人の口にゃ、戸は立てられん。
昔の人は、良く言ったモンだ。
いわく。
英雄とその副官が自ら進んで俺等を下士官に選んだってのは、ホントは建前で。
俺等はすっげー問題児で、俺等の行動を抑止するタメに下士官てゆーポジションに置かざるを得なかった、とか。
見た目アレなのをイイ事に、さんざ乱れた私生活を送ってて。舐めて掛かったら半殺しよりも酷い目にあう、とか。
怒らしたらセフィとザックスですら手に負えない、とか。
ヒトを見るなり妙に強張った顔をする兵士達に、俺は心ん中で小さく苦笑する。
中には明け透けに、ずざざっっ、と距離を取るヤツなんかもいたりして。
・・・・・・・・・・・・多分アレ、一昨日俺等の餌食になったヤツだ。サー・アイザック班の。
いやもー。こないだの今日なのにさー。
すーごいね。もー狂犬・珍獣扱いもイイとこだよ。
オマケに、二次災害(?)が起こらないよーにって、俺とクラには訓練参加禁止令が出ちゃってるしさー。
・・・・・・・・・・・・二次災害って何よ二次災害って。
しかも、その新しいウワサに信憑性を添えるのが・・・・・・・・・・・・
「あっ、ちゃー・・・・・・ぷぎゃ!?」
「何時になったら其の出来の良いオツムは俺の言葉を覚えて下さるんですかソルジャー・ザックス」
・・・・・・・・・・・・コレですよ。
性懲りも無く、俺に抱き付こうとしたザックス。
ホンット、本社の執務室内部での雰囲気そのままコッチ持って来たよーな感じで。
だからソレに釣られる様に、クラも人目なんか憚らずザックスの背中を踏みつけて下さるモンだから。
まー見事に周囲が固まるかたまる。
俺はこっそり溜息吐いて。
床とオトモダチになってるザックスと、未だにザックスの背中踏み踏みしてるクラに向き直った。
「クラ、其の辺で止めておいて下さい」
「・・・・・・うっうっ。やっぱちゃんだけだよ俺にやさし」
「腐っても私達の上官なんですから。人目の多い場所での其の行為は賛成致しかねます」
「其れもそうだな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ク、クラウド・・・・・・・・・・・・ちゃん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
あらら。
ザックス、クラの足背中からなくなったのに。
床とオトモダチになったまんま膝抱えてシクシク言い出しましたよ。
・・・・・・・・・・・・あーもー。
こんなんだから、俺・クラ>セフィ>ザックス、ってゆー力関係がまっことしやかに囁かれるんだ。
・・・・・・・・・・・・まー確かに否定はできんのですけどもー・・・・・・・・・・・・
「――――――で。如何されたんですか、サー・ザックス」
「・・・・・・・・・・・・腐っても、って・・・・・・・・・・・・腐っても、って・・・・・・・・・・・・」
「――――――、誰かに生ゴミの搬送でも頼むか?」
「――――――そうしましょうか、クラ」
「生ゴミちがぁぁぁああううっっ!!」
おお。復活。
拳作ってフルフル震えてしかも涙目。
・・・・・・・・・・・・って、一流の戦士でしょーがオタク。
「何でそークラウドもちゃんもっっ。いっつもいっつも俺ばっかいぢめんだよっっ!!」
「いえ別に苛めてるつもりは無いんですが (寧ろ苛めるというより弄る、だよな) 」
「本当の事を言っているだけですし (無駄に反応が楽しいもんね) 」
「何か心の声が聞ーこーえーた――――っっ!!」
「「気の所為です」」
むう。サスガ野生に近いオトコ。
こそっと漏れた本音が聞こえましたか。
「まあ、この話は置いておくとして」
「ソコッッ、クラウドッッ、勝手に置くなぁぁああっっ!!」
「ご用件を、サー・ザックス。でなければ、サー・セフィロスに貴方が職務を放棄したとある事ある事お伝えしますが」
「・・・・・・・・・・・・ソコで辛辣に言い切りつつ綺麗に笑えるちゃんがステキだと思うよ・・・・・・・・・・・・」
「ありがとうございます」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・イヤだから・・・・・・や、もういい。」
ふっ。勝った。
がくーっと肩を落としたザックスに、心の中でガッツポーズ。
やー。やっぱ楽しいね。ザックスいじり。
「で。何時になったら本題に入ってくれるんです?」
「・・・・・・・・・・・・って、本題に入れなかったのってクラウドとちゃんの・・・・・・・・・・・・」
「何か?」
「・・・・・・いやいや何でもありません・・・・・・にーさんがさ、明日の編成その他諸々の書類が欲しいって」
ああ。明日の野外実戦の。
俺等でもいちおー見直しはしたけど、まあハジメテですから?
ちょーどチェックして欲しかったんだよね。
「其れでしたら、此処に」
「さんきゅ・・・・・・ふぅん。こーゆーふーにしたのか」
「修正は必要ですか?」
「いや。イイんじゃねぇ?」
良かった。ザックスがこー言うならセフィにも通るな。
やり直し、とかって言われたらどーしよーと思ってたんだ。
だってコレ考え直すのメンドイし。
「2つに分けた隊の力のバランスは取れてるし、叩く巣がココとココってのも・・・・・・・ん?なあちゃん」
「はい」
「コッチのがカームに近くねぇ?なのになんで外してあんの?」
「ああ、其処は足場の悪い崖の下に巣がある様で。この2つと比べて小さいですし、今以上の繁殖の可能性は低いかと」
「・・・・・・前もちーと思ったんだけどさ。どこでんな細けぇ事調べてくるワケ?」
・・・・・・・・・・・・この程度で細かい、なんて言われちゃってるよ。
俺は思わずクラと顔を見合わせて、溜息を吐く。
「この地図は如何やって作られたんですか如何やって。ヘリはただ空を飛ぶだけのものでは無いと思うんですがね」
「上空から見れば、何処が山で谷で森で崖か、その程度の地理くらい、判るでしょう」
「其処へ今回討伐予定のモンスターの特色照らし合わせてみれば、其れ位の推測は簡単に出来ます」
「・・・・・・・・・・・・なっはっはー。そーいやそだな」
なぁんなんでしょーかねぇその空笑いは。
つか、ザックスってホントにソルジャー1st?
1stって、確かミッションによっては一個小隊を率いる隊長にもなるんだよねぇ?
・・・・・・・・・・・・俺、ザックスの隊にだけは配属されたくないなぁ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ザックス『付』下士官だから、無理だろうけど。
あーやだやだー、なんて思いながら再び吐いた溜息は。
ちょーどおんなじ事を考えてたみたいなクラの溜息とぴったり重なった。
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