パキンッて。小気味の良い音がした。
思わずあたしは視線を落とす。自分の手に。手に持ってたものに。
ソコには。ぱらぱらと。原型すら留めずに。鉄くずみたいに。崩れていく。
「・・・・・・ぶせ、ん?」
今までずっと、あたしと一緒にいた。ずっと、あたしを護ってくれてた。
あたしの。
終わって始まった日。
「きゃははははっっ!!コワれろ!!コワレてしまえイのせンス!!」
どごん!!
吹き飛ばされたと気付いた時には、既にあたしは地面に減り込んでいた。
衝撃の殆んどをあたし自身の身体に受けて、抱き込んで庇ったマチさんには、そんなにダメージいってないみたいだった。
ソレでもあたしは、どこか茫然自失、で。
だって。だってあたしの。あたしの『舞扇』が。
挟間から完全に抜け出したレベル4の手に、光が収束する。大地に出来たクレーター。その中心にいるあたし達に向かって。
気付いたマチさんが、腕を振る。多分、念糸を繰り出したんだ。
ウボォーキンが、猪突猛進みたく横から突っ込んでいく。裏をかく様にフェイタンが背後から。
牽制みたいにヒソカが、ファルナークが、団長サマが何かを投げて。
でも、なんか、みんなみんな、テレビの中の出来事みたいで。
「ムシけらぶぜいが、じゃマをしないでもらエマすか」
攻撃を避けて、悠々と上から見下ろす絶対者みたいな。そんな、レベル4のセリフ。
頭に血が上ったウボォーキンとフェイタンが怒り狂ってさらに躍り掛かる。
「そんなにシにたいんですか。だったらサキにこロシてあげますよ!」
対するレベル4は楽しそうに。本当に楽しくて楽しくて仕方がないという様に。
――――――『虫けら』?
――――――殺して、『あげます』?
・・・・・・・・・・・・今になって、ようやく怒りが限界を突破した。
「・・・・・・貴様の相手は俺だろうが」
不思議と、声は平坦だった。
途轍もない負の感情は、ソレだけで身体を動かす原動力になるんだって、思った。
ふらり、と立ち上がったあたしに、横から手が伸ばされる。マチさんだった。
「あんた、こんな状態でどうやって動いて・・・・・・!?」
驚くのも当たり前。右脚と左肩、そして左腕の骨は砕けてる。裂傷は大きいものから小さいものまで数えきれないくらいあるし、肋骨は肺に刺さってる。
ソレでも、動く。一歩踏み出すたびにごぷりと口から血が溢れてくるけど。まだ、動く。
痛みは殆んど麻痺してる。ソレで良い。動きを鈍くする痛覚なんか、今は要らない。
修復が間に合わない『鋼の処女』に、ソレでも身体の動かない部分の補強に専念してもらう。
「おや、まだうごけるんですか。あれだけいためつけてあげたのに。しぶといですね」
マチさんの手を振り払い、もう一歩。
「エクソシストをなめるな」
ぺっ、と口の中の血を吐き捨てつつ、更にもう一歩。
「はっ、えくそしすと!いのせんすをうしなって、それでもまだえくそしすととなのるんですかきみは――――――」
嘲る様に、嗤うレベル4の懐に、音も無く潜り込んだ。
「な、はや――――っっ!?」
予想外だったんだろう。あたしの俊敏な動きに、能面みたいな面に浮かぶ驚愕。
そのまま、『舞扇』の欠片を握り込んだ拳を、ビールっ腹の星の部分に5発ほど叩き込んだ。
そして更に、上空に浮き上げられた物体を、思いっきり蹴り落とす!!
どがん!!
「がぁああっっ!?」
コレ以上ないくらいに盛大に、地面に減り込んだ物体。
あたしは間髪置かず、その中心、腹の星目指して。
「壊れやがれ、アクマ!!」
どぎつい一発を、かましてやった。
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