Ver.Zack





 神羅の兵士養成学校は、だだっ広い。

 つーか、寧ろ神羅が所有する敷地自体が半端じゃねぇ。





 本社はまあ当り前として。

 ソコに詰めてる非戦闘の一般社員の寮に、訓練生や一般兵の入る宿舎。

 おエライさんにゃ専用の高級住宅街が、ソルジャーにはソルジャーの住居区なんつーもんもある。

 兵士の訓練施設とソルジャーのトレーニングルームはバッサリ別モンだし。





 そんな幾つもの建物の中を足早に通り抜け校舎を横切って。

 目的地に辿り着いた時にはもーまさにギリギリの時間帯だった。





 開けっ放しの扉から身を乗り出せば、こっちに気付いた奴等が驚いた顔をする。

 まさか、かの『英雄』が本当に訓練生如きの講習にお出ましになるとは思ってもみなかったんだろ。

 くけけ。驚け驚けー。

 ・・・・・・ま、ソレはさておき。

 俺等のお目当ての人物は・・・・・・っと、いたいた。





っちゃーんっvv」

「ぅわっっ!?」





 だだだっ、と駆け寄って、勢いのままぐわしぃっっ、とその腰に飛び付く。

 うっほぉ。すっげー細っせー。しかもイイ匂ーい。

 くうぅ〜し・あ・わ・せ〜・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハッ、殺気!?





 げしっっ。ごんっっ。





「ごはっっ!?」





 脳天殴られ横腹蹴られて、どべしゃと床とオトモダチになった俺に突き刺さる冷たい視線。

 痛いトコ擦りつつそろそろと見上げれば。

 ・・・・・・・・・・・・なんかゴォゴォとしたモノを背負ってる、2人。

 ハッキリ言って、コワイです。





「行き成り何をしているんだ貴様は何を」

に対するセクハラは止めて下さいソルジャー・ザックス」

「・・・・・・いいじゃん減るモンじゃなしーちょっとしたスキンシップじゃねーかー・・・・・・」

「いや減る絶対」

「ちょっとしたスキンシップでも貴方がやると如何わしく見えるので止めて下さい」





 ・・・・・・・・・・・・ううぅ。にーさんはともかく、クラウドまで。

 しかもさっきの蹴り、何気に本気入ってませんデシタカ?

 つか、ソルジャーに蹴り入れる訓練生・・・・・・流石、俺が認めただけの事はある・・・・・・





「クラ。其れくらいにして差し上げては如何です?」

「・・・・・・ちゃんやっさしーい」





 柔らかい声でうじうじイジケル俺を庇ってくれたのは、ちゃんだった。

 じーん。と胸がじわじわ熱くなる。

 ああもーイイ子だーちゃぁん。もっかい抱き付いてもいいですかーあ?

 だけどそんな俺の気持ちは直ぐ様撃沈。





仮にもサー・ザックスは私達の上官先輩憧れの的ソルジャーなんですから」

「ああ、そういえばそうだったな」





 ・・・・・・・・・・・・か、仮にもって・・・・・・・・・・・・仮にもって。

 ソレにクラウド、受け答えにゼンゼン感情篭ってねーよ。

 しかもしかもっっ、本格的に本格的にいじいじし出した俺の頭上で、くつくつと笑い声。

 ・・・・・・・・・・・・ぐすん、にーさんまで・・・・・・・・・・・・イイさイイさ笑いたきゃ笑えコンチクショウ。





「俺の副官が失礼をしたな」

「・・・・・・・・・・・・いえ、気にしておりませんから」

「そうか。――――――お前達、名は?」





 およ。と思った。

 珍しい。いっくら俺が事前に吹き込んでたからといって。

 このにーさんが、初対面のヤツに自分から名前聞くなんて。





「は、訓練生のであります」

「・・・・・・同じく、クラウド・ストライフであります」





 ・・・・・・にーさんに向かってピシッと最敬礼で返したちゃんとクラウドの2人も、今時滅多にない逸材だよなぁ。

 だって、にーさん相手に、カッチンコッチンになるワケでもなく、ふつーに返事返すなんてさ。

 周りのヤツ等は、未だにすっげーガチガチなのによ。

 ・・・・・・ああ、でも、やっぱちょっとはキンチョーしてんのか?

 俺の顔を始めて見た時もそーだったけど、クラウドの顔がどことなーく、固い。





に、クラウドか。知ってはいるだろうが、私はセフィロス・ファル・ディガルドだ。今日は宜しく頼むぞ」

「はっ――――――は?」





 けどそんなクラウドの表情も、次のにーさんの言葉に、鳩が豆鉄砲食らったような顔。

 んん?なんで??





「・・・・・・あ、あの、大変不躾ではございですが、お伺いしても、宜しいでしょうか?」

「何だ?」

「・・・・・・・・・・・・今日は宜しく頼む、とは・・・・・・・・・・・・」





 横から恐る恐る、ちゃんの疑問。

 ・・・・・・・・・・・・あれれー??もしかして、話、いってない?

 どーゆー事だ、と。ギロン、とにーさんに見下ろされる。

 俺だって聞きてーよっっ。あんなにあんなに、ネチネチねちねち言ってやっとこさ希望通したのにっっ!!





「教官から聞いてないのか?」

「教官から、でありますか?・・・・・・いえ、何も・・・・・・?」

「マージーでー!?特別実技講習の話も!?」

「いやその事でしたら、先日・・・・・・って、まさか・・・・・・?」

「今回俺達がお前達の特別講師になる、予定なのだが」





 どよっっっ!!

 にーさんの言葉は屋内訓練場の隅々まで程良く響いて、周りがイキナリ騒がしくなった。

 ・・・・・・なんかこの反応・・・・・・誰も知らなかったのか・・・・・・?

 そんな周囲に、追い討ち掛ける様に続くにーさんの科白。





「お前達は、先の試験評価でSSを叩き出したそうだな・・・・・・楽しみにしているぞ」





 どよよっっ!!

 あんなヤツ等がSS!?とか。マジかよ嘘だろありえねー、とか。

 でもSS出したヤツがいるなら英雄が出てきても可笑しくないかもラッキー、とか。

 言いたい放題だなヲイ外野。

 ・・・・・・・・・・・・ああ、そーいや試験結果は発表されてても、評価の方はまだ通達されてなかったっけ?





 んで、ちゃんとクラウドは、っつったら、2人して今度こそピキンと固まってて。

 先に復活したのはちゃんだ。

 何時までもイジケテたって仕方ないからって立ち上がった俺の方に、ぎぎぃ、って音がしそうな鈍さで首を動かし。





「・・・・・・・・・・・・マジですか?」

「どっちの事か判んねーけど。どっちもマジです。」





 評価SSの方も特別講師の話の方も。

 きっぱり言ったら、項垂れた。

 ・・・・・・・・・・・・ナニユエ?

























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