今回のあたし達の護衛対象は、アマ・・・・・・なんとかっていうものすごい高価なヴァイオリンと。
持ち主のおじーさまと、そのヴァイオリンとおじーさまが出演するコンサート。
何でもセンリツさんとは旧知の仲らしく、そっち系の情報で、今回ヴァイオリンが狙われてるらしい、って解ったそうな。
しかも2人の話を盗み聞きする限り、盗賊サマは能力者っぽい。
センリツさんはギリギリまで護衛してくれる能力者を探してたけど。
結局見つからず、コンサートの開幕ベルは鳴ってしまった。
止まってから動き出した日。
最初の1日は何事もなく過ぎた。
2日目も、特にコレといった事は何も起きなかった。
このまま無事に終わってくれよー、と思ってた3日目も。
ここまで何もないと、能力者の賊ってゆーのはデマだったんじゃ、とか思えてくる。
大体、何で盗むのがヴァイオリンなんだ。
貴金属とか宝石とか、溶かしたりカットし直したりって加工や細工が出来るモノ盗むってんなら解るけど。
興味のない人間にとって、楽器なんてタダのガラクタ。マニアとかに高値で売ったって、直ぐに足がつきそうなモンなのに。
しかもコレは退屈過ぎる。
ホール全体を見渡せる最後列、目立たない様にひっそり始終座りっぱなしなのは。
クラシックなんか聞いた事もないあたしにとって、ヴァイオリンの音色なんて子守唄と一緒。
実際、あたしの隣であたしと一緒にホールの警戒担当になった護衛さんも、この3日間で何回も船漕いだ。
そのたびに護衛さんの足踏ん付けて起こしてたあたしは、人間観察でこの退屈な時間をやり過ごしてたけど。
そんなこんなでコンサート最終日。
今日も今日とて所定のポイント陣取って、やっております人間観察。
地味だなーとは思うけど、けっこー大切だし難しい事なんだよ?
武器を隠し持ってないか、とか。変装してないか、とか見破んのって。
エクソシストなんてやってたから、あたしだってソコソコ戦う事は出来るけど。
ソレでもやっぱりラビとかアレンとかと比べたら経験値の低いぺーぺーだ。
ソレこそ、となんか大人と赤子、月とスッポンくらい比べモンにもならない。
だからってワケじゃないけど、そーゆースキルは早めに身に付けておいた方が良い。
・・・・・・・・・・・・まあ、いわく。あたしの中で眠ってる記憶の中には戦い方に関する知識もあるから、後は思い出して慣れれば早い、らしいんだけどね。
あと、やっぱりこういうセレブなトコロに来る人は、見ててけっこー目の保養になるからけっこー楽しいんですよ。
渋みのあるロマンスグレーのオジサマだとか。
楚々とした白いドレスのお嬢様だとか。
ほら、あそこの人なんてすごいもんだ。今ちょうどホールに入って来た紳士。
ビシッと着こなしたスーツ。うーわー足なっがーい。いーなー八頭身だーモデル体形だー。
なんかバンダナ?頭に巻いてるけど、ソレすらしっくりハマってるすっごいハンサムな――――――
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ええ、ホンット黒い背広が良くお似合いですわ、団長サマ。
って、フリーズしてる場合じゃないよどうしよう!?!?
そっそうだ!!今ドコだ!?って裏口だったようっわあホントどうしよう!?!?
『・・・・・・・・・・・・、今ドコ』
とか思ってたら飛んできた思念。
ををうすっごいよナイスタイミングだよ!!
『ナイスタイミングって、やっぱソッチも動きあったんだ』
・・・・・・え?ソッチ『も』?
『ああ、どうやら護衛として雇った奴等の中に賊がいたみたいで。センリツさんが撃たれた』
ぬぁんですと!?
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