「――――――にーさん、コレまじで?」
「本気じゃなければ何だ。お前には其れが夏祭りの企画書にでも見えるのか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・イエ見えません。」
見えませんとも。
けどじょーだんで済ませて欲しいんですよ俺としては。
だってそーだろ!?
確かに毎年毎年っっ、アホみてーに繰り返される一大行事のひとつに数えられてるけど!!
何時もはにーさんが編成やってたじゃねーかっっ。
それなのに何でっっ!!たかだか演習遠征如きにっっ!!
「なぁんでよりによって俺とにーさんが総出しなきゃなんねーワケ?」
「仕方あるまい。上からの命令だ」
「しかも視察団の護衛を兼ねるってっ。なーんでんなトコに出張ってくんのっっ?」
「・・・・・・・・・・・・知るか」
「オマケにココっっ。何だコレッ、何だコレ――――っっ!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・恐らく、だからこそ俺達を指名したのだろうさ」
わーかってっよんなこたぁ!!
イヤやっぱ訂正。ワケわっかんねぇし!!
なんだって護衛対象がアイツ!?直に名前書いてねーけど視察っつったらぜってーアイツだ!!
タークスの面々はどーしたタークスの面々は!?
しかも『ソルジャー・セフィロス、並びザックス付下士官の2名も強制参加』なんだよっっ!?
「にーさんコレ何とかなんねぇの!?」
「・・・・・・教えてやろう。其の指令書を発足したのはアイツ本人だ」
「うっっっぎゃ――――っっ!!」
何とか出来ねぇじゃん!!
しかもイキナリ判っちまったし!!
今までノータッチだったこーゆー系統に副社長出張ってきてしかも俺等を護衛に据えた理由が!!
「どーすんだよも――――っっ!!?・・・・・・ほぐっっ!?」
「静かにしやがって頂けませんかサー・ザックス」
「そんなに叫びたいのなら山にでも登りに行って下さい野生の動物らしく」
後頭部になんかクリティカルヒィット!それも2個!!
蹲った俺の足元に転がったのは、消しゴムとホッチキス。
しかも一緒に飛んで来たちゃんとクラウドの声がかーなーりーキビシイ。
・・・・・・・・・・・・なんか最近、こんなんばっかな、俺。
せっかくせっかく、2週間の遠征から帰って来てちょっこーで執務室顔出したってーのに。
モチロンちゃんとクラウド会いたさに!!
・・・・・・なのにあんな指令書見せられて、しかも野生動物呼ばわり・・・・・・
もーちょっとねぎらってよ俺を。
「ザックス、鬱陶しいからいじけるな」
「前から思ってたんですけど、この部屋除湿機必要じゃありませんか?」
「そうだな。検討しておこう」
「・・・・・・・・・・・・に、にーさん、クラウド・・・・・・・・・・・・」
俺を凹ませてんのオタク等だろー?
・・・・・・・・・・・・なんかホント、スタッ○サービス電話掛けてやろっかなー・・・・・・・・・・・・
いぢいぢ。言われたからにゃいじけてやる。体育座りしてやるっ。絨毯にのの字書いてやるっっ。
そんな俺の肩に、ぽん、と。
振り返ってみたら、いつもほんわか表情のちゃんが。
――――――そーだ。俺にはまだちゃんっつー強ぉい味方がいる!
「サー・セフィロスもクラウドも、楽しいのは判りますが余りサー・ザックスを苛めないで下さい」
「ちゃん・・・・・・っっ」
「使い物にならなくなったら如何するんですか。あ、此方サーが遠征へ行かれていた間の書類です。目を通しておいて下さい」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え゛」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうだった・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ちゃんはこーゆー人だった・・・・・・
何時もイツもいっっっっっつも、最後にトドメ刺してくれるんだよ・・・・・・
今度こそ縦線を背中にしょった俺に、にーさんもクラウドも爆笑寸前。
ひ、人の不幸を・・・・・・っっ。
思わず作った拳もぷるぷる震えるって。
「――――――処でサー・セフィロス。先程ソルジャー・ザックスが喚いていたのは何なんですか?」
「・・・・・・・・・・・・気になるか?」
「そりゃあ、あのソルジャー・ザックスがアソコまで嫌がるものですから」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・見れば判る」
「宜しいのですか?・・・・・・では、拝見致します」
ああっっ。ににににーさん何クラウドに指令書渡してんの!?
見せなくていーってっ、まだ握り潰せる可能性1パーセントくらいはあるってっっ!!
・・・・・・って、もー遅いか。
クラウドの眉間にシワが。あうー。
「・・・・・・良い加減、出し惜しみするなという事だろう」
「・・・・・・俺あんまし出したくない・・・・・・特にアイツの前になんて」
「何の事です?」
――――――知らぬは本人ばかりなり、を地でいってますよちゃ〜ん・・・・・・・・・・・・
ああもうっっ。こんなおカタそうな顔してそんな天然っぽいトコあるからっっ。
ついつい狼共から守ってあげたくなっちゃうんじゃないかあっっ!!
「――――――知っているか。本社内でのお前の渾名を」
「?私の、ですか?」
「・・・・・・・・・・・・あー。アレか。あの、なんかナルホド確かにハマってる様な」
「サー・ザックスはご存知なんですか?」
「確かに言い得て妙ですけどね。俺は嫌いです」
「・・・・・・クラウドも?」
「――――――深窓の令嬢、だそうだ」
あ。ちゃん絶句・・・・・・判んなくはないんだけどね。よりにもよって女性の代名詞。
まーでもそー言われても仕方ないっちゃー仕方ないんだけどさーあっはっは。
下士官になってからちゃんこの執務室にほぼ缶詰状態だかんな。
俺とにーさんとクラウドとが、あんまし外に出さないよーにしてるせいで。
「まあ、其れだけじゃないんだろうがな」
「不満半分、興味半分、ってかね?」
「いえ、不満9割興味1割でしょう。皆さんやっぱり納得いってないんですよ。入隊すらしてない訓練生が行き成り下士官だなんて」
って言われてもなー、クラウド。
にーさんは実力見てお前等選んだんだけどー。
・・・・・・・・・・・・ぶっちゃけ、半分以上は面白そうだったから、って理由っぽいんだけどな。
「・・・・・・そんな風当たりキツイ?」
「結構色々言われてます。新米のぺーぺーがとか足手纏いにしかならない様なとか時にはもっと下世話な勘繰りまで」
「――――――ほぉう?」
「・・・・・・・・・・・・あの、其れが私の渾名にどう関係が?」
あう。ちゃん、なーいす。
溜息混じりのクラウドや一気に機嫌が降下したにーさんまで、一瞬で呆気にとられました。
クラウドはにーさんをチラッと見て、にーさんが頷いたのを確認してから、見ていた指令書をちゃんに渡す。
ちゃんは首を傾げながら受け取って。
やっぱり、はてな、てな感じで瞬きひとつした。
「演習遠征、ですか。此れの何が不満なんですか?」
「・・・・・・あんねちゃん。ソレ強制なのよ。ぶっちゃけるとちゃんとクラウドを人前に出せ、って事なのよ」
「そうですね。ですが、其れの何処に不都合が発生するんです?」
くぅうっっ。判ってねぇっっ!!判ってねぇよちゃん!!
こんなのイキナリ言われたって、演習自体はともかく最後のモンスター退治なんて無事に終えられるワケねーじゃん!!
「・・・・・・サーの独断と偏見で起こった今回の人事異動に、色々な処から不満が出ているんだ」
「ちゃんとクラウドって本当に俺等の下士官に相応しいのー?ってさ」
「独断と偏見は兎も角・・・・・・早い話がそういう事だ。ああ、後は俺達の下士官になった人間への興味か」
いっくら俺等の下士官だからって、成績優秀だからって。
たかだかレヴェル1ケタとはいえ経験のない人間がモンスター相手に戦闘繰り広げられんのかと言ったら、ソレはノーだ。
・・・・・・・・・・・・まあ、ちゃんとクラウドならだいじょーぶだろうけど。
けど、やっぱり2人とも、ついこないだまでモノホンの戦いすらやった事ない訓練兵だったのは確かで。
ぜってー上げ足取られるって。
「大丈夫ですよ。サー達のご迷惑にならない様、後ろの方で大人しくしていますから」
「ソレじゃダメなんだよぅちゃん。やっぱ使えねぇんじゃねーかって下手すりゃ解雇なんだから〜」
「また書類の山に埋もれるのは御免被りたいのでな。解雇だけは避けたい」
「そーだそーだ」
「・・・・・・・・・・・・書類の処理ぐらいご自分でなさって下さい。特にソルジャー・ザックス」
ぐっっ。クラウドの視線がイタイ。
けどその視線は、すぐに浅く伏せられてちゃんの方を見た。
「――――――まあ、ですがこうして正式な書類として指令が出されている以上、辞退は出来ないのでしょう?」
「なら出るしかありませんよね」
「書類を届けに行くたび言われる暴言にもそろそろ飽きてきましたし」
「クラ、まだ言われてるんですか?次からは私が代わりに行ってきましょうか」
・・・・・・・・・・・・ひきっ。
今ナチュラルにすんげー事言いませんでしたかちゃん?
ちゃんが執務室から出る?
いやいやいやいやんな事は許可出来ません!!
「・・・・・・・・・・・・、アンタ前にもそう言って届けに行って、一体何時間戻って来なかった?」
「・・・・・・・・・・・・俺がブリーフィングの帰りに見つけたから良かったものの」
「・・・・・・・・・・・・アレにゃ俺も驚いたな。まーさか本社内で迷子になるなんてさ」
「だからアンタには書類処理に回って貰ってるんだろ。1人で出歩くなんて却下だ却下」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハイ。」
くぅう〜〜〜〜っっ。凹んじゃって、凹んじゃってっっ。
美人なクセにこーゆートコ可愛いよなぁちゃんってば。
「と、兎に角、強制であれば仕方ありませんよね」
「・・・・・・俺もサーの観察眼が曇っていたなどと言われない様頑張ってみます。サーも腹括って下さい」
「・・・・・・・・・・・・ああ、そうだな」
「せめてもーちっと時間ありゃあ、郊外連れてってモンスター退治とかさしたかったんだけどなぁ・・・・・・」
「今更でしょうソレ」
「それにしても遠征ですか。楽しみですねぇ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・ちゃんちゃん。
そんなアッケラカンと楽しみ、って。キャンプしに行くのとはワケ違うんだから。
もーちょっと事態を重く見ましょーよ。
何も判ってなさげなちゃんに、俺はにーさんとクラウドと目を合わせて、デッカイ溜息を吐いた。
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