戦う事は、あまり好きじゃない。
かといって、戦う以外に取柄があるのかと問われれば、答えはNOだ。
『過去』では、戦わざるを得ない状況が身を取り巻いていた。
そして今現在も。兵士、という立場に身を置いている為に、戦いを避けて通る事など出来ない。
判っているさ、ちゃんと。
――――――其れでも、躊躇いを感じずにはいられない時が在るのは、如何し様も無い。
「どうしたの、ストライフ下士官?」
「・・・・・・サー・ヴァリス・・・・・・何が、ですか?」
「いや、神妙な顔付きをしていると思って――――――ね!」
言いながら、一閃。
飛びかかろうとしたモンスターは、真っ二つに断ち割られてどさりと地面に落ちた。
・・・・・・流石、鮮やかだ・・・・・・
しかも話を振ってきた直後で。片手間そのものか。
・・・・・・ま、確かにこんな低級、3rdとはいえソルジャーの相手じゃないけどな・・・・・・
「・・・・・・初めての実戦なので、緊張してるんだと思います」
言い置いて、俺は銃を連射した。
弾は4・5匹程固まっていたモンスターに当たって、不快な鳴き声を上げる。
「とてもそういうふうに見えないんだけど?」
「・・・・・・・・・・・・見えない様にしていますから」
苦笑で返してきたサー・ヴァリスにさり気無く視線を逸らせば。
――――――昨日の情けない姿とは一変。
生き生きしたザックスが、サー・ヴァリスの相方のサー・リードと共に、前方でバスターソード振り回しながらモンスター達を蹴散らして行っていた。
更に其の向こうでは、セフィロスが流麗な動きでモンスターを屠っている。
・・・・・・・・・・・・溜息が出そうだ。
隊の指揮を取る身であるにも関わらず、あの人は何時も前線を行く。
今だって、ザックスに任せるのは背後で。一般兵には取り溢し分の処理しかさせず。
碌な援護も必要とせずに。
たった、独りで。前へ行く。
「サー・ヴァリス、此方のモンスターの駆除は粗方終わりましたが」
沈みそうになった思考を留めたのは、そんなの声だった。
新羅の青い制服、ヘルメットに身を包んだ其の姿は、此処数日で漸く慣れたが。
・・・・・・構えている連射銃に途轍もなく違和感が・・・・・・
のヤツ、本当にこういうのは似合わないよな。
そういえば、自分でも銃火器は苦手だと言っていたか。未だ剣の方が使い勝手が良い、と。
まあ、其の剣も余り得意では無いそうなんだが。
・・・・・・・・・・・・其れでも評価ではSSなんだからな。
得手の武器を持てば如何なる事やら。
「如何かしましたか、クラ?」
「いや別に。似合わないなと思っただけだ」
「・・・・・・良いんですよこんなモノ似合わなくて」
確かに。
苦笑混じりのの返事に、俺も小さく笑う。
まあ、何はともあれ、ひと段落は着いた。
セフィロス達が取り溢したモンスターは、や俺を含めた一般兵がトドメを刺したし。
今現在、残っている分に関しては・・・・・・
「よし。それじゃこのままサー・セフィロスとザックスさん達の援護へ・・・・・・入る必要も無いね」
「ですね」
取り合えず、セフィロスが丁度ぶった切った処だった。
彼はゆっくり身体の力を抜く様に正宗を降ろして、暫く其の場に佇む。
――――――こういう、時だ。
セフィロスが、遠いと感じるのは。
全てを拒むかの様な、排他的な雰囲気。
『英雄』とは、この世で1番他者の命を奪った者に与えられる名称だと。
そう言って哀しく哂ったあの時と同じ。
――――――容易に、近付けない。
歯痒くて、唇を噛んだ時だった。
ぽん、と。肩に乗せられた、手。
視線を上げれば、が隣に立っていて。
「・・・・・・・・・・・・?」
「頑張りましょうね、クラ」
セフィロスに目を向けたまま、独り言の様に告げられる、言葉。
――――――そうだ、な。頑張らなきゃな。
決めたんだもんな。諦めないって。諦めて堪るか、って。
俺の願いを叶える為に。あの悲劇を、繰り返さない、為に。力を貸してくれている、の為にも。
「――――――ああ、頑張ろう」
ほんの少し笑みを浮かべて返事を返したら、の向こうにいたサー・ヴァリスと目があった。
・・・・・・・・・・・・何だ?何か言いたそうな・・・・・・・・・・・・
「――――――不思議だね、君達って」
「「・・・・・・・・・・・・は?」」
不思議?俺達が?
イヤそんな、しみじみ言われる程変じゃ無いと思うんだが。
「噂は、やっぱり噂でしかない、っていう事かな」
「・・・・・・ああ」
「・・・・・・そういう意味ですか」
今まで耳に入ってきていた話と、実際の俺達とは、可也のギャップがあるんだろう。
「火の無い処に煙は立たぬ、とも言いますけどね」
・・・・・・・・・・・・如何して其処で苦笑混じりでそんな事を言うんだ、のヤツ。
「なに、噂の方を肯定して欲しいの?」
「いえ断固拒否させて頂きます」
「けど、全部が全部嘘だという訳でも・・・・・・ほら、クラ」
何だ?
視線で方向を指したに、顔を向ける。
其処には・・・・・・何故か。
尻尾があったら絶対千切れんばかりの勢いで振っているだろう。
此方に突進してくる、懲りるという事を知らない、あの――――――
「ちゃーんっっ俺の勇士ちゃんと見ててくれー・・・・・・うごっっ!?」
――――――あ。しまった。
・・・・・・・・・・・・またやってしまった。
思わずの前へ出て振り上げてしまった俺の足に、ザックスが激突する。
そのままゴロゴロと転がるヤツに、俺は溜息を吐きたくなる。
そしては。
「処構わず、毎回こんな感じですからねぇ」
「・・・・・・そ、そうだね・・・・・・火の無い処に何とやら、だね・・・・・・」
サー・ヴァリスを相手に、しみじみとそんな事を漏らしていた。
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