ぎゅう、っと。完全にパーフェクトに背中から抱き込まれて、あたしは身動き取れずにいた。

「また逃げられたら堪らない。お前には、前の事も込みで色々と聞きたい事があるんだ」

・・・・・・・・・・・・覚えてる。覚えてるよこの人。しっかりはっきり、9ヶ月以上も前の事なのに!!





「――――――が、そうだな。まずは」

聞いてきながら、つつつ、と首から顎にかけて指先で撫でてくる。

・・・・・・・・・・・・あ。なんかすっごいヤな予感。

「お前、俺のモノにならないか?」





――――――・・・・・・・・・・・・うん。命だけじゃなく貞操にまで危機を感じたのは、気のせいじゃなかったよ。




 




 




 





 
止まってから動き出した日。




 




 




 




 
こくん、と小さく喉が鳴る。

首を撫でてた指はゆっくり下へ。遊ぶ様にあたしの心臓の上で止まった。

いぃいいやぁああ。なんかコートの中に侵入してきたぁああああ。





「・・・・・・・・・・・・アンタ、ゲイだったのか」

「いいや、違う」

「なら」

「俺は両刀だ」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・きっぱりすっぱり言い切られたあたしはコレからどーしたらいーんでせうか。

っひい!?みみみみ、耳!!今耳舐めたよこの人!!

イヤだコレ以上手ぇ拱いてたら絶対犯される!!!

あたしは!!見るのも妄想するのも好きだけど!!当事者になるのだけはイヤなんだっっ!!





イヤイヤと精一杯身体を動かしながら、逃げる様に首を振って、可能な限り顔を背ける。

「何だ、嫌なのか?」

すんごい声に笑みなんか含んじゃってなんて性格悪いんだろこの人!!





「っ、たり、前、だ・・・・・・!」

だけど団長サマは、そんなあたしの拒絶の声も行動すら楽しくて仕方ないみたいで。

「まあ、力尽くでも俺のモノにするけどな」

いやイラナイですしなくてイイですつつしんで辞退申し上げます!!





じたじたと必死に抵抗して、だけど団長サマの腕は全く弛んで下さらない。

――――――あーあーそーだよねウン何トン軽々片手で持ち上げて下さるんだもんね!!

非力なあたしの抵抗なんてヘでもないよね!!





「諦めの悪いヤツだな――――――まあ、そういうのも嫌いじゃないが」

「・・・・・・ソレはっ、どうも・・・・・・っっ」

いや好かれなくていい!!いいからさっさと放して下さい!!

「ああ、余り暴れると踏むぞ。さっき吹っ飛ばしたハズなのに何故かまだ足元にいるソレを」

「――――――っひ!?」





固まった。ソレはもーものの見事にあたしは固まった。

・・・・・・・・・・・・つか何であんだけ盛大にやっといて肝心の撲滅対象がまだいんの!?





かっちんこっちんに硬直してさぁーっと血の気引かせるあたしの耳元で、くつくつと団長サマが笑う。

「冗談だ」

「~~~~っっっ!!っンタなぁ・・・・・・っっ!!」

人の弱点抉って遊ぶな!!





ついカッときちゃって、思わずぐりんっと後ろを振り向く。

そしてそのまま文句の一発どかんとやってやろうと口を開いて。





ばちっと。

至近距離に、優しい黒色。





「この目はアレか。あの時の傷の後遺症か何かか」

くい、と持ち上げられた顎。

「勿体無い・・・・・・・・・・・・折角の、綺麗な黒耀だったのに」

眼帯の上をなぞる指は柔らかく。とてもとても、柔らかく。





なんでこの人、こんな自分が痛そうな顔してんの。

――――――・・・・・・・・・・・・何であたし、こんなドキドキしてんの。





瞼が、降りる。睫毛が視界に影を作る。

吐息と吐息がぶつかって、混じり合って。

そして。




 




 




 










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