虫の鳴き声が外から聞こえる。
後は、小さく爆ぜる焚き火の音と、寝付けないヤツ等のひそひそ話。
予定通り、今晩俺等は野営と相成りました。
森の中の、幾分開けた場所で、幾つか簡易テントを組み立てて。
俺はその中のウチのひとつに、いるってワケ。
・・・・・・どーせなら、ちゃんと2人っきりのが良かったんだーけーどーさー・・・・・・
ポソッと零した時の、保護者(?)達のセリフと言ったら。
「却下だ。貴様みたいな野蛮人とを2人だけにしておけるか」
「俺の目の黒い内は、相手に間違いなんて犯させませんから」
・・・・・・・・・・・・にーさんもクラウドも、一体どーゆー目で俺ん事見てんだろーねー?
幾ら俺でも、イヤがる相手にムリヤリなんて・・・・・・ってちっがーう!!
どーしてソッチに思考がいっちゃうかな、俺!?
そりゃ確かにちゃんって見た目は俺の好みにドンピシャで中身もすっげぇ気に入ってっけど!!
間違いも何も、ちゃんも俺も男なんだって!!同性なんだって!!
・・・・・・イヤちゃんなら男でもいっかなー・・・・・・なーん・・・・・て・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・や、やっぱ、2人きりじゃなくて良かったかも・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・・・・何を1人で百面相してるんだ貴様は」
モンモンと考えてたら、呆れましたねコイツは、みてーな声が飛んで来た。
・・・・・・ををう。イツからコッチ見てました?
アンタさっきまで途中経過の報告書作ってたんじゃねーのかよ。
「又変な事を考えていたんじゃないだろうな?」
「・・・・・・変な事って何よ変な事って」
しかもマタ、って。
「・・・・・・クラウドに踏み付けられずにに抱き付く方法、とか?」
疑問系ですかい。
「・・・・・・あーでもそーだなー確かにソレは何か考えねーとなー・・・・・・って、何言わせんだよっっ!?」
ク、クラウドが聞いてたらどんな目に会うかっっ!!
「そうか、まだ諦めていないのか。よし、クラウドには気を付ける様に進言しておこう」
「いいいいやいやいやいやっっ、言わなくてイイッッ!!言わなくてイイからっっ!!」
バタバタ慌てる俺に、凶悪な笑みを浮かべるにーさんはすこぶる楽しそうだ。
・・・・・・まーったく。この人ってこぉんなに性悪だったかねぇ・・・・・・?
・・・・・・・・・・・・まあ、のっぺらぼーみてぇな感情稀薄人間だった頃より、マシなんだろーけどさ。
「――――――あ。」
そーいや。
「・・・・・・何だ、又何を思い付いた」
「イヤ、思い付いた、っつーかちょっと思い出しただけだけど」
しかも、にーさんにとっちゃ全然大した事じゃねーかもだけど。
・・・・・・・・・・・・イヤ充分大した事あるかも。
「にーさんさー」
「何だ。下らん事なら聞かんぞ」
「俺にとっちゃ下らなくねぇから大丈夫。にーさん、クラウドとちゃん、けっこー好きっしょ?」
「・・・・・・・・・・・・嫌いでは無い」
おお。そーゆー切り返しですか。
けどにーさんの嫌いじゃ無い、ってさ。気に入ってると同意語なんだぜ?
にやにやにや。
笑ってにーさんの旋毛を見下ろす俺に、にーさんはイヤそーに眉を顰める。
いやぁ、ホント。表情豊かになったねー。
「にーさん判ってる?」
「・・・・・・・・・・・・何がだ」
「あの2人が俺等の下士官になってからさ、にーさん良く笑う様になってんだぜー?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「もー砂糖吐きそうなくらい笑顔の安売りじょーたい。」
あ。固まった。
気付いてねぇとは思ってたけど、ホンット無自覚だったんだなー。
「・・・・・・ザックス・・・・・・貴様・・・・・・」
「ま。イイ傾向イイ傾向。」
ぽんぽん。
ふるふる拳を震わすにーさんの頭のてっぺん軽ーく叩いて、ニカッと笑ってやる。
したら、にーさんはでっかい溜息吐いて――――――
ぞくり。
「っっ!?」
「何だぁ!?」
思わず、外へと続く天幕へと振り返って、眼光を鋭くする。
ばさ、と音がしてもう1回にーさんを振り返ったら。
にーさんは、持ってた書類捨て去って、代わりに正宗を持っていた。
「――――――何だよ、さっきの?」
俺もまた、傍らに置いてあったバスターソードに手をやって。
「判らん」
言い残して、にーさんが外へ飛び出した。
は、速ぇなおい。
・・・・・・って、感心してる場合じゃねぇ!!
俺も続いて、ばさっと天幕を捲り上げる。
目差すのは、この時間帯見張りに立っている筈の。
俺等の大切な大切な、下士官達の元。
<<バック ネクスト>>
<<バック トゥ トップ>>