・・・・・・イヤもー今日は1日ホンット踏んだり蹴ったりじゃない?
何でってそりゃあーた。
まーさか特別訓練にあのお2人さんがやってくるなんてさー。
・・・・・・・・・・・・まあね。ザックスはまだ判る、うん。俺等とはスデに面識あるし。
かーなーり、懐かれてるみたいだし。
俺等と更にお近付きになる為、親睦を深めるタメなら何だってしそうだ。
だから出張ってきてもオカシクナイさこんちきしょう。
――――――問題は、アッチ。
俺を見てもクラを見ても、面白いモノを見つけた、程度にしか瞬かなかった翠の瞳。
ドコまで根深いのかはハッキリしなかったけど。
・・・・・・・・・・・・ああ、でもやっぱり災厄の母に侵食されてる、って。
ソレだけ、判った。判ってしまった。
・・・・・・しかも教官のヤロー。
黙ってた方が面白そうだったから、って理由でマジに2人が来る事を俺等全員に秘密にしてたし。
で、イキナリ出て来たかと思えば、百聞は一見に如かず、とかって模擬戦闘おっ始めやがって。
いや、ソレはまあ、別にイイ。
俺だって今まで(主に忍者時代)身体で覚えろ、的なスパルタ教育を受けてきたしな、うん。
ぶっちゃけ、マニュアル通りの訓練より、臨機応変に対応しなけりゃいけないあーゆーヤツの方がよっぽどタメになる。
・・・・・・・・・・・・だーけーどーさー・・・・・・・・・・・・
なーんでその相手に、俺とクラを選ぶかな?
俺等いちおー色々アレコレ事情しょってるのよ。ぶっちゃけ、目立っちゃイケナイの。判る?
なのにあんな、例え本気じゃないからっつったって、強いヤツと戦うって事になったら俺だってソレナリに昂ぶっちゃうワケ。
そりゃもー、完膚なきまでに叩き潰してやりたい、って思うくらいには。
クラはクラで、根本まっすぐで戦闘バカだから、手ぇ抜くってのが下手なのね。
そんな俺等が本気抑えるのに、どんだけ苦労すると思ってんの。
模擬戦闘なら模擬戦闘らしくさー、おんなじレヴェルの人間同士でやれよ頼むから。
セフィロスVSザックスとか。英雄VSその副官とか。ソルジャーVSソルジャーとかさー。
なのになーんで、訓練生から相手選ぶかなー。しかも俺とクラ。
30分くらい経ったトコで、もーいー加減イヤになってきて、相手放棄しましたとも。
イヤそれとなーく、だけどね。
馬鹿力で振り下ろされた真っ向からの剣戟を受け流し損ねたフリして、自分の持ってた剣取り落としてやったのさ。
「「――――――参りました」」
浅く息を繰り返しながら降参の意を示したら、俺の声と重なる様にもう1つの声。
ちら、と視線をやってみれば、どうやら同じタイミングでクラの方も白旗上げたみたいだ。
持っている剣と片膝を床に付けて、俺とは違って、本気で肩で息してる。
アーレーはー、手ぇ抜けなかったってゆーより持久力が底尽きた、ってカンジ?
仕方無いか。クラの身体はお子様だもんな。
ま、なにはともあれ、怪我なくて何より。
――――――と、ソコへ。
どおおっっ!!
思わずビクッと身体が縮こまりました、うん。
周りを見回してみれば、何やら興奮冷めやらぬ表情で、拍手喝采するクラスメイト達。
「すっげぇ!!スゲェよアイツ等!!」
「ストライフすっげぇ力あんのな。刃と刃がぶつかった時、結構火花飛んでたぜ」
「ソルジャー相手に、ココまで出来るなんて」
「見たかよのあの剣技、良く出来るなぁあんな事!」
・・・・・・・・・・・・いやーん。ソレホドでもーぉ。
空笑い浮かべそうになって、慌てて顔の筋肉を引き締める。
俺、なんもヘマしてないハズだよね?
アイツ等ほど演技が得意ってワケじゃないけど、ちゃんとソレナリに、ソルジャー相手に健闘する訓練生、出来てたよね?
得手不得手は兎も角、んもー手ぇ抜いて抜いて抜きまくって、実力すら見えないよーにしてましたよね?
にも関わらず。
どーして、たかがこんくらいのチャンバラもどきで、ココまで興奮出来るんだか。
妬みすら、純粋な賞賛に変わってしまう程に。
・・・・・・・・・・・・もしかして、新羅軍ってレヴェル低い?
「ちゃん大丈夫?」
「え?――――――ああ、はい」
「そか、うん、良かった良かった。幾ら訓練っつっても、ちゃんに怪我させたら後でクラウドに殺されるからなー」
「イヤ其れはちょっと言い過ぎで」
「つか俺が俺を許せねぇって!そんな婿入り前のキレーな肌に傷付けるなんて!」
近付いて来たザックスに返事を返せば、からから笑ってそんな科白。
・・・・・・・・・・・・あのー。もっと視点を変えてはくれませんか。
宝玉は元々性の属性なんて無いけど、俺今いちおー男だしー。傷なんて、今までさんざ付けたから。
ソレに殺しはしないって。確かにクラ俺にすっげ懐いてますけど。
ザックスも、クラにとっちゃ大切な人なんだから。
「でも楽しかったぜ。久々に、命の取り合いで無い、良い試合をさせて貰った」
「・・・・・・試合、だなんて。私如きでは、役不足で・・・・・・サーには、申し訳無く思っております」
「まーったく、だ」
「え?」
「・・・・・・そー思うんなら、もーちょっと本気でやって欲しかったんだけど、な」
最後の言葉は、耳元で小さく。
――――――ひやり、と。首筋に冷たいものを当てられた様な、感覚が奔った。
静かに見詰めた、間近にある瞳。
深い藍色の中、縦長に光る虹彩が俺の目を覗き込む様にして見ている。
表情は不敵に。何時もの軽快さを払拭して。底辺に見え隠れするのは獰猛さ。
・・・・・・・・・・・・ふぅん。
流石、普段はそう見えなくても、この世界で最高峰の戦力を誇る人間のうちの1人だ。
コレがソルジャー、ザックスなんだね。
「――――――意味が計りかねます」
「いやまあ、言葉の通りだし」
「私が本気を出していなかった、と。随分な買い被りですよ其れは」
「うんまあ簡単にゲロしてくれるとは思ってないから今はコレ以上突っ込まねぇけど」
先に目を逸らした方が負けだ。
至近距離で互いに視線を絡めたまま。
化かし合いじみた言葉の応酬はドコまでも平行線。
だけどソレは、イキナリ中断した。
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