「ようこそ黒の教団へー。科学班室長のコムイ・リーでーす」





 ・・・・・・何だろう。

 今なんか、どっかのスナックで始めてのお客さんに挨拶するホステスさん想像した。

 語尾にハートマークが付いてる様な気がしたのは絶対に気の所為なんかじゃない。





「・・・・・・はあ、ども。です」

 取り合えず、ひょこりと頭を下げて自己紹介。

 そしたら、コムイさんよりラビの方が先に反応したよ。

のファミリーネーム、ってんさ?」

 をいをい。今更何を言うかねラビ・・・・・・って、そういや。





「言ってなかったっけ?」

「初めて聞いたさ。もしかしてJapanese?」

「ソレ以外の何に見える」

「やーなんかって国籍不明って感じがビシバシしてたかんさー」

「アンタと一緒にすんじゃないの生粋の日本人だよ俺は」

「んーでも確かに君ナニ人ですって言われてもソレで通りそうな雰囲気持ってるよねー」

「なー俺より国籍不明だよなー」

 ・・・・・・こ、こむいさんまで・・・・・・





 ちっちゃく溜息を落としたあたしに、コムイさんはああごめんごめんと軽やかに笑う。

「ラビから聞いてるよ。災難だったねぇ」

 ぜんっぜん、そんな感じには聞こえませんが。

「でもま、その災難がイノセンス発動のキッカケになってくれたみたいだから良かったさー」

 その一難が、新しい一難連れてきてくれたけどね。





「で、ラビ。君にはドコまで話してる?」

「んー、アクマん事とーイノセンスん事とー教団の事とー、ぶっちゃけ一通り?」

「そう。なら話は早いね」





 ソレじゃ行こうか、とコムイさんが部屋からの退出を促す。

「行くってドコに?」

「僕等のボスに挨拶をしに」

 ・・・・・・来た。大元帥達との顔合わせ。

 いこーる、ヘブラスカのイノセンス診断!!

 ・・・・・・うーわー行きたくなーい・・・・・・





「・・・・・・なんか、イヤな予感がする」

「だーいじょーうぶさー。ほら、俺も付いてくし」

 渋るあたしに、ラビが笑ってきゅっとあたしの手を握り、あたしを部屋から引っ張り出す。

 コムイさんはといえば、視線の先で既にあのでっかいエレベーターに乗り込んでいた。

「・・・・・・なんかほんっと、イヤな予感がする」

「大丈夫。タダのお披露目だから」

 ぼやくあたしとラビが乗り込んだのを確認して、コムイさんが笑う。





 ピッピッ、と操作されるパネル。

 ゆっくりと降りていくエレベーター。

 ・・・・・・イヤな予感がする、といえば、もうひとつ。

「古今東西、組織と名の付くものの上層部の人間ってイケ好かないヤツばっかってのがセオリーなんだよね」

 ぼそり、と呟いたら、コムイさんとラビの笑顔が引き攣った。

「あ、あははは。そんな事はないよ多分ねえラビ?」

「うん、まあ、もしあったとしてもそーゆーんは右から左に聞き流すさ?」

 ・・・・・・思ってはいたけどココの上層部もそんなんですか。





 まあ、原作でも実験だ研究だとかって咎落ちとか作ってたらしいからね。

 いくらコムイさんが科学班の室長になってから体系が変わったっていったって。

 根っ子の部分なんて、そう簡単には変わらないか。





 つらつらとそんな事を考えてたら、ウン、とエレベーターが止まった。

 何時の間にやら最深部に着いたみたいだ。

 そして、カッとスポットライトを当てたみたいに明るくなる一部分。

 見上げれば、浮き上がった五つの椅子と人影。





『新しい神の使途』

『全知全能の力に選ばれし、御使い』

『我等はまたひとつ、神を手に入れた』





 うわん、と空間に反響する様な声だった。

 しかも想像通りの、高圧的な物言い。

 ・・・・・・ゴメンやっぱあたしこーゆーの好きになれんわ。





「あん人達が、この教団のボスさ」

 ラビの手が、するりとあたしの手から離れる。

「さあ、君の力をあの方々にお見せして?」

 ぽん、と。コムイさんがあたしの肩を叩いた。





 瞬間。

「――――――っっ!?」





 ぐいっ、と。

 背後から何かに引っ張られた。

「んなっ、・・・・・・!?」

 ひたひたと触ってくる触手みたいなモノ。

 それらは容易く、あたしの身体を宙吊りにして。





 予想はしてたけどホントにアレンの時と同じパターンッッ!?





「な、ん・・・・・・っっ、ラビ!!コムイさん!?」

 必死になって下を見下ろせば、2人は揃ってのほほんとあたしを見上げている。





 ――――――ぞくうっっ。





 うわっ、うわっっ!!

 しょっ、触手が!!触手が身体ん中入って来た!?

 やだコレすっげ気持ち悪い!!ホントにすっげ気持ち悪い!!





「はなっ、せ・・・・・・っっ!!」

 じたばたじたばた。

 あまりの気持ち悪さに、あたしは暴れた。

 知っているのと体感するのとは全然違う。コレはキツイ。耐えらんないって!!

 あっそうだ体内のイノセンス発動させたらこの触手弾き出せるか!?





「こっの・・・・・・っっ!!」

 思い付いて速攻発動させようとした時だ。




 




 




 




 
 ――――――イキナリ、全ての感覚がなくなった。




 




 




 




 






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