ソレでなぜ、こんな状態に陥っているんでしょーか。





捩じり上げられた片腕。踏み付けられた背中。

・・・・・・いやーん。自虐癖持ちのと違ってあたしには甚振られて喜ぶ趣味一切ないんですが。





「何処から湧いて出てきたね、オマエ」





イヤだからソレはあたしがあなた方に聞きたいです。




 




 




 





 
終わって始まった日。




 




 




 





うつ伏せ状態で踏み付けられてる、あたしの下は剥き出しのコンクリート。

ちらり、と動かした狭い視野には、コンクリっぽい灰色の瓦礫。

・・・・・・ドコですか、ココ。





「質問に答えるね」

「――――――っっ!!」





ぎゅ、と背中を踏む足に力を加えられて、呻きを堪えた。

・・・・・・やばい。肋骨何本か折れたままだわ。『鋼の処女』の修復が間に合ってない。

つか、あたしだって何でこんなとこに湧いて出る羽目になったのか考えてる途中なんだから、中断さすなっての!





「お前は、念能力者か」





かつん、と足音が響いた。

目の前に晒されたのは黒い皮靴。

その持ち主が、膝を着いてあたしの前にしゃがみ込む。





・・・・・・ちょっと待て。『念能力者』?

なんかちょっと。いやいやかなり。すっごーく。イヤ〜ンな予感がビシバシと・・・・・・

まさか、だよねぇ?





恐る恐る、視線を上げる。

靴から始まって、膝、脚、胴体、手。首、顔。





・・・・・・・・・・・・泣いてもいいかな。





あたしの、捻り上げられてない方の手にある『舞扇』の片割れを爪先で踏み付けながら、あたしを睥睨して下さってるのは。

見間違いでなければ、紛う事なき蜘蛛・・・・・・もとい幻影旅団の団長サマ。

そして更に。

団長サマの背後の上空に、空間の歪みなんて見たくもないものまで発見。





・・・・・・あー、あっこから落ちてきたのね、あたし。

・・・・・・どーせ落ちるならまだ某暗殺一家の屋敷の敷地内の方が・・・・・・いや、どっちもどっちだ。





「言う気はない、って事かい」

「面倒ね。殺すか?」





傍から聞こえた女性の声に、再びぎゅむっと踏まれる背中。

いやいやいやいやいたいいたいっっ。勝手にそっちだけで完結させないで下さ・・・・・・って。

やばいまずいとてつもなく!!





「『鋼の処女』!!」

「んなっっ!?」





イノセンスの発動を強化させながら。

あたしは背中を踏み付けて下さってた方を転がし、目の前の団長サマを抱え込む様に自分の腕の中に引き込んだ。

つかあたしなんでこの人庇っちゃってんの!?団長サマじゃんこの人!蜘蛛じゃんA級賞金首じゃん!!

とか思わず自分で自分をツッ込んだ、まさにその一瞬後。

背中に、衝撃。





「く、ぁ・・・・・・っ!!」

「なっ、貴様・・・・・・!?!?」





咄嗟の奇襲で動く間もなかった団長サマが、あたしの腕の中で息を呑む。

顔を顰めて痛みに耐えていたあたしの耳に、何なんだろねアレ、なんて飄々とした声が聞こえた。

・・・・・・語尾にハートかダイヤかスペードかクローバーがついてた様な気がしたけど。

気がしただけだ。うん。絶対にそうだ!!




 




 




 










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