついて、辿り着いたのは巨大な城。

・・・・・・初めて黒の教団のホームを見た時も思ったけど、このお城にも絶対悪の親玉いるよね。

いや実際いるのは暗殺一家だけど。

そして、出迎えたのは見た目に似合わずホットなハートの持ち主のヒゲ面メガネ。





「ようこそお越し下さいました。わたくし執事のゴトーと申します」

うん知ってる。とは言わない。アタリマエだけど。





どうぞ此方へ、と恭しく促して下さるゴトーさんに、は平然と。あたしは内心泣きながら従った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・行きたくないよぅ。




 




 




 





 
新しい動きに呑まれた日。




 




 




 




 
「シルバ様。お客様をお連れしました」

「入れ」





・・・・・・・・・・・・いえ。入りたくないです。

だってだってすっごい鋭い声。小心者ならソレだけでショック死モノだよ。

しかも何。この、扉の向こうから漂って、いや押し寄せてくる威圧感!!

コレってアレだよねっ。絶対念だよね!?





思わずゴトーさんに助けを求める様な視線を向けようとしたけど、既にその場にゴトーさんはいなくなってた。

い、何時の間に。





「諦めたら?ほら」

あうあうやってる間に、がアッサリ扉を開けた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だ、駄目だ。もう逃げられん。

――――――・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・こーなったらもう諦めるさ。えーえー諦めてご対面してやりますともさ暗殺一家の大黒柱と!!

そう自分に言い聞かせて一歩踏み込んだ。





途端。

「何だ・・・・・・4の扉と7の扉軽々開けやがったって言うから、一体どんな念使いかと思ったが」

感心した様な呆れた様な渋い声。

威圧感は一気になくなった。

「精孔すら開いてねぇじゃねえか。しかもガキ」





・・・・・・・・・・・・ガ、ガキ?

あたしコレでも今年で30になるんですが。

そりゃあ性転換してから、ほんの少し若返った?なんて思った事は1度や2度じゃありませんけども。

ガキはないんじゃないですかガキは。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・怖いから言い返せないけど。





「まあ、座れ。お前達がアレか、リーガルから俺への荷物を拾ってあまつさえ届けにきたっつう酔狂な何でも屋か」

「・・・・・・・・・・・・酔狂、ですか?」

「おお、酔狂だろうよ。見ず知らずの運び屋の尻拭いで、追手が付く様なヤバい荷物。放っときゃ良いのに。しかも届け先は俺」

「・・・・・・・・・・・・まあ。俺も其れは思いましたが。でも、追手が付くという事は、其れだけ大切な荷なのでしょう?」





座った途端にソコまで言われて、言い返したあたしの言葉に、シルバさんは一瞬ぽかん、とコチラを見詰め。

「・・・・・・くっ、ククッッ、はははははっっ!!」

――――――何がそんなにツボだったんですかシルバさん。





「こいつぁとんだお人好しだ!!そんなんで良く今まで生きてたな!!」

・・・・・・・・・・・・うっさいよお人好し違うよ小心者なだけだよ性分なんだよ仕方ないだろこのやろう。

心の中で毒吐いたら、ソレが聞こえてたみたいにぴたりと豪快な笑い声が止まった。

・・・・・・・・・・・・ひぃっ。読心術の心得でもお持ちなんですかシルバさん!?





「受ける仕事は難易度重視。報酬に拘り無し。依頼達成率は100%。危ない橋まで渡りきってんのに、今まで殺した人間はゼロ」

――――――ちょっと待って下さい。何の事を言ってるんですか。

「2人組の何でも屋。いっつも顔と体格を曖昧にする様なフードマントに、片方は双剣、もう片方は規格外なでかい扇を持っている」

――――――・・・・・・・・・・・・の『双牙』はともかく、あたしの『舞扇』は滅多に人前に出してないハズなんですが。

「内1人には賞金が掛けられていたな。黒髪黒目黒い眼帯。目も醒める様な美青年ってよ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「で、どっちが白猫なんだ?『路地裏の猫』」





バ レ て る 。





思わずババッと飛びずさって、あたしは『舞扇』を、は『双牙』を構える。

そんなあたし達を、だけどシルバさんは楽しそうに見やった。





「ああ、安心しろ。お前等を捕まえる気なんざコッチにゃさらっさらねえから」





だからその物騒なモンしまえほら座れ、なんて促されて、あたしとは顔を見合わせる。

そして。

・・・・・・・・・・・・結局あたし達は、シルバさんのいう通りに従ったのだった。

だってどーやったら逃げられんの無傷でこんなトコから。




 




 




 










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