Ver.Hero





 思わず目が点になっちゃったね。

 え、何でって?

 ・・・・・・だってさぁ。





 どごっ。ばきっ。





 まさにそんな擬音だったんだよ。

 いやー、まさかこんなトコロでこんなにハッキリ綺麗な音を聞くなんて。





「ふぐっっ!?」

「何に迫ってるんですかソルジャー・ザックス」

「勤務中に訓練兵を口説くとは何事だこの馬鹿猿」





 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・あのー。

 今、ザックス吹っ飛びましたよ?だいじょーぶなんでせうか?

 ・・・・・・しかもさっきの、クラの華麗な飛び蹴り・・・・・・美人さんの見事な右ストレート・・・・・・

 トコトン、容赦無かった様に見えるんですけどもーぉ・・・・・・





「・・・・・・ヒ、ヒドイ・・・・・・1度ならず2度までも・・・・・・」





 何時の間にやら俺の前。

 立ち塞がった金と銀が、女の子座りをしたザックスに、冷たーい視線を突き刺す。

 しかも美人さんは剣を肩に担いで。

 クラはまだ息を切らしながらも、剣先をそれとなーくザックスに向けて。

 ・・・・・・な、何か怖いでーす・・・・・・





「貴方がどんな嗜好をお持ちでも自分には知ったこっちゃありませんが、だからってを巻き込まないで下さい」

「大体貴様無類の女好きではなかったのか、節操が無いにも程がある」

「なななななな何か2人とも、すっげー誤解してねぇ!?なぁ、してねぇ!?」

「誤解?いいやしてないぞ。何時ものあの歯の浮く様な科白を彼の耳元で囁いていたのだろう?」

「あんなに至近距離まで詰めておいて、何が誤解ですか何が」





 剣を持つ2人の言葉に、ギャラリー達もそーだそーだと頷いてる。

 ・・・・・・そーゆーふうに見えてたんデスカ。うーわー・・・・・・





「迫ってねーし口説いてもねー!!」

「女をベッドに誘う時の様な顔をしていてか」

「どもってるって事は図星なんですよね」

「だっかっら!!俺はノーマルだってぇの!!そりゃちゃんだったらこうぐらっとクるけど・・・・・・って何?」





 ちゃきり。

 構えを見せた2人に、ザックスの顔からザァッと血の気が引く。

 あーあ。墓穴掘っちゃった事、気付いてないよ、この人。





「なななななな何で2人とも戦闘体勢入っちゃってるのかにゃー?」

「何、上官として馬鹿な猿の根性を少し叩き直してやろうかと」

「躾は必要ですよね、躾は」

「ちょおっと待て――――っっ!!?」





 慌てて立ち上がったザックスに、2人は揃ってニヤリと凶悪な笑みを浮かべる。

 ホント怖いって・・・・・・けど楽しそうだ・・・・・・すんごい、楽しそうだ。

 誰が。クラとセフィが。





「クラウド、まだ動けるか?」

「はい全然」

「そうか。其れなら良い。が、生憎、訓練用の剣は刃を潰すのが基本でな、叩き切る事は出来んが」

「撲殺くらいは出来ますから大丈夫です」

「ふむ、そうだな。確かに」





 た、叩き切る、って。撲殺、って。

 会話の中にサラリと組み込まれたなんだか不穏な単語。

 しかも2人共、マジメな顔して言っている。

 俺でも思わず身を引いちゃったね。

 すでにザックスは半泣き状態だし。





「さて、まだ時間が余っている様だから、もう1試合行う。対戦はザックスとクラウドで」

「マジですかにーさんっっ!?」

「尚、クラウドは先程俺と試合して今万全な状態で無い。従って俺がクラウドのフォローに回る」

「待て待て待てっっ!!話せば判るっっ、話せば!!」

「問答無用。思う存分ヤれ、クラウド」

「はい。それじゃ――――――行きます!!」

「ぎゃ――――っっ!!来なくていい――――っっ!!」





 言い合ってるウチに、第2試合目のゴングは鳴ってしまったみたいだ。

 剣を下段に構えて、床を蹴るクラがザックスに突っ込む。

 その間にセフィもザックスの側面に動いてるし。





 コレって、止めた方がいーのかな?

 いーんだろーなー・・・・・・でもなー、メンドクサイよなー。

 ソレにやっぱ、面白そうだし。って、俺もなかなか非道?





 1人取り残された俺は、そろそろとギャラリーのたむろしてる端っこんトコロに入る。

 BGMは、ぎゃいぎゃい騒ぎながら切った張ったしてる、訓練生1人とソルジャー2人。

 そんな俺の肩を、ポンと叩いた人がいた。





「済まなかったな、無理言って彼等の相手をさせてしまって」

「ラインバッハ教官・・・・・・いえ、此れは此れで、貴重な体験になりましたので」

「そうか、そう言って貰えると有り難い」





 何時の間に俺に近付いていたのか、黒いアイパッチで左目を覆った、ジェウド・ラインバッハ教官がいた。

 本日、彼等が来る事をギリギリまで黙っていた人だ。

 その人は、長めの赤い前髪をしゃら、と揺らしながら、細い目を更に細めて俺を見下ろす。





「何せアイツ・・・・・・いや、サー・セフィロスが俺に無理を言うなど今まで無かったものだから、ついな」

「・・・・・・そういえば、ラインバッハ教官は、サー・セフィロスの同期だとお伺いしました」

「ああ、アイツと同じ隊にいた。片目と利き腕の神経をやられて、引退を余儀なくされたが」





 何か、どこかを懐かしむ様な視線。

 戦えなくなった戦士。どんな気持ちで、今ココに立って、嘗ての戦友の姿を見てるんだろう。

 悲しみ、だろうか。悔しさ、だろうか。それとも?





「初めて見たよ」

「何がです?」

「アイツが、あんなに楽しそうにしているところを、さ」





 その、言葉と一緒に。

 予想外にも、教官が口元に浮かべたのは、安堵にも似た、柔らかな笑み。

 俺もホッとした。この人は、強い人だって判って――――――優しい人だって、判って。





 そんな、ちょっと昔を懐かしむカンジだった教官の目が一瞬瞬く。

 かと思ったら、次に現れたのは、何かイタズラっ子みたいな煌き。

 ・・・・・・・・・・・・なんか、からかわれそーな予感ビシッバシだ・・・・・・・・・・・・





「ストライフの事もな、意外な面があったのを今日初めて知った」

「クラ、ですか?」

「ああ、が絡むと性格が変わるんだな」

「・・・・・・そう、ですか・・・・・・?」

「そう。まるで独占欲丸出しのお子様だ。何時もは無表情なのに。中々面白い弟分に懐かれたな?」

「・・・・・・お、面白いって・・・・・・」





 俺としては、健気〜なだけなんじゃないんでしょうか、とか思うんですけども。

 だってザックスってばクラより俺に絡んでくる確率高いんだよ。

 クラはザックスに構って欲しいって密か〜に思ってんだけどさ。





 まあソレもコレも、クラが未だにザックス相手に硬い姿勢崩してない、ってのが原因。

 ザックスはちゃーんと、クラをかいぐりかいぐりしたいのに、そう出来なくてその反動が俺に集中してるってだけなのさ。

 しかも、俺に絡みさえすればクラに相手してもらえるって、ザックス最近学習したみたいでよけー俺を構ってくる。





 どっちもさー素直になりゃいーのにさ・・・・・・で、結果がアレ。

 クラが自分からザックスに堂々と絡めるのって、今んとこ俺関係だけだもんねー。

 ・・・・・・・・・・・・て、結局俺ってば、イイ感じでダシに使われてる、って事ー?

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お前等こそ俺を巻き込むなよんな事に。





「ところで

「・・・・・・はい、教官」

「そろそろ彼等を止めないとサー・ザックスが本当にヤバイんだが」

「・・・・・・・・・・・・ソレを何故私に言うんですか私に」





 頭を抱えそうになったトコに、追い討ち掛ける様にさらりと教官がのたまって下さる。

 まさか、俺にアレを止めろ、ってゆーんじゃないでしょーね?





 あんな、楽しくて楽しくて仕方アリません、って感じの英雄様と。

 氷の微笑で得物を追い立てる肉食獣みたいな、ちょっと他とは毛色の違う訓練兵と。

 情けなく泣きもって、彼等の相手をするソルジャーを。





「この中ではが1番適任だからな。教官命令だ。止めて来い。骨は拾ってやる」

「・・・・・・・・・・・・骨は拾ってやる、って・・・・・・・・・・・・」

「まあ、そんなに構えずとも。お前なら絶対に大丈夫だから」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・了解致しました」





 ナルト、サスケ、お元気でしょーか。俺はとっても元気です。

 

 早くも年貢を納めなければいけない時が来ました。





 ・・・・・・・・・・・・誰かた〜す〜け〜て〜・・・・・・・・・・・・

























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