『 『路地裏』 の 『猫』 が よろず 承ります 』
そんなフザケタ見出しで電脳ネットにあたし達が載ってから、早3ヶ月。
最初は様子見とか面白半分とか興味本位とかで依頼してきたお客さんばっかだったけど。
予想以上な出来具合に、仕事が終わった後の評価はすごく良くなって。
今日の仕事は、そんなあたし達の噂を聞いてきた、ご新規さんからの依頼です。
止まってから動き出した日。
「あなた達が、『猫』?」
「はい。俺は白猫。こっちは黒猫です」
「ふぅん。駆け出しにしては評判良いからどんな人達なのかと思ってたけど」
最後まで言わず、口を噤んだ目の前の彼女に内心、カラ笑い。
うん。多分「期待外れだわ」なんて続くハズだったんだろう。
だって、彼女が念能力者だという事をあたし達は知っている。
オーラ垂れ流し状態にして一般人装ってるあたし達を見たら、そう思っても仕方ない。
「あなたは、確か、センリツさん、でしたっけ?」
「ええ、そうよ。明日からの4日間、宜しくね」
握手を求めながら一応確認してみたら、やっぱりドンピシャ。
・・・・・・・・・・・・なんでこー、原作に出てくるキャラとの遭遇率高いんかな、あたし。
『、平常心平常心。でないと『聞かれる』よ』
はぅあっ、そーだった。この人心音とかってのが判るんだった。
幾らフード付きのでっかいマントで顔も体格もある程度隠してるっていったって、心読まれちゃ意味がない。
すーはーすーはー。へーじょーしんへーじょーしん。
しばらくじぃっとあたしを見ていたセンリツさんだけど、やがてふぅ、と小さく息を吐いた。
・・・・・・あ。何か今の「一般人の中ではまあまあ使える人材みたいだからまだマシか」ってニュアンスが。
「あなた達のどちらかに、ゲストに扮しての警備をお願いしたいんだけど、そのマントは外せないの?」
・・・・・・・・・・・・うん。確かに見た目コレはけっこーインパクト強いよね。下手したらアブナイ人だもんね。
『取ったら取ったで別の意味でインパクト強いけどね・・・・・・どうする?』
・・・・・・・・・・・・ココで断ってじゃあ解雇、って言われちゃったらなぁ・・・・・・この仕事値段良かったしなぁ・・・・・・
『依頼達成率100%の『路地裏』の『猫』、マント外せず初黒星?』
・・・・・・・・・・・・何ともオマヌケな・・・・・・ソレはやだなあ、今後の仕事に響きそー・・・・・・
「外せないのね?」
じゃあ使い道ナシけってーい、って言われてる様な気がするのはあたしの被害妄想だろうか。
「・・・・・・・・・・・・いえ、外せます、けど」
「じゃあ外してちょうだい」
うをうそんなに急かさないで下さいセンリツさん。
『俺が外す?』
・・・・・・いや。コレあたしが受けた仕事だからあたしが外すよ。
うしっ、と気合を入れてぱさっとフードを取る。
そして襟元の留め具をぱちんと外してずりっと肩からマントを引き摺り落とせば。
・・・・・・・・・・・・うん。予想はしてたけどそんなに凝視しないでくれますかセンリツさん。
「・・・・・・センリツさん?」
「・・・・・・あ、ああ、ご免なさい。あなたがあまりにも綺麗だから、思わず見蕩れちゃったわ」
「・・・・・・ソレはどうも」
苦笑が浮かんじゃったのは、仕方ないっしょ。
女だった時は1度も言われた事ないのに、男になってからだかだか言われる様になんのってけっこー複雑なんだよ。
「それじゃあなたには、正面ホールでの不審者の警戒をお願いするわ」
「了解」
「そっちの黒猫さんは、裏口の警備を」
「ああ」
「・・・・・・それにしても、どうしようかしら。念には念を、って思ってたのに」
「?何か?」
「い、いえ。何でもないわ」
こほん、と気を取り直したセンリツさんに其々頷いて。
詳細は他の警備員が全員揃ってからね、と言い残し踵を返すセンリツさんの背中を見送ったあたし達は、目配せしあう。
「・・・・・・・・・・・・念には念を、ね」
さっきの、普通の人間じゃ聞こえない様な、小さな小さな呟き。
「・・・・・・・・・・・・またメンドーな事になりそーだな」
深読みしちゃえば、そーゆー事だ。
「無事に終わってくれればいいんだけど」
「だな」
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