「まあ、まず1番に述べるのであれば。私の父が根っからの冒険ヤロウだった、という事ですか」
まさか本当に、本気で暴露するつもりなのか、なんて内心ドキドキしていた俺は。
そんなの、のほほーんとした言葉に、思わずずるっとコケかけた。
「・・・・・・うーわーちゃんの口から冒険ヤロウ・・・・・・にあわねぇー・・・・・・」
「ハイそこ突っ込まないで下さいサー・ザックスでないとコレ以上話しませんよ」
「・・・・・・・・・・・・はいすんませんごめんなさい。」
にジロリと睨め付けられて、おどおどと縮こまるザックスは置いといて。
何だその冒険ヤロウってのは。
じ、との顔を見詰める。だがは素知らん顔・・・・・・というか、口を挟むな的オーラがビシバシと・・・・・・
「流れ星を未確認飛行物体だと言っては落ちた方向へ向かい、大きな魚の影を恐竜だと言っては海へ潜り・・・・・・子供の様に純粋で夢多き人でした」
「・・・・・・・・・・・・いやソレは純粋ってゆーより・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・夢多き、とは言えないのでは・・・・・・・・・・・・」
「だから突っ込まないで下さいサー・ザックスサー・セフィロス」
いや突っ込みたくもなるだろ。
・・・・・・・・・・・・いいか、もう。任せよう。
どうやら、本当の事を言う気は更々無い様だしな。
「兎に角ですね。そういう父親だったんです。しかもソレだけならまだしも、何をどうトチ狂ったか途轍も無く物凄い親バ・・・・・・いえ、子煩悩でして」
「・・・・・・・・・・・・は、はあ。」
「親戚もおらず、母を早くに亡くした所為で、本当に文字通り2人きりの家族だった事も絡んでるんでしょうが、決して私を何処かに預けるなんて事はせず・・・・・・
物心付いた時には既に、父の『冒険』とやらに否応無しにつき合わされてたんですよ」
「・・・・・・・・・・・・そ、そうか。」
妙に熱の篭り出したの口調に、ザックスもセフィロスも押され気味だ。
それにしても、良くもまあそうぽんぽんと話をでっち上げられるもんだな。
即興・・・・・・にしては、落ち着いてるよな。もしかして用意してたのか?
「魔物の巣窟となった古代遺跡らしき場所に突っ込んでくれた事も両の指では足りない程ありましてね・・・・・・まあ、そのお陰で戦う事には慣れましたとも。ええ、本当にもう。
剣の腕にだって人並み以上の自信がつきましたとも」
「・・・・・・・・・・・・へ、へぇー・・・・・・・・・・・・魔物の巣窟ねー・・・・・・・・・・・・」
ふっ、と。
何処か遠い目をして投げ遣りな感じで話し続けるに、ザックスの顔が引き攣る。
・・・・・・・・・・・・素直に真に受けるなよ・・・・・・・・・・・・イイのかソレでソルジャー1st。
ドコの世界に子供連れで魔物の群れに突っ込む親がいるんだイヤいないだろ・・・・・・・・・・・・多分。
「人語を解する獣に何故か懐かれた事もありましたよ・・・・・・ああ、そうそう。彼女が私に媒体を必要としない魔法の仕組みや使い方を教えてくれたんですよねぇ別に教えて貰わなくても
良かったのに・・・・・・あの所為で何度あの世を垣間見た事か」
「・・・・・・・・・・・・其れは獣でなく精霊では・・・・・・いや、何でも無い」
最早セフィロスも突っ込む気力は失せた様だ。
・・・・・・俺からしてみれば、突っ込みどころ満載なんだがな。
とことん胡散臭くないか?もう少しマシな捏造設定は無かったのか?
・・・・・・まあ、絶妙なタイミングで見せる虚ろな眼差しとか海よりも深そうな心からの溜息とか。
こういうのはやっぱり、話の内容云々より、ソレを本当だと信じさせる演技力がモノを言うよな。
を見てるとつくづく俺はそう思う。
・・・・・・というか、今、ふと思ったんだが。
・・・・・・・・・・・・コレはもしかしたら、8割以上実話入ってないか?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・だからな・・・・・・・・・・・・在り得そうで空恐ろしい・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「もーあの人の子供として生まれた事が私の不運の始ま・・・・・・いやいや、其れはさて置き。世の中、科学では解明出来無い不思議な事はまだまだ沢山ある、という事でして」
「・・・・・・・・・・・・今出掛かったのは本音だな」
「・・・・・・・・・・・・そだな。本音だな」
・・・・・・・・・・・・俺も思った。
さっきのは、絶対本音だ。
――――――・・・・・・・・・・・・8割以上実話、確定。
「聞き流して下さい。取り敢えず、私がマテリア無しで魔法を使える理由はソレです」
最後にはにっこりと、有無を言わさぬ迫力では言い切った。
・・・・・・強い。強過ぎる。
「・・・・・・そ、そうか」
・・・・・・・・・・・・おお、すごいすごい。あのセフィロスですら押されてるぞ。
「・・・・・・な、何となくわかったよーなわからねーよーな・・・・・・いいいいいやっっ、わかりましたっっ!!」
首を傾げてたザックスも、にちろん、と流し目で見られて姿勢を正す。
・・・・・・・・・・・・完全に呑まれてるな、この人達。
「さて、他に何か疑問はおありですか?」
再び、にっこり。
・・・・・・その笑顔が睨みを利かせているよりも怖いと思うのは、俺の気の所為なんだろうか。
イヤそんな筈はない(反語)。
実際に、セフィロスもザックスも腰が引いている。
だが押されてばかりではいられないんだろう。
「――――――いや、お前にああいった魔法の使い方が出来る理由は判った」
嘆息する様に、セフィロスが言う。そして、暫く言葉を切り。
「・・・・・・だが、クラウドは?」
・・・・・・・・・・・・ほら、来た。
「クラウドの戦いぶりも行使した魔法も、大凡素人とは思えなかったがな」
上官として部下を把握しておかなければいけないのは当たり前。
その部下が、下手をしたら爆弾になる可能性を秘めていれば尚更。
爆弾ふたつの内、ひとつは自ら暴露した。最初から最後まで、嘘で固めた暴露だが。
翡翠色の瞳が俺に向く。
――――――さて。
コレに俺はどう返せば良いものか。
のでっち上げ話に便乗しようにも、と違って本当にこの世界で生まれ育った分、良い言い訳が思い浮かばない。
俺自身、そんなに想像力豊かじゃない方だしな。
とか考えていたら。
「まあ、クラも私の父の数多い被害者の内の1人ですからね」
横から飛んで来たの声は、やっぱりのほほーん、としていた。
「ちゃんちゃん、ヒガイシャ、ってナニ。」
「言葉通りですよ。言ったでしょう。父は根っからの冒険ヤロウだった、と」
――――――ああ、そういう事か。
の言葉に、ピンとくる。多分、セフィロスも何か察した様だ。
冒険ヤロウ。ソレすなわち。
「――――――ニブルには、良く来たよな。の親父さん」
ぼそり、と呟けば、ふ、とが俺を見て。それから、笑う。
「少なくとも年に2回は行ってましたね・・・・・・クラと私が初めて会ってから、もう、7年ですか」
「いや、8年だろう」
「そうでしたっけ?」
「ああ」
実際は1年も経ってないんだが、何だかノリですらすらと言葉が出た。
ふ、と思い出す様に宙に視線を向ければ、本当にそんな過去が在った様な気がしてきたから、不思議だ。
2人揃って遠い目をしながら、しみじみとした雰囲気を醸し出す俺とに、セフィロスとザックスは口を噤んだ。
「・・・・・・ちゃんの親父さんって・・・・・・どんな人だったんだ・・・・・・?」
「・・・・・・判らん・・・・・・判らん、が、懇意になりたくない類のタイプである事は確かだな・・・・・・」
――――――というか、2人でこそこそと話し合っていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・凄い想像をされてるみたいだぞ。
そんな2人を余所に、俺はの話を元に、と一緒に想像を膨らませる。
「作り掛けてたかまくらぶっ壊して俺達を雪の中に生き埋めにしてくれた事は何回あった?」
「そんなの多過ぎて覚えてる訳無いでしょう。ソレよりも冬眠中のドラゴン間違いで起こして追い掛けられた事の方が私には印象的ですよ」
「・・・・・・ああ、アレは凄かったな。もう本当に死ぬかと思ったもんな・・・・・・そういやあの時だっけ、マテリアの力を最大限に引き出す方法習ったのは」
「そういえばそうでしたね・・・・・・しかもあの後、調子に乗って遠隔までやって、雪崩起こしましたっけ」
・・・・・・やっぱり即興で話を合わせるのはしんどいな・・・・・・もうネタが尽きた。
「・・・・・・・・・・・・頼むからソレ以上は止めてくれ」
だから小さく首を振りながら溜息を吐けば。
「・・・・・・・・・・・・そうします。私も思い出したく無い」
も充分だと判断したんだろう。こめかみに指を添えながら頭痛を堪える様に話の終わりを告げる。
そんな俺達から、離れた処で。
「・・・・・・・・・・・・ど、どんな親父さんだよ・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・聞くな。知らない方が幸せだという事もあるんだぞ、ザックス」
ひそひそと、ミッドガルきっての英雄とその副官が会話を交わしていた。
・・・・・・・・・・・・本当に俺達の話を純粋に信じたのかこの2人・・・・・・・・・・・・
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