『ひゃっほーーーーう!!すっげーーーーっっ!!』
スピーカーから出てくるサー・ガイルの声は、此れ以上無いくらいにハイテンションだ。
・・・・・・・・・・・・其れはそうだろうな。
エンジン音は騒音以上。排気量も半端じゃない。カーレース用顔負けの馬力と速力を誇るスポーツカーだ。
今迄の神羅製のものでも、此処までの物は無い。
ああ、もう。
「・・・・・・・・・・・・乗ってみたい・・・・・・・・・・・・」
ぽつり、と漏れた本音は、横にいたサー・リードとサー・レオンに聞かれていて。
「乗ってみたくとも、お前は未だ免許を所得して無いだろう」
「ソレ以前に、身長でアウトじゃね?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・むか。
免許は兎も角、チビで悪かったな。
というか免許を取るのに身長制限なんかあるのかいやないだろ。
だが、俺は今、未だ14歳なんだ。7年後には171まで伸びるんだ。
・・・・・・いや、ジェノヴァを埋め込まれてからは殆ど成長なんてしてないから、2年後か?
まあ、いいさ。兎も角、俺は此れからまだまだ伸びるんだ。
だから怒るな俺。落ち着け俺。
「なーに3人で仲良くお話しちゃってんのー?」
がばっ。
「うわっ!?ざ・・・・・・ソルジャー・ザックス!?」
行き成り背後から圧し掛かられて、俺は前につんのめったが、寸での処で踏み止まる。
頭の天辺に顎を乗せるなっ。そしてぐりぐりするなっっ。俺の身長が縮んだら如何してくれる!?
「ああ、ザックス。どうだった、試乗は?」
「サイッコーvvリードも試して来いよ」
「そうだな、そうするか」
って、人の頭の上で会話を繰り広げるなっ。
「・・・・・・あー、ザックス」
「ん?何よレオンお前は行かねぇの?」
「さっき乗ったばかしだからなー・・・・・・ソレより、ストライフの目が据わって来てるぞ」
「うをうマジ!?」
ばりっ!!と剥れてももう遅い。
俺が前へ振り上げた右足は、ザックスの右足の脛に見事クリーンヒットした。
「〜〜〜〜〜〜っっっ!?!?」
「・・・・・・・・・・・・うーわー、いったそー・・・・・・・・・・・・」
声無き悲鳴を上げて蹲るザックスに、全然思ってなさそうなサー・レオンの声。
俺はふん、とすまし顔で再び走るスポーツカーに目を向ける。
「・・・・・・く、くらうどちったぁかげんしてくれよ〜・・・・・・」
「何の事でしょうソルジャー・ザックス」
涙声で言われたが、サラリと返す。
「・・・・・・・・・・・・うぇぇえ〜んレオ〜ンうっうっうっ」
するとザックスは、ひし、とサー・レオンの腰に抱き付いて泣き真似を始めた。
呆れた風体ながら、サー・レオンは引っ付いてきたザックスの頭を撫でて。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・お前等って、いっつもそんな感じ?」
多分、其れがザックスを増長させたんだろう。
「そーなんだよクラウドのヤツいっつもにーさんと共謀して俺ん事イジメ・・・・・・おぐっ!?」
ここぞ、とばかりに日頃の不平不満を連ねようとしたザックスは。
しかし背後から伸びて来た長い足に背中を踏まれ、潰れた声を上げた。
「聞き捨てならんな、ザックス」
「いだだだいだいいだいいだいっっ。にーさんギブギブッッ!!」
「何時、誰が、誰と、共謀して、誰を、イジメていると?」
「うううううそですうそうそっっ。だだだだだからふーまーなーいーでー!!」
・・・・・・・・・・・・此れで良いんだろうか神羅の『英雄』と其の副官・・・・・・・・・・・・
自分の事を棚に上げつつ、思わずそう思って遠い目をしたら、同じ様に遠い目をしたサー・レオンと目が合った。
直ぐに何気無く逸らされたが。
其処へ、新たに飛んで来たのは弾む様に軽やかな声。
「何を。なさっておいでなんでしょう?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・正直に言おう。
悪寒を通り越して、恐怖を覚えた。
セフィロスとザックス、サー・レオンまでもがピタリと動きを止め。
振り返った先には・・・・・・
「公衆の面前での神羅のイメージを貶める行動は控えて下さいと先程申し上げた筈ですが」
は笑みを浮かべていた。しかも何処と無く甘い毒を含んだ、艶やかな笑みだ。
そして其の、眼福ものな筈なのに妙に恐ろしい笑みを深くして、尚も言い募る。
「ああ、其れともアレですか。お2方はソルジャーからお笑い芸人に転向なさるのですか」
まあ其れなら全然全くこれっぽっちも咎める気はありませんよええもう本当に指の先程も。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お、お笑い芸人・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
セフィロスとザックスが固まった。物凄いショックだった様だ。
サー・レオンも、の静かな怒気に当てられて逃げ腰になっている。
かくいう俺も、例に漏れず。
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・スミマセンデシタ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
「判って下されば結構ですよ」
深々と。本当に深々と頭を下げたセフィロスとザックスの声は、途方も無く沈んでいて。
は満足気に、目を細める。
――――――やっぱり、俺達の中で最強なのは、なんだな・・・・・・・・・・・・
「ところでサー・セフィロス。試乗が終えられてないそうですが?」
「・・・・・・あ、ああ、いや、俺は・・・・・・」
あっさりと強行に話を変え、が再びにこり、と笑った。
セフィロスはさっきの余韻を引き摺ったまま、じりじりとから後退している。其れはもう可哀想なくらいに。
・・・・・・・・・・・・かと言って、変わってやろうなんて気は更々起きないけどな。
「一応依頼項目の中に入っているので一台くらいは乗って下さい。ああ、あとクラを助手席に乗せて下さい」
「え、俺?」
何故其処で行き成り俺の名前。
俺何かやったか?(ザックスの脛を蹴り飛ばしたのはにはバレてない筈だ)
首を傾げてを見上げたら、きょとん、といった表情が返って来た。
「え、だって乗りたいでしょ?」
無免許だから運転は駄目だけど、助手席ならおっけー。許可もらった。
「本当か!?」
流石は、サー達だったらそんな処まで気なんて回してくれないよな。
思わぬ申し出に思わず綻んだ俺の顔に、も同じ様に笑い返してくれる。
そんな、俺達の背後では。
「・・・・・・・・・・・・にーさん俺等何か言われてる・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・判っている。判っているからもう何も言うな・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・つかアレってさり気に俺の事も込みなのか・・・・・・・・・・・・?」
世界に名を轟かせている筈のソルジャー達は。
其の背に、しっかりと哀愁を背負っていた。
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