安心したのも束の間、ってのはこういう時の事をいうんだろうな、って。
一昨日の今頃は、思ってたんだけどよ。
「・・・・・・ほら、切って来たぞ」
「ありがとう、クラ」
「、こっちは如何する?」
「すみませんいただきますサー・セフィロス」
・・・・・・・・・・・・なんっか、今のちゃん見てっと心配し続けるのもアホらしいっつーか。
寝てた分の食欲まで補うように、もーさっきからばっかばか食うんだもんな。
ホンット、心配して損した、って気分だよ。
ちなみに、今俺等がたむろしてんのはちゃんの部屋。
クラウドの時と全く一緒で、起きた後検査したら全くの健康体だっつーコトで、さっさと退院したんだよ。
つっても、今日1日は安静に、ってコトでちゃんベッドから出れない状態だけどよ。
俺やにーさんやクラウドは、もう1日くらい入院しとけ、って言ったんだけどな。
だって、いっくら検査結果に異常ナシって言われたってよ?
ソレ告げたドクターですらその結果に半信半疑だったんだぜ?
もひとつ言ったら、ちゃん1週間以上・・・・・・正確には、13日間も、ずーっと眠りっぱなしだったんだぜ?
クラウドが寝てた時間の倍以上だ。
様子見んのがふつーじゃねぇ?
――――――なのにちゃんときたら。
「病院食美味しくないからイヤです。」
の一言えんえん言い続けて、見事に退院許可もぎ取りやがった。
・・・・・・・・・・・・もーあの時は呆れたね。にーさんもクラウドも開いた口塞がらなかったね。
んでもってやっぱり、心配した俺がバカだった・・・・・・って思ったね。
そんな事を俺に思わせたちゃんは、ベッドの上でクラウドが切ってきたメロンを頬張ってる。
他にも、練乳のかかった苺やケーキやミルクティーなんかが、ちゃんの手元にはあって。
「・・・・・・良く食うね、ちゃん」
さっきリゾットとシチューとグラタンとパスタ食ったばっかだろ。しかもみんなホワイトソース仕様。
俺だったらぜってー胃ぃ凭れてるって。
「それはアレです。最近まともに食べてなかったからです」
いやいやいやいや。んな当たり前に言える範囲超えてるっつーの。
そりゃ、元々ちゃんがこんくらい食うヤツだって知ってたら、別にあんま驚きもしねぇけど。
今まで小食なちゃんしか見たコトなかったんだぜ?どう考えても、コレは多すぎだろ。
クラウドなんか、見てるだけで腹一杯だうえっぷ、っつって、自分の昼食半分以上残したんだぜ?
現に今だって、さりげなーく視線逸らしてっだろ。
「サーも召し上がります?」
「い、いや・・・・・・俺達の事は気にせず、全部食って良いぞ」
にーさんまで、つい、と差し出されたフォークの先のメロン一切れに、ぎこちなーく目を泳がせる。
そうですか?なら・・・・・・なんて言いながらちゃんは再びメロンを頬張りだした。
・・・・・・・一体この細い身体のドコに入ってんだろーなあの摂取量・・・・・・
退院明けで、大事を取って暫くは身体動かすのも控えて下さいね、ってドクターに言われてるってのに。
どーやってカロリー消費すんだか。
「あ。そういえばクラ。ルーファウスからのお見舞いに林檎や葡萄もありましたよね?」
「・・・・・・・・・・・・ああ」
・・・・・・あ。クラウド今すっげぇイヤそ〜な顔した。
とかいう俺もにーさんも、ビミョーに顔引き攣ってら。
「持ってきて下さいお願いします」
「って、まだ食うのかよ!?」
思わずずびしっ!!て突っ込んだら、
「当たり前です果物は足が早いんですよ傷んで食べられなくなる前に食べた方が良いに決まってるじゃありませんか」
・・・・・・・・・・・・イヤだから、そんな当たり前のコトを当たり前の様に言われても・・・・・・・・・・・・
ぜってぇオカシイって。コレ以上食うのはホンットに変だって。
思った事を率直に口にしてやろうと思った時だった。
「・・・・・・・・・・・・待て、」
すい、と宙に上がった手。にーさんの手だ。待ったを掛ける様に、そして低く告げた言葉も、制止の言葉。
「幾ら何でも此れ以上は食い過ぎだ。折角退院したというのに、其れでは再び身体を壊し兼ねんぞ」
だから今日は今出ているもので終わりにしておけ、って。
にーさんの言葉は多分、そのまま俺やクラウドの言葉だ。
けど、ちゃんは。
イヤです、って言うみたく、ふるりと1度首を振った。
首を振って、なんか重い溜息をひとつ吐いて。
「・・・・・・仕方無いんですよ」
何が仕方無いんだか知らねぇけど、諦めたみたいな、小さな小さな笑みを俺等に見せた。
「大掛かりな魔術を行使した後は、如何しても。過多な栄養摂取と睡眠が肉体に強制されるんです」
――――――う、わ。
まさか・・・・・・まさか、ちゃんが。こんな。自分からその話に触れてくるなんて。
俺やにーさんが、どうやって切り出そうかって悩んでた事を。
多分、ちゃんとクラウドの秘密に引っ掛かってしまう部分を、ちゃん自ら、口にするなんて。
「肉体強化と魔力増幅。精属魔術を行使する為の、エレメンタルとの血の契約。そして、精獣召喚」
「っ!?」
クラウドが声を上げた。怒りとも焦りとも驚きとも思える様な声だった。
だけどちゃんは、ガタンッと椅子を蹴倒して立ち上がったクラウドをサラリと一瞥して。
「・・・・・・あのですねクラ。アレだけ派手にやっといて今更はぐらかせると思ってるんですか」
「けどな・・・・・・っ」
「けどもへちまもありません。何時かはバレる事だったんです。大人な男は諦めが肝心ですよ?」
・・・・・・・・・・・・や、諦めが肝心、に大人も子供も男も女もないと思うんだけどな・・・・・・・・・・・・
けどクラウドのヤツ、ソレでぐっとまだまだ文句言いたそうだった口を噤んだ。
そんなクラウドに、ひとつ、心配すんな、って感じの笑みを向けて。
「と、いう訳で・・・・・・何から話しましょうかね?」
にっこり、と。
ちゃんが、にーさんと俺に向き直った。
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