Ver.Cloud





 演習遠征は、カーム付近に新設された神羅の第4基地で行われる事となった、らしい。

 内容としては10日間。射撃と剣と魔法の指導。

 最後の3日間程で、付近のモンスターを実戦相手にして終了、だそうだ。

 丁度良い具合に、今の時期レヴェルの低い虫系のモンスターが付近に大量発生する、らしい。

 非常事態が起こった場合、ミッドガルに近いから直ぐに連絡が取れるし。

 まさに、演習には打って付け、と言うのは、嫌そうに顔を顰めたザックスの言。





 別に何処だって良いんだけどな。

 モンスターを相手にするのに変わりは無いし、移動手段も・・・・・・だし。





「大丈夫か、クラウド?」

「はいだいじょうぶで・・・・・・・・・・・・うえっぷ。」

「言ってる端から全然大丈夫そうじゃありませんよ、クラ」

「まっさかこんなに弱いとはなぁ」





 うっさい体質なんだ仕方無いだろ。

 口元押さえてる俺は、可也青い顔をしてるんだろう。

 覗き込んでくるの顔が、とんでもなく心配そうだ。





「少し、横になりますか?」

「・・・・・・・・・・・・いや、もう少しで到着だから、いい」





 何なら貸しますよとぽんぽんと叩いてる膝は、物凄く捨て難いんだけどな。





「あっ。じゃあ俺俺、俺立候補する〜」

「やっぱ使う。悪いけど

「ぴんしゃんしてる人に貸す膝はありません。どうぞ、クラ」

「うっわクラウド性悪っっ。ちゃん冷たいっっ」

「具合が悪いと言っている人間の近くで喚かないでくれますかソルジャー・ザックス」

「冷たくなんてありません。愛情の差と言って下さい」





 あ。ザックス凹んだ。

 っていうか凹むなよこんな事くらいで・・・・・・そんなにしてもらいたかったのか、膝枕。





「・・・・・・けど、なんか安心しちまったなー、俺」

「何がです」

「クラウドもちゃんも。ちゃーんとニガテな事あってさ」





 ・・・・・・・・・・・・何だソレ。行き成り大人しくなったと思ったら。

 そんなに俺が車酔いなのがオモシロ可笑しいのか。

 ソッチの方が俺より余程性悪なんじゃないか?





「だ、だってさー。にーさんもだけど、クラウドもちゃんも人間離れしてるくらいいろんなトコでパーペキじゃん?」

「・・・・・・・・・・・・サー・セフィロスと私達如きを同一に見るなんて、恐れ多いにも程がありますよサー・ザックス」

「けど俺から見たらそーなんだぜ。何でも手早くこなせて、しかもお人形さんみてーにキレーだろ見た目」





 ぎろん、と睨み据えた俺達に、ザックスは慌てて弁解する様に言葉を紡ぐ。

 が。何なんだ其れは。

 確かには人間じゃ無いし、セフィロスはジェノヴァの媒体に選ばれてしまっただけの事はあるけど。

 如何して其処に俺まで含まれる。しかも最後の一言。聞き逃せないぞ。





「けどにーさんてあー見えてどっか抜けてるトコあるし、ちゃんは極度の方向音痴だしー」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・其れは言わないで下さい」

「何か、ソレゾレさ。ちゃんと人間臭いトコあって、ほっとした」





 ――――――そんな、しみじみ言われても、な。

 返答に困る。

 多分も一緒だ。嬉しいんだろう。でも。

 返す言葉が、見つからない。





「・・・・・・こんな話はヤメヤメ。寝てろよクラウド。着いたら起こしてやっからさ」

「――――――ありがとうございます」

ちゃんも。足しびれるよーなら直ぐ代わってやっから」

「・・・・・・・・・・・・はい」

「イエいいですソレは遠慮しますソルジャー・ザックスの膝枕なんて考えただけで気持ち悪くなりそうなんで」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ソレ何気にヒドくね?クラウド」





 即答した俺の言葉に、ザックスはがくーっと項垂れて、俺はと一緒に小さく笑う。

 其の時だ。揺れていた車体の走行が止まって、エンジン音が切れたのは。





「およ。もー着いたのかよ?」

「・・・・・・みたいですねぇ。クラ、折角横になったのに」

「・・・・・・ソルジャー・ザックスが訳の判らない会話を吹っ掛けてくるから・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・どーしてソコまで俺の所為?」





 しくしくー、と泣き真似する大男というのは結構気持ち悪い。ぶっちゃけ似合わない。

 ・・・・・・なのに如何してザックスだとこんなに合ってんだろうな・・・・・・

 やっぱり、苛められキャラだからか?





「――――――何だ、お前達。またザックスを苛めていたのか?」





 突然そんな科白が振ってきた。

 見上げて見れば、セフィロスがドアを開けて此方を覗いている。

 今回視察の為に一緒に着いてきたオエライさんの処にいた筈なのに。

 良いのかそっちほったらかしてコッチに来て。





「あっにーさん。そーなんだよクラウドとちゃんってばひでーんだ」

「人聞きの悪い事仰らないで頂けますかサー・セフィロス」

「俺達の言葉に何処かの誰かさんが勝手に凹んでるだけです」

「何だ、そうだったのか。其れは済まなかったな」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・にーさんまで俺見放すのね・・・・・・・・・・・・・・・・・・」





 喚こうとしたザックスを遮って一息で言ってしまえば、あっさり謝罪された上にザックスがまた沈む。

 其れにしても、何だか最近、セフィロスもノリが良くなってきたよな。

 『昔』では余り無かった事だ。何だか嬉しい。

 ――――――きっと、多分。のお陰なんだろう、な。





「泣いている暇があるならさっさと出て来い」

「うえぇえっっ、にーさんくびっっ、首絞まるっっ!!」

「クラウド、。お前達は編成、スケジュールの確認、見直しだ。頼むぞ」

「了解致しました」

「イエス、サー」





 ずるずる、ずる。

 首根っ子を捕まれ引き摺られていくザックスが、何だか少し哀れに見えた。

 ・・・・・・・・・・・・散々苛めていた俺の思う事じゃないがな。

 取り合えず、今は仕事だ。





 俺達は脱いでいたヘルメットを被り直し、端に避けてあった書類を手にして、車内から降りる。

 途端、目に突き刺さる様な太陽の光と。

 ・・・・・・・・・・・・一斉に此方を向いた初等兵やソルジャー達の、視線。

 ああ、もう。この暑さで既に鬱々しているっていうのに。益々鬱陶しい。





「・・・・・・・・・・・・すごーいね、なんか」

「・・・・・・・・・・・・ああ、そうだな。セフィロス達の手前、向こうが売りたがっている喧嘩を買ってやれないのが残念だ」

「イヤそっちじゃなくて。以外に視界が悪いよね、コレ」

「・・・・・・ヘルメットの話かよ・・・・・・」





 まあ確かに視界は悪くなってるけどな。

 周囲の視線は気にならないのか。

 ・・・・・・・・・・・・いや、直接喧嘩売りにも来ない腑抜けは気にする価値も無し、だったな。

 ・・・・・・其れにしても・・・・・・





、楽しそうだなアンタ」

「んー?そりゃあ、ね。久々に身体動かせるかもしんないんだから。クラもでしょ?」

「まあな。下士官になってから、全然剣振るってなかったから少し鈍っているかも知れないが」

「じょぶじょぶ。タダの訓練と変わんないし。最終実戦の事前調査はばっちし。万一なんかあっても」

「「俺達の敵じゃない?」」





 見事にハモった最後の言葉に、思わず小さく吹き出す。

 そうだ。の言う通り。訓練生時代の訓練と何ら変わらない。

 実戦相手になるモンスターが火に弱い事も、毒を持っている事も調べて判っているから対抗策も万端だ。

 イケ好かないが初等兵のヤツ等にだって無理を強いない様なスケジュールを組んでいる。

 其れにセフィロスがいる。ザックスもいる。ソルジャー1stは他に2名、2ndは1名、3rdは3名だ。

 は強いし、俺だって腕には自身がある。最強じゃないか。





「――――――楽しそうだね」





 2人して小さく笑っていた時、背後からそんな声が掛けられた。

 基地内に到着したというのに気楽な俺達を見て、とうとう誰かが我慢出来なくなったのか。

 折角良い気分だったのに。誰だ全く。





 そう思いながら、振り返って・・・・・・・・・・・・絶句、した。

 剣や銃といった装備を片手にわらわらと演習場へ向かう兵士の中。

 白いスーツ、という出で立ちは・・・・・・・・・・・・浮き立つ以外何でもないぞ。

 ――――――まさかコイツが、視察の為に着いて来たお偉いさん、か?

 ・・・・・・・・・・・・畜生。こんな事なら、指令書斜め読みするんじゃなかった。





「・・・・・・・・・・・・あれ、君――――――」





 溜息を噛み殺す俺の横で、きょとん、と首を傾げたに。

 神羅カンパニー副社長、ルーファウス・神羅はにこりと微笑んだ。

























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