「クラってさー、演技上手いよね」
「・・・・・・アンタには負けると思うがな」
「えーだって俺は先生が良かったもん。アタリマエ?」
「先生って・・・・・・演劇やってた時期でもあったのか」
「んー・・・・・・そんなカンジ?」
演劇、なんて可愛げのあるモンじゃなかったけどね。
俺の場合、周りから違和感を持たれない様に見せるタメだったし。
先生・・・・・・ってゆーか、アイツはある意味、死活問題だったし?
「けど、そろそろ苦しくなってきたかなぁ」
「演技が、か?」
「ゆーとーせー演じるのが、ね」
クラはまだいーよ。無愛想無表情で通してるんだし。
いつもよりちょーっと口数少なくして、ぶっきらぼーに敬語使えばイイだけなんだから。
「俺元々喋るヒトなのにさー・・・・・・バカ笑いとかしたくてもできないしさー・・・・・・」
「・・・・・・俺は慣れたから良いが、免疫のない人間は夢が壊れるぞ」
「んなの、勝手に見るヤツが悪い」
「ま、確かに」
俺だっていちおーナマモノなんですよ。トイレにだって行くし鼻だってかむ。
だからって、なぁんで顔がこんなだからってしおらし〜くしなきゃなんないかね?
一定の表情でデスマス調を続けてんのって、けっこーメンドイんだよ?
・・・・・・・・・・・・イヤそりゃ最初は納得尽くでやってたんだけどね。
その方が周りのヤツ等も疎遠するからって、自分からそーゆー態度取ってましたとも。
けど最近ほんっと、特にザックスに突っ込み入れんのに苦労する苦労する。
「・・・・・・はぁ〜あ。まーたザックスの『敬語はヤメロ!!』攻撃復活してきたしさー」
「・・・・・・確かに疲れるよな。何気にセフィロスも其れに便乗してきたし」
「・・・・・・・・・・・・セフィ相手はともかくザックス相手する時はほっとんど素でしょーがクラは」
「・・・・・・・・・・・・そういうこそ繕ってるのは言葉遣いだけだろ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・よーするに、ドッチもドッチなワケですね。
ああんもー。カウントダウン入ってますよ化けの皮剥がれるまで。
「・・・・・・ルーファウスはルーファウスで、今更敬語使われてもキモチワルイ、だからな。特に」
「・・・・・・ソレは俺の所為?ねえ俺の所為?」
「・・・・・・・・・・・・いや、仕方無い、に分類するだろ。俺もまさかアレでアイツに気に入られるとは思ってもみなかった」
うん。だよね。
俺だって、社内でバッタリ会うにしてももー少し後だと思ってたし。
あの子お坊ちゃまだからソレナリにプライド高いと考えてたワケよ。
いわく、チカンに襲われかけたってのも訓練生に助けられたってのも、直ぐに記憶から削除するんだろうなーって。
クラと顔を見合わせて、思わず大きな溜息。
その時だ。また性懲りもなくインネン吹っ掛けてきやがったバカがいたのは。
「おぉや、下士官のお2人は休憩中ですか」
「イイですねぇサーに気に入られてる人間は。サボってても注意されねぇんですから」
「上官に取り入る術ってヤツを是非ともご伝授願いたいもんだ」
・・・・・・・・・・・・ま。影でぐちぐち言うしか能のないヤツ等よりは、多少骨がありそう、かな。
だけどこーゆーヤツってほんと、科白がワンパターンと言うか何と言うか。
ソレはアレ?どっかでそーゆーマニュアルみたいなのでも売ってんの?
「――――――俺も、丁度今剣技のいろはを先輩方に教わりたいと思っていた処です」
・・・・・・あー。ってゆーか、今のでクラにスイッチ入りましたよ。
鬱憤、溜まってたしね。
ソレに、女の子扱いとかでからかわれんのも速攻ブチ切れるけど。
俺とかセフィとかザックス絡めた罵りにも、即ブチ切れますから。
「――――――お手隙になられましたのであれば、是非、お相手を願えますか?」
とかゆー俺もちょっちムカっとキてます。
いっくらあの2人が俺等気に入ってるからって、ソレで特別扱いするワケないっしょ。
そんな上に立つ人間として示しのつかない事。アレでも公私はちゃんと分けてんだよ一応。
寧ろその特別扱いこそが今後の命取り、とかって言うんじゃない?
なにせあの2人は、戦場を知ってるから。命の遣り取りをした事があるから。戦闘に関する事にゃけっこーシビアなんだよ?
凭れ掛かっていた壁から身体を離して、俺とクラはおバカにも俺等にケンカ吹っ掛けてきたヤツ等に向き直った。
因みにクラは、バスターソードとまではいかないけどソレナリにでかい大剣を。
俺は細身の、日本刀に似た片刃の剣を、ソレゾレ手にしてる。
この訓練施設には、大小古今東西イロイロな形の剣が訓練用として置かれていたのだ。
この中で自分に1番合った剣を選びなさい、ってヤツだ。
俺としては、唾がなくてもーちょっと短い忍刀の方が良かったんだけど。
つかぶっちゃけ鋼糸とか布とか鉄扇とか苦無とか手裏剣とかのが断然使い勝手イイんだけど。サスガにソレはなかった。
んで。ケンカ買われたヤツ等はといえば。
まさか俺等がそーくるとは思ってなかったみたいでビックリしてたんだけど。
次の瞬間には、上等じゃねーか、ってすっごいコッチを見下した笑みを返して下さった。
「イイぜぇ?お望み通り教えてやる」
「俺等が1から10まで手取り足取りな。何なら今晩オールでどうだ?」
んーイイねぇ。
ドコまでいっても下世話でさ。
俺こーゆーヤツ等好きだわ――――――ボコるのに罪悪感皆無だから。
俺は意識して、口元に笑みを履き。
「――――――そうですね。私が負けたら。お付き合い致しましょう?」
・・・・・・・・・・・・後からクラに聞いたんだけど。
その時の俺って、壮絶に婀娜っぽくて壮絶に怖かったらしい。
いやぁソレホドでもあっはっは。
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