手にした量産型のサーベルを見ながら、溜息を吐く。
目の前にいるのは、同じサーベルを手にして此方の出方を待っている、人。
・・・・・・・・・・・・まさか、こういう形で再び会い見えるとは。
「・・・・・・・・・・・・あの、本当にするんですか・・・・・・・・・・・・?」
「何だ、俺では不服か?」
意を決した問い掛けにも、からかいがちに返される。
不服以前の問題だ。
講習訓練そっちのけで、何故ソルジャーと訓練生が模擬戦闘。
――――――そう。今俺と対峙しているのは。
動き辛そうなスリムタイプのデニムパンツに、身体より大きいVネックのセーターをだぼっと着た。
おおよそ戦闘には不向きな姿の、英雄セフィロス、其の人である。
其れで無くとも、俺の蹴りとほぼ同じタイミングでザックスを殴ったのが彼だった事に、酷く驚いたのに。
何でもないふうを装いはしたが、思ったより早く訪れた邂逅に、実際は心身穏やかでないというのに。
・・・・・・そう。早いのだ。俺の『過去』よりも。
以前の時は、入隊して半年程経ってから。
其れもザックスに引き摺られて行った本社で、ザックスに引き合わされたのだ。
出会ったあの頃と同じ表情で。同じ口調で。
・・・・・・・・・・・・『未来』、に。何が起こるかなど、知りもしない。
あの頃の。
は、災厄の女王が本格的に彼を取り込むには、未だ時間が掛かると言っていた。
そのタイムリミットが、あのニブルの事件なんだろう、と。
――――――其れ迄に、以外に脆い彼の心の支えになれれば。もしかしたら。
「・・・・・・俺、まだ死にたくないんですが」
「安心しろ。手加減くらいはしてやる」
目元だけを動かす、そうと判り難い笑い方。
其の仕草に、ああ矢張り、と思う。
矢張り、この人は。
会いたくなくて、けれどとても会いたくて仕方なかった、人。
確かに、手加減してもらわないと死にかねない。
『未来』は兎も角、今の俺の肉体は14歳。
災厄の欠片を埋め込まれている訳でも、魔光を浴びている訳でも無い。
・・・・・・・・・・・・何より。
俺は、まだ、覚えているから。
絹の様な銀糸が紅く染まっていく様も。
白い肌を引き裂いた感触も。
最期の最期に浮かべられた、霞み消え逝く微笑も。
だからもう2度と、彼に刃物を向けたくはない、と思っていたのに。
・・・・・・・・・・・・俺にこの状態を如何しろと・・・・・・・・・・・・
思わず、助けを求めて周囲を見回す。
俺の事を快く思っていない奴等は、其の表情にでかでかと「大恥かいちまえ」と書いているし。
そうでない奴等は純粋に、セフィロスの『模擬戦闘』と楽しみにしている。
今日の講師は彼等だからと、あっさり身を引いた教官もまた、我関せずの姿勢で。
唯一の希望、はといえば・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・サー・ザックスのお相手が、私などに務まるとは到底思えないのですが」
「いやゼンゼン務まる務まる。だからアンシンしなって」
「イエ無理ですから」
屋内訓練場の片側、俺達から少し離れた場所で俺と同じ様にザックスに剣を向けられていた。
・・・・・・・・・・・・なんでこー、2組が切った張った出来る以上に広いんだろうな此処・・・・・・・・・・・・
「さて。何時までも睨み合いばかりしていても埒が開かないし」
「おっ始めましょーか。んじゃ、号令たのんまーす」
「了解致しました。・・・・・・其れでは各自、しっかりとお2方の動きを見る様に。始め!!」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・オネガイシマス。」」
「なんかえらく気のない挨拶だなおい。」
教官の張りのある号令に、俺と、揃って小さく頭を下げると、ぼそっとザックスが突っ込んできた。
当り前だこんちくしょう。
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