の声は何色にも変わる。俺はそう思う。
浮かべる笑みが季節を纏うのと同じ様に。低さ柔らかさから、虹の七色に変わる。
・・・・・・・・・・・・今は、多分青色。何者をも沈ませ飲み込む、海の色だ。
「――――――では、サー・セフィロス、ひとつ、お伺いしても宜しいでしょうか?」
「・・・・・・・・・・・・何だ?」
「何故、私達を下士官に任命されたのでしょうか」
行き成りの核心。大丈夫なのか其れで。
確かに口回りの良くない俺よりも、に任せた方が適切だと思うが。
・・・・・・・・・・・・まあ、この人相手に遠回しに言っても余り意味は無い事も、判ってるんだけどな。
――――――其れに、其の程度の腹の探り合いは、最早意味が無いのだろう。
はザックスに、力をセーブしていた事を勘付かれたんだ。俺の拙い手抜きくらい、見破られていても可笑しくない。
「――――――聞きたいか?」
「ええ、是非」
「ふむ・・・・・・ただ単に気に入っただけだ、と言っても、納得しそうにないな?」
「そうですね、ただ単に気に入られただけだというのであれば、納得致しかねますね」
静かに話すの表情は、何を考えているのか全く読み取れない淡い微笑。
・・・・・・・・・・・・何か以前食堂で切れた時の笑顔を思い出した。
いや確かに俺だって、此処へ来るまでは一体如何いう事なんだ此れは、と可也息巻いていたが。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・また、あの恐怖の笑顔が出るのか?
「ザックスの専属下士官になるのは不満か?」
「不満も何も、其れ以前の問題かと私は思いますが」
「ほう。其れ以前の問題、とは?」
「兵士養成学校に入学して間も無い、経験も能力も力も無いただの訓練兵が、何故ソルジャーの下士官なのか、と」
冷や汗が背中を伝ってぎこちなく視線を逸らせば、ザックスも何かを感じ取ったのかおたおたとしている。
逆に、見上げられたセフィロスは涼しげな顔だ。
流石、鉄の仮面。
「だが、今はもう訓練兵では無いな?評価SS、仕官候補生・、並びにクラウド・ストライフ」
「・・・・・・・・・・・・はい。今回サー付きの下士官になるにあたり、特例にて昇進致しました」
セフィロスの目が俺とを見る。
思わず口を噤んでしまったの代わりに苦々しい思いで返事を返せば、セフィロスは楽しそうに口元を歪めた。
俺達の特進は確かに本当の事だ。
英雄や其の副官の下士官が、高々訓練兵だというのは外聞的に余り宜しく無いのだろう。
しかも俺達は本当に、評価SSを叩き出してしまった。ソルジャー候補上等兵と同等の、評価を。
其の事は学校内でも取り立たされ――――――能力も力も無いとは、最早言えなくなっている。
・・・・・・・・・・・・ああ。そういえば。あの時評価SSの事をサラッと流したのも、この人なんだよな。
なんかまたムカ付いてきた。
あの一言で、どれだけ俺達が苦労した事か。
あの模擬戦闘から、可也、主に他の訓練兵達の目が変わったのだ。
訓練に付き合ってくれだの銃の扱いを教えてくれだの。
もう人の波に押し潰される勢いだった・・・・・・挙句親衛隊なんて馬鹿馬鹿しいものまで出てきやがって。
もう少しで全員半殺しにする勢いで暴れてしまいそうな処まで追い詰められたんだぞ俺は。
「話を戻そうか。お前達を下士官にした理由だが」
「――――――はい」
「評価SS、此れがまずひとつだ。実戦経験など此れから幾らでも養える。其れから、俺への態度」
「・・・・・・・・・・・・はい?」
「・・・・・・・・・・・・態度、ですか?」
何だ?俺達は何か、セフィロスの気に障る様な事でもしたのか?
そんなヘマはしていない筈なんだが・・・・・・ザックスを足蹴にしたのは兎も角。
だって何故かザックスを前にすると、気が抜けるというか何というか・・・・・・如何しても、気を張る事が持続出来ない。
しかも、何かとにちょっかいを出してくるし。
まあ、ザックスの事はこっちに置いておいて、だ。
思わずと顔を見合わせる。
ほんの少し素に戻った其の表情にも、俺何かしたっけ?という困惑が浮き出ていた。
そんな俺達に、セフィロスが目を細める。
其れは、楽しいというより、優しい、という感じの細め方で。
「俺を前にして怯みもせず、虚勢も張らない。部下としての型に嵌りはしているが、如何にも形だけ、というのがな」
「「・・・・・・・・・・・・」」
「ああ後、ザックスを容赦無く蹴り倒せる処も、見事にこき下ろせる処も」
「・・・・・・・・・・・・にーさんソレいま関係あんの?」
「大有りだ。そういう処がな、本当に、単に気に入っただけだ。其れでも矢張り、納得いかないか?」
ザックス云々は兎も角。
・・・・・・・・・・・・其処でそんな艶やかな笑みを見せられたらな・・・・・・・・・・・・
納得するしないは置いといて、俺はもう肯と言うしかないじゃないか。
だって此れは本当に、セフィロスが心底嬉しい時に浮かべる微笑だ。
知っているし、覚えている。
21の身体なら、速攻で押し倒し・・・・・・・・・・・・いやいやいやいや。
・・・・・・・・・・・・ヤバイぞ、俺。
『未来』を経て、結構神経図太くなっているのには自覚していたが。
・・・・・・・・・・・・最近、考えが親父化までしている様な気が・・・・・・・・・・・・
いや、そんな事今は良い。良いったら良いんだ。
ちら、と横を見上げる。其処には何かを思案している様な、の横顔。
其の脇腹を肘で突付き、俺に視線を向けさせる。
そして無言で訴えるのは、こうなったら仕方無い、という諦め。
此処に来るまで、如何やって下士官の辞退を進言しようかと頭付き合わせて試行錯誤していたが。
断る建前がほぼ潰されてしまっている以上、此れ以上断固拒否の姿勢を取り続けていると余計怪しまれるだけだ。
――――――其れに、俺の本心としては。
セフィロスの言葉に、純粋に嬉しい、と思っているから。
・・・・・・・・・・・・悪いな。
此れから色々と動きに制限は付くだろうが、多分其れなりにメリットもある筈だし。
俺は結局、セフィロスには甘いし弱いんだ。
「――――――いえ、一応、納得致しました」
「そうか」
嘆息混じりに返したに、セフィロスの笑みが更に深まり。
俺は思わず見惚れてしまった。
とセフィロスが並んで立っているこの状況。
――――――結構、いや可也の、眼福かも、しれない。
そんな事が一瞬脳裏を過って、俺は今度こそ本当に、自己嫌悪に陥った。
だから俺は一体何処の親父だ、と。
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