驚いた。
何が驚いたって、どーせ開かないよとか思いつつえいっと押した扉があっさり4まで開いたのが。
後ろのゼブロさんも、ぽかん、と口を開けてた。
だけどそれより更に驚いたのは。
「少し力み過ぎたか?」
とか何とか言いながら、だけど全く重そうな素振りも見せずにが軽々と7の扉を開け放った事だ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ゼブロさん顎が外れそうになってたよ。
新しい動きに呑まれた日。
はぅあ~、と感心しきりのゼブロさんに挨拶をして扉を潜れば。
目の前に広がる、根城にしていた樹海と似た様な景色。
・・・・・・・・・・・・いや。あたし達が根城にしていた樹海の方がまだカワイイ。
アソコには綺麗な川が流れてた。取った魚は美味しくて、山に入れば甘い果物だっていっぱいあった。
なのに何だこのおどろおどろしい気配。薄闇に片足突っ込んだ様な感覚っ。禍々しい雰囲気は!
「あ。ねえねえ」
横からくいくいっ、とがマントを引っ張ってきた。
「ミケがいるよ。アソコ」
あっけらかんとしたそのセリフに、ぴきんっと固まって。恐る恐る、振り返る。
――――――ホントだ。いたよ番犬。
「つか何で犬なのにミケ」
「顔はキツネっぽいけどね」
現実逃避気味に呟けば、が笑いながら相槌を返してきて。
・・・・・・・・・・・・待て。何で近付いてくるんだミケ。
あたし達はちゃんと門から入ったっしょ?排除対象じゃないっしょ!?
すすすす、とあたしはの背後に隠れる。
そんなあたし達の周りを、ミケはくんかくんかと匂いを嗅ぎながらくるっと一周して。
べろん。
「ぅひゃ!?」
顔舐められた。
しかもにくぅ~んと鳴きながら擦り寄ってる。
「あらら、懐かれちゃったね」
の言葉にでっかい溜息吐いて、一気に脱力。
「・・・・・・・・・・・・心臓に悪いよホントにもう・・・・・・・・・・・・」
取り合えず、と一緒になって頭を撫でてやったら、ミケはするり、と離れてちょこんと座った。ちょこん、って図体じゃないけどさ。
・・・・・・・・・・・・うん。ぱたぱた尻尾振ってるあたり、やっぱり犬だ。
ぽんぽんと軽く頭を叩いてやって、さっさと離れる。
そしてそのまま奥へ続く獣道へとゴー。
しばらく歩いたら、今度は石造りの門と、1本の線と、その線の向こうでぴしぃっと立ってる女の子が見えた。
「お荷物を、届けに来て下さった方々ですね」
あらあら。この特徴的な髪形は。確かカナリアちゃん。
「シルバ様からのご命令で、お迎えに上がりました」
「ちょっと待て」
思わず、此方へどうぞ、なんて言って踵を返したカナリアちゃんを呼び止めてしまったよ。
「・・・・・・・・・・・・俺達はタダの何でも屋なんだが」
「はい。伺っております」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・この荷物も、頼まれただけで実際依頼を受けたのは俺達じゃないんだが」
「はい。存じております」
存じてるって一体ドコまで?
「1週間程前、運び屋ガナック兄弟がリーガル氏よりジルバ様へのお荷物と共に消息不明」
あー。やっぱあの人仲間いたんだ。つか兄弟だったんだ。
「後日、運び屋2人の遺体が見つかるも、荷物の行方は依然として不明。但し、ガナック兄は死ぬ直前に何者かと接触した形跡有り」
あー。やっぱ死んでんだお仲間も。つかあたしが遭遇したの兄貴の方だったんだ。
「接触した人間の特徴は、フードマント」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
沈黙してしまったあたし達に、カナリアちゃんはサラリとのたまって下さった。
「シルバ様は、あなた方に興味をお持ちです。そういう事ですので、どうぞ此方へ」
・・・・・・・・・・・・その曇りのない笑顔が、今のあたしの目にはすんごくイタく映るよ、カナリアちゃん。
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