2週間ばかり仕事が手付かずだった所為で、溜まりに溜まっていた書類が綺麗に捌かれたのは、つい今し方。
矢張りあの2人は仕事が早い、と感嘆する。
・・・・・・其の分、俺やザックスに対する決裁の催促も厳しかったがな。
何処の金融業者の追い立てかと思ったくらいだ。
其れ位とことん。とことんコキ使われた。まるでどちらが上司か判らないくらいに。
ここ数日で、俺もザックスも5キロは痩せたんじゃないか?
まあ、其の変わり。良かった事もある。
クラウドとの、俺やザックスへの態度が、随分と軟化した事だ。
・・・・・・の方は・・・・・・まだ、少し敬語が抜けないが・・・・・・
兎に角。一段落は着いた。
着いた、筈なのだ。
なのに何故。
「・・・・・・何なんだこのフザケタ仕事は」
広報部門から舞い込んできた新しい書類に、眉間の皺は恐らく日頃の1.5倍以上だろう。
断言出来る程に、其の内容はとんでもないものだった。
「まーまーにーさん。そー言うなって」
変わって、この書類を持って来たザックスの機嫌は頗る良好。
其れがまた、俺の不機嫌に拍車を掛ける。
・・・・・・ああ、ああ。確かにお前は好きだろうこういう仕事は。
だがしかし。
何故、よりにもよって如何して大凡こういう事には向いていない筈の俺にまで。
――――――新作の車やバイクのPRに出てくれ、なんぞという依頼が来るのだ!!
しかも半強制でっ!!
「・・・・・・、お前だって嫌だろうこういうのは」
「んー、そーでもないです。仕事なら仕方無いですし」
・・・・・・くっ。カフェオレ飲みつつあっさり否定したな・・・・・・
「・・・・・・ク、クラウドは・・・・・・」
「・・・・・・はー・・・・・・やっぱイイなー・・・・・・ココのフォルムが特に・・・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・駄目だ。完全に違う世界にイッている。
「仕方ねーじゃんコレ大手メーカーと神羅の共同開発よ?」
其れくらい言われんでも知っているわこの馬鹿猿め。
「しかもキャッチフレーズが『ソルジャーの愛車(コイビト)』ですもんねぇ」
・・・・・・・・・・・・、お前の其の綺麗な笑みが何処と無く黒く見えるのは俺の気の所為か?
俺は重々しく溜息を吐き、持っていた書類をぺい、とデスクの上に投げ捨てた。
――――――其れにしても。
「しっかし以外だったよなー。クラウドがこーゆーのに目ぇ無いなんて」
「・・・・・・ああ、其れは俺も思った」
苦笑するザックスに、同意し。
動かした視線の先には、資料の中の一枚を手にして悦に入っている、クラウドの姿。
・・・・・・・・・・・・まだ戻って来てないのか・・・・・・・・・・・・
そんなクラウドの隣に、カップを持ちながらちょこん、とが座った。
そして、其のまま。
其のまま、じーっと。クラウドを見て。
「・・・・・・・・・・・・何をしているんだ?」
もしやもクラウドと一緒に何処かイくつもりなのか?
「・・・・・・・・・・・・さあ?」
えーでもちゃん物欲薄いしなー。
首を傾げ、ザックスと2人成り行きを見守っていれば。
「くーらーぁ。サー・セフィロス、その仕事受けないってー。」
「えっ、マジ?」
の呼び掛けに、クラウドが素早く反応した。
「本当に受けないのかセフィロス?新作だぞ?スポーツカーだぞ?ドカのモンスターだぞ?」
い、いや、そう熱を込めて言われてもだな・・・・・・
「・・・・・・というか俺は未だ・・・・・・」
「サーってそーゆーのキライなんだってー。」
「にーさん走ればイイっちゅーヒトだからなー。」
・・・・・・受けないとは言って無いんだが・・・・・・って、人の言葉を遮るなもザックスも。
「・・・・・・・・・・・・そう、か・・・・・・嫌いなら仕方無いな・・・・・・・・・・・・」
「クラ、さみしー?」
「そんな、事は・・・・・・」
「あーにーさんがクラウドヘコませたー」
「喧しい山猿」
ハリネズミの様な頭に置時計を投げ付け(最早この時計はこの為にあると言って良い)、俺はクラウドの様子を伺う。
に頭を撫でられて。俯いた表情が本当に寂しそうだ。
――――――何だか初めて、年相応に見えるぞ。
と。俯き加減のまま、視線だけを上げた。
ばちり、と合った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あー、クラウド」
「・・・・・・・・・・・・何」
「俺は確かにそういったものには疎いが嫌いでは無いし仕事を受けないとも言ってない」
そう。嫌いでは無い。
寧ろ嫌なのは被写体になる事であって。
――――――ああ、だが。
・・・・・・・・・・・・受けざるを、得んだろう。
そんな哀しい顔をされては。
「・・・・・・じゃあ、この仕事、受けるのか?」
「・・・・・・・・・・・・受ける」
「・・・・・・・・・・・・本当に?」
「二言は無い」
俺の言葉に、途端顔を輝かせたクラウドの背後で親指を立て合っていたとザックスは見なかった事にし。
俺は人知れず溜息を吐いてすっかり冷めてしまったコーヒーに手を伸ばした。
<<バック ネクスト>>
<<バック トゥ トップ>>