「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まぢですか?」
目的地に着くなり目にした風景に。
俺は、その一言しか言えませんでしたとも。
だだっ広い訓練場に、散乱する屍累々・・・・・・イヤ死んでねぇけど。
けど逆に、う〜う〜唸ってんのが何か阿鼻驚嘆地獄絵図みてぇだ。
アイザックとフェイが泣きそーになって俺等呼びに来たのも納得できるぜ。
・・・・・・・・・・・・ん?
おお。生存者(?)はっけーん。
ちょーど2人、今クラウドとちゃんに突っ込んで・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・突っ込んで?
「ちょっ――――――待て待て待て待てっっ!!」
思わず張り上げた声は、どーやら届かなかったらしい。
クラウドは上段から切り掛かってきた相手の剣を数度受け。
だが次の瞬間、力で押して奴さんが大きくよろめいて出来た隙に、即座に脇腹目掛けて剣の柄を減り込ませた。
ちゃんはちゃんで、間合いを取ろうと後方に跳んだ相手を追い掛けながら。
下から掬い上げる様に剣先で相手のヘルメットを引っ掛け頭上へ弾き飛ばして。
ソッチに気がいっちまたトコを更に背後に回り込んで、これまた剣の柄で首の後ろ強打しやがった。
「・・・・・・・・・・・・また、容赦が無いと言うか何と言うか・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・だな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あう。」
俺の後ろで嘆息した副社長さんとにーさんに、俺はがっくり項垂れる。
コレでもー、生存者(?)がいなくなったってワケだ。
・・・・・・・・・・・・しかもエグい。
2人共、一撃必殺の急所狙いでさ。一発でほぼ昏倒さしてんだもんな。
多分この屍累々タチは全員、容赦なくその一撃必殺を喰らったんだろう。
ま、体格とか持久力とか考えたら、攻撃の仕方も量より質、って判るけど。
「・・・・・・・・・・・・何ともはや・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・実に全く・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・どーすんだよこの惨状・・・・・・・・・・・・」
転がってるヤツ等は打撲ばっかで血ぃ流れてねーのが唯一の救いか?
ケドもーちょっと後の事考えてやって欲しかったぜ。
「・・・・・・・・・・・・お、遅かった・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・今日1日で医務室行きが30人・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・しかもたった2人にやられるなんて・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・ふ、不甲斐無さ過ぎる・・・・・・・・・・・・」
俺等に追い付いたアイザックとフェイが、がっくりと膝を付いて意気消沈。
・・・・・・・・・・・・いやまー打ちひしがれんのも判るけどね。
ソレに医務室に行かなきゃなんねーホド深刻なヤツなんていねぇんでねぇ?
・・・・・・・・・・・・ま、容姿端麗細身細腕、しかも年下の人間に、イイ年した青年男児が見る限り手も足も出なかったなんて。
確かにコイツ等を率いる部隊長としては、ヘコむよな。
「・・・・・・ああもう何なんですかあのふたりー・・・・・・」
「見ての通り、俺とザックスの下士官だが」
「・・・・・・んな事言われなくても判ってますよー・・・・・・けどマジで洒落になんねぇ・・・・・・」
「・・・・・・ホンットーに今年養成学校に入学してきたヤツ等なんですかー・・・・・・」
「・・・・・・俺だってココまでとは思ってなかったよ・・・・・・」
まっさか、クラウドとちゃんがココまでやらかしてくれるとは。
初等兵とはいえ、ソレナリに腕の立つヤツこの演習遠征に選んでんだぞ?なのに息切れひとつしてねぇし。
「――――――・・・・・・・・・・・・やっぱり、あの2人って只者じゃないね」
イヤそれ今更ですから。感慨深げに呟かんでください副社長。
・・・・・・あ。クラウドがコッチに気付いた。おう。ちゃんも。
・・・・・・・・・・・・いっそサワヤカなくらいにどっかスッキリしたーって語ってるよーな表情がコワイです。
けど、「ヤバイまずい」って一瞬顔に書いてすぐ無表情になったけどさ。
「――――――クラウド、」
「・・・・・・・・・・・・はい、サー・セフィロス」
「来い」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・イエス、サー」」
沈痛なにーさんの声に、2人は大人しく従って。
「説明しろ」
「・・・・・・・・・・・・手合わせを、お願いしただけです」
「其れだけでは、全員を昏倒させた理由にはならんと思うが」
「「・・・・・・・・・・・・」」
黙秘権行使ですか。
なんか気まず〜い雰囲気出てきだしてるんですけど?
・・・・・・・・・・・・そーいや、フェイがさっき、ケンカ売ってきたのは向こうだっつってたよな。
「――――――ちゃん。クラウド。何言われたんだよ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「今度はどっち。俺?ソレともにーさん?」
「ザックス?其れは如何いう――――――」
「にーさんちょっちストップ」
訝しげに眉を顰めるにーさんを片手で止めて。
俺はんー?って、俺よりちょっと低い位置にあるちゃんの頭撫でながら俯いてしまった顔を覗き込む。
クラウドもちゃんも、なーんか、自分への悪口より俺等とか互いの悪口に敏感なんだよな。
前もさー、俺等3人セットで侮辱された時あったじゃん?食堂辺りでさ。
あの時だって、自分に対する陰湿な言葉には反応薄だったのに。
暗に俺が金にモノ言わせて人を買うっヤツだってニュアンス嗅ぎ取っただけで、ブチ切れたもんなぁ。
「怒らねぇから、言ってみ?」
「・・・・・・・・・・・・怒りはしませんでしょうけど、呆れますよ」
「呆れねぇ呆れねぇ」
ちゃんの頭撫でながら反応待ってたら、ちら、とちゃんが上目遣いで俺の顔見た。
・・・・・・・・・・・・かーわいーなー。
――――――って、違うだろ俺。今はんな事考えてる場合じゃねぇって。
「・・・・・・・・・・・・大した事じゃないんです。ただ、」
「ただ?」
「・・・・・・お2人は私達を気に入っているから、私達が訓練をさぼっても、何も言わないだろう、と」
・・・・・・・・・・・・って、ソレだけ?
マジで?ってクラウドを見たら、クラウドもコクンとひとつ頷く。
思わずにーさんを見たら、呆れとも苦笑ともつかねぇ表情を、副社長と一緒に浮かべていた。
「お2人が、公私を混合する、そんないい加減な人間だと、軽視されている様で」
「・・・・・・・・・・・・うん。」
「そんな事を彼等に言わせた理由が自分にある事にも、腹が立って、つい、売り言葉に買い言葉、の様な感じで」
・・・・・・うーわー。んな、些細な事で、切れました、ってか。
直接ケンカ売ってきたヤツ等の相手すんのも面倒だ、って言い切るこのちゃんが。
何でもかんでも、興味無いね、って態度で語るこのクラウドが。
俺もにーさんも、けっこー愛されてんのなー。
「――――――で、結果が此れなのかい」
「・・・・・・いえ、私達がお相手願ったのは最初の2人だけで、此処までやるつもりはなかったのですが・・・・・・」
「・・・・・・が、自分に勝ったら今夜一晩、相手をしてやると言ったら、何故か全員が目の色変えて・・・・・・」
「ぬわぁんですとっっっ!!?」
苦笑しつつ確認した副社長に返された、ちゃんとクラウドの言葉に。
俺は思わず、ぐわしぃ!!とちゃんの肩を掴んじまった。
「え、あ、あの、サー?」
「なんつー事言ってんのちゃんっっ駄目じゃんかんな事言ったら!!」
「いえ、でも、売り言葉に買い言葉、ですし。負けるつもりは毛頭ありませんでしたし」
「そーれーでーも!!んなオイシ・・・・・・って違う!!ヤバイ発言!!万が一って事もあるだろ!!」
「・・・・・・・・・・・・はあ。」
「なのにそんな、自分を賭けの商品みてーに!!冗談でも何でも金輪際禁止!!もっと自分大切にしろ!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい」
ぜぇはぁ。
かーなり力入れて怒鳴っちまったから、ちょっと酸欠。
けど、ちゃんがいちおー頷いてくれたから、コレはコレで良し、だ。
俺は満足して頷いて、クラウドに向き直る。
「クラウドも。自分の命とか身体とか、賭けの対象とかにすんのはぜってー駄目だかんな」
「イエス・サー」
「後、が又そんな事を言い出しそうになったら止めろ」
「・・・・・・サー・セフィロス、そんなに信用ありませんか私は」
「いや、信用の有る無しに関係無く。お前達は2人共、見掛けに寄らず頭に血が昇り易そうだからな」
「・・・・・・2人共、って・・・・・・俺も含まれるんですか・・・・・・」
「そうだね。だからは、クラウドがやりそうになったら彼を止める事」
「・・・・・・・・・・・・ルーファウスまで・・・・・・・・・・・・」
俺だけじゃなく、にーさんや副社長さんにまで口々に言われて、クラウドとちゃんは小さく溜息を吐く。
ソレにちょっと笑って、もっかいちゃんの頭を撫でてたら。
――――――背後から、控えめ〜に掛けられた、声。
「・・・・・・あのー、お話まとまりましたか?ましたね?」
「だったら、あのうんうん唸ってるヤツ等、どーにかしたいんすけどー」
「「「「「・・・・・・・・・・・・あ。」」」」」
忘れてた。
アイザックとフェイのその科白に、俺等は慌てて、他んトコに手を借りに走る事になった。
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