Ver.Hero





 契約内容には、万が一車壊したら神羅が買い取り、ってあったんだけど。

 この非常事態。しかも不手際はアチラさん。

 ってなワケで、無事に下りたぶっ壊しOKの許可。しかも一筆書かせてやった。

 は、イイとして。





「・・・・・・で、如何する?」

「・・・・・・そーだなー。いっくらセフィロスさんでもなー」

「・・・・・・時速200キロ近いスピード出してる車から飛び降りて無傷、ってワケにゃいかねーべ」

「・・・・・・ガス欠まで走るってのもなー」

「・・・・・・ドカン!の可能性が拭えんし」

 うーん。確かにちょっとばかし、ムヅカシイ問題ですな。

 車内に何か仕掛けられてんのなら万事おっけーだけど、車体の底とかに仕掛けられてたらな。

 時速200キロくらいで走行中、だし。

 飛び降りるだなんてもってのほか。

 そんなアブナイ事、クラやセフィにはさせられません!!





 あーでもないこーでもない、って言ってるソルジャー達の横で。

 ちょこちょこと、ザックスが近付いてきた。

「・・・・・・どーしようちゃん・・・・・・?」

 って、そんな情けない顔で言われてもね。

「様は走っている車から2人が降りれば良いだけでしょう」

「・・・・・・イヤだからどーやってにーさん達降りれば・・・・・・」

「あっそっか別に2人がアレから降りなくてもいーんだよな」

 降りる、んじゃなく降ろせば、いーんだよ。

 ぽんっ、と閃いた。うんうんそーだそーしよう。

 と、横から湿った気配が漂ってきたから見てみると。

 ・・・・・・何かザックスが青〜い縦線背中に背負ってた。

「如何したんです、サー・ザックス?」

「・・・・・・・・・・・・いや、もお・・・・・・・・・・・・なんでもない・・・・・・・・・・・・」

 力な〜い声で返事を返したザックスに、そうですかと言い置いて。

 向き直ったのは、マイク。





「サー・セフィロス。今から暫く、滑走路の一部私が占領しますので。他の処走っててくれます?」

『了解した・・・・・・が』

『・・・・・・何をするつもりなんだ、?』

 あらら。2人共声かたーい。別にロクでもない事は考えてないよー?

「うんまーちょっとモノは試し?」

『・・・・・・一応、判った』

 いちおーって何よいちおーって。

 まあでも、俺がコレから何かするだろう事は理解して頂けたみたいだ。

 だけど我等が英雄サマは、見掛けに拠らず心配性で過保護。

『・・・・・・ザックス、居るか?』

「うぇっ!?はいはいっ、居ます居ます!!」

 突然名指しされたザックスが慌てて背筋をぴんっと伸ばし。

が無茶をしない様に見張っておけ』

「・・・・・・っ、言われんでも」

 途端、引き締まった顔を見せるザックスに、俺は出そうになった溜息を噛み殺し。





「俺ってそんなに信用ないの?」

『無い』

『ああ、無いな』

「うん無いね」





 思わずぽそりと出たぼやきに、間髪置かず返ってきた返事。

 今度こそ本当に、溜息吐きましたよ。

「・・・・・・そんなハッキリ言わなくても・・・・・・」

「いや実際無いだろう」

 ををう。どこから聞いてたのかサー・リードまで。

 かなり、へこみましたよ。

 ・・・・・・・・・・・・いいや。もう。別に。

 つぎ、いってみよー。





 ほんの少し肩を落としながら、ソレでもなんとかぶるぅな気持ち振り切って。

 ぽてぽてやってきたのは、機材やら何やら置いてる処から、10メートルくらい離れた場所。

 コレでも滑走路の端っこの方だ。ど真ん中でなんて、ヤる気は全くアリマセン。

「で。ちゃん何すんの?」

 ぽてぽて付いてきたザックスの質問。

 ついでに、その後をぞろぞろ付いてきたサー方も、興味深々っぽい。

 そんな彼等を綺麗に無視し、着けてたウエストポーチから、ちゃきーん!!と取り出したのは。





「・・・・・・・・・・・・ちょーく???」

「・・・・・・・・・・・・ちょーくだよ」

「・・・・・・・・・・・・チョークだな」





 何ですかその間抜けで呆れた様な声は。

 チョークをバカにすんな。チョークを笑うモノはチョークに笑われるんだぞう?

「・・・・・・・・・・・・で。ちゃんソレで何すんの?」

「んーちょっと描こうかな、と」

 だから何をだ、ってツッコミが飛んで来たけど、俺は気にせずしゃがみ込んでカツカツと地面に書き出した。

 覗き込む様に見る皆には判らないだろう、複雑怪奇な模様と、ミミズが這った様な文字。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、何を書いてるんだ?」

「えーと・・・・・・魔法陣、ですかね?」

「何故疑問系・・・・・・って、マホウジン?」

 サー・リードの質問にアッサリ回答したら、ツッコミかけてはた、と引っ掛かったサー・レオン。

 何だソレは、という気配がひしひし伝わってきて、俺は手を止めぬまま疑問に答えてやる事にした。





「魔法を行使するのに必要なものは媒介ですが、其の媒介は何もマテリアだけじゃないんですよ」

 えーと、地のエレメントに干渉するのはこう・・・・・・で。

「美しいものには、人の目を奪う、魅了の力が宿る。其れ即ち、一種の魔力」

 物質から元素への逆行は、確かこうだったよな、うん。

「言葉には、聴く者の意識に働き掛ける、魂が宿る。其れも又、一種の魔力」





 線。まる。さんかく。そして、魔力を具現化するのに最も適した、古代ルーン文字。

 術者・・・・・・俺とこの陣を繋げるために、カリ、と親指を噛んで。血を一滴ほど。

 後は、要――――――コレでいっか。

 着けていたピアスの片方。小さい透明な水晶球。

 これまたあつらえたみたいに、魔力を吸収しやすく放出しやすい。

「そして――――――石は、意思。異なる意味は、けれど同じ音。同音同士は、容易く繋がる」

 カッ、と最後の円を描いて。俺はすっくと立ち上がった。

 んで、来た時とおんなじ感じで、ぽてぽてソコから離れる。

 サー方は・・・・・・俺の描いた陣に、ホンット興味深々だ。

 でも、ソコにいられると・・・・・・





「巻き添えになりたくなければ、離れて下さーい」

「げっまじ!?」

「おい、皆離れろ!!」





 おお。早いね。ザックスとサー・リード。

 ま、前に俺の召喚魔術見てるから、当たり前か。

 他の人達引き摺ってきましたよ。しかも俺の後ろに回り込んで。

 ・・・・・・どーゆう認識されてんのか、この行動で判っちゃったね。

 でも今日のはおっとなしーい魔術だ。いくら何でもこんなトコでヤバイのは使いませんって。

 俺はちょっと苦笑して。それから、両の掌をさっき描いた陣へ向けた。

「あらゆる命を育む大地に。捧げるは祈りの模様。遠く高く響く楽の音にも似た我が言の葉を聴き」

 半眼になりながら、囁きめいた呪を。紡いだ音は四方に響き渡って。

 石(意思)に届き、血に繋がって、陣を息吹かせる。

 知らない人が見ればただの落書きの、だけど綺麗に描かれた白い線が。まるが。さんかくが。文字が。

 あわく。しろく、発光、しだして。

 息を呑む気配。驚きの声。そんなものを、背後で感じながら。





「開け、大地の顎(あぎと)。石は砂に。砂は底に。全てを呑み込む流と成れ」

 力ある言葉に、弱かった光が一瞬大きく光った!!





「っ!?何だ!?」

 ざわめきの中、光――――――リーチーが広がる。ゆっくり。だけど確実に。

 それから、何かが崩れていく様な、音。ざあ、と。多分、波の音に似てる。

 やがて、光が。自分の役目は終わった、とばかりにイキナリ消えた。

 そして、その光の中から出てきたのは・・・・・・

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・砂漠????」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ってか、アリ地獄????」

 うーむ。確かにアリ地獄は言い得て妙。てか、ホントにアリ地獄思い浮かべながらやったもんね。

 俺達の目の前には、確かに。

 車ふたつ分くらいは余裕で呑み込める様な、円形の砂地・・・・・・しかもすり鉢みたく中心が沈んでる。





 ま。取り合えず第一段階の準備はおっけいです。

























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