Ver.Hero





 俺達の起こしたのって、さ。

 確か、腐っても乱闘騒ぎ、だったよな?





 あの場合、俺的にはあのアホウ共が悪いって思ってんだけど。

 でも、端から見れば先に手を出したのはコッチで。

 一方的にボコッたのもコッチ。





 なのに、骨にヒビ入ってたらしい・・・・・・つーかなんでアレくらいでヒビ入んだよ軟弱だな。

 そんな弱っちいのに、良く軍人になろうなんて考えたモンだ。





 っと、話逸れた。何だっけ?・・・・・・ああ、そうそう。





 なのに、全治3週間、とか言われたヤツ等は、其れでも1週間の懲罰房入りの罰受けたらしいのにさ。

 俺等が先に懲罰房から出るってのは、在り得なくね?

 しかも、昨日の今日だぞ?たった1日だぞ?





 乱闘騒ぎで目立っちまっただろーから、コレ以上目立たない様に早く出られる様な裏細工はしてないし。

 2人くらいなる予定ではあるけど、今現在で権力持ってる知り合いなんてのもいない。

 ふつーに考えたら、ぜってー在り得ねーハナシだ。





・・・・・・アンタ、何かしたのか?」

「・・・・・・イヤなんもしてないし」





 下っ端っぽい兵士に、神羅ビルの本社一階まで行けって言われて。

 素直に懲罰房出た途端眼が合ったクラの言葉に苦笑を返す。

 ・・・・・・だからソコでそんな胡乱そうな眼で見上げても。

 ホンットーに覚えなんかないんだよコレが。





「大体、そんな時間も何も無かったっしょ?」

「どうだか・・・・・・アンタなら普通に出来そうだからな」





 ぐっ・・・・・・・・・・・・ま、まあ、確かにそんな事思われてても仕方ないけど。

 時間さえありゃチャチい端末でブラックリストばりのデータバンクまで潜り込むくらいのハッキングの自身はあるし。

 昔取った杵柄、ってゆーか、教師がスパルタだったから、変化も分身も得意だ。





 ――――――けどソレも。

 手元に端末があってココが忍術使うのに適した世界だったら、ってゆー条件が必要なのね。





 今の俺は端末なんて持ってないし。

 エーテルの濃いこの世界は、アーグ・・・・・・チャクラが練り難いから、忍術も使い辛いんだよ。

 つかほぼ忍術使えませんでした。ミッドガル来る前に試してみた時は。

 精々、チャクラ通わせた鋼糸を操れるくらいだ。

 その分エーテルを操る術・・・・・・魔術は桁外れだったけど。





 ホント今の俺ってば、素で魔法使える以外は殆ど人間と大差ないの。





「・・・・・・ってゆーかさ・・・・・・クラって俺の事何だと思ってるワケ?」

「・・・・・・・・・・・・」

「クラ?」

「・・・・・・・・・・・・そう云えば、何だ?」

「ってヲイ。」





 遅いよクラ。もっと早くに疑問持ってよ。

 つか無防備すぎ。人間じゃないって判ってんじゃなかったのか俺ん事。

 なのになんで3日も4日も平然と一緒に行動してるワケ?





「・・・・・・クーラー。もし俺がクラ騙そうとして近付いてきたヤツだったりしたらどーすんの」

「いや其れだけは無いから」

「・・・・・・って、どーしてどーきっぱりハッキリ断言出来るかな?」

「・・・・・・騙す人間が素で自分からそんな事を暴露するか?」





 思わず呆れてしまった俺に、クラも同じ様に呆れた顔で呟く。

 ま、確かに。そんなマヌケはいないわな。





「・・・・・・其れに、」

「・・・・・・・・・・・・ソレに?」

「俺は実際、アンタの事を、天使だと思ってたんだが」





 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぅえ?





「ええええぇぇぇええええっっっ!!?」

「・・・・・・・・・・・・、五月蠅い」

「だってだってだってっっ、ええ!?天使!?」

「ああ」

「誰が!!」

「アンタが」





 ・・・・・・・・・・・・ダメだ。開いた口が塞がらん。

 なにゆえ俺が天使???

 むしろ真逆だ、ま・ぎゃ・く・ー。

 今までやって来た事とか性質とか人にはなさげな見た目とか。

 ドコをどー取ったって真っ黒けの魔性だろ。





「違ったみたいだな」

「・・・・・・エエ、ゼンゼンチガイマス。」

「そうか。だが俺にはそう見えた。アンタが手を貸してやると言って、頭を撫でてくれた時」

「・・・・・・・・・・・・ソーナンデスカ。」

「ああ・・・・・・凄く、優しくて、凄く、綺麗なひとだと思った。今まで、見た事も無いくらいだった」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」





 沈没してもイイですカ。

 よっくもまあ、こんなこっ恥かしい事をスラスラすらすら。

 しかも眉ひとつ動かさずドコまでもマイペースに淡々と。

 もーツッコミにも力出せません。





「・・・・・・ホンットそんなイイもんじゃないから俺。ワガママだし、自分本位だし」

「そうだな。おまけに俺よりガキっぽい」

「・・・・・・むぅ。」

「けど俺はあの時、アンタの背中に、確かに見たんだ」





 自分のこの眼で見て感じたのだから、信じるに値すると。

 そんなクラの告白に、俺は思わず息を止める。

 まさか。

 まさか、だよな。はは・・・・・・は。はは。





「・・・・・・・・・・・・見た、って」

「無色透明の16枚羽根」





 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・見えたのか。アレが。

 いくら物質世界じゃない、高次元素で構成されたライフストリームの中、っつったって。

 上手い事隠せてたと思ったのに。





「如何した、?」

「いや何でも・・・・・・ってか、思い出した。今は俺の事よりこの状況が何なのか考えた方がいーよーな」

「アンタが振った話だろ・・・・・・」





 ハイ、確かに話が脱線してしまったのは俺の所為です。

 でももー周りに人影が見えてきましたので。

 そろそろ周囲を気にしていきませう。





「・・・・・・だが、確かにそうだな。今の俺達はまだ兵士ですらない。訓練生だ」

「クラ、お偉いさんのコネ持ってないよな」

「当り前だろ。俺は今回『初めて』ミッドガルに来たんだから」

「けどだとしたら――――――あ。」





 ふ、と。

 思い出して声を上げた。

 クラが訝しげに振り返る。





「・・・・・・・・・・・・何だ?」

「・・・・・・あった。可能性。すっごい低いけど。銀髪美人さん。」

「あの、人か?――――――だが、」

「正確には、銀髪美人さん経由で災いの女王サマ」





 俺が『ココ』にやってきた時、結構、動いたと思うんだよね。

 何が、って。高次元素やエーテルやアーグが。

 いや、結構、とゆーか、かなり?

 幾ら手順を踏んでるとはいえ、ソレだけ、時間跳躍も次元移動も世界に与える影響はデカイ。

 あの女王サマなら、タダゴトでは無いと感知してもおかしくナイナイ。





 その言葉を聞いた時の、クラの顔。

 すんごい、苦虫を噛み潰した様な。

 ・・・・・・まあ、しょーがないんだろーけど。

 けど、一瞬で平常を取り戻したクラはやっぱり流石だ。





「・・・・・・そうかもな。だが、それだと変じゃないか?」

「何が?」

「アレの事だ。俺達がこの時代に来た時点で、何らかのアクションを起こしていても可笑しくはない」





 言われてみれば。

 本体が動く事は出来ないけれど、美人さんを始め手足になりそーなのは大勢いる。

 ソルジャー、と呼ばれる女王サマの遺伝子保有者が。





「・・・・・・あー、うん確かに・・・・・・クラがいるからかな」

「・・・・・・俺?」





 どういう意味だ?とクラの視線がイキナリ鋭くなった。

 あれ、話してませんでした?





「俺さ、クラに指輪(リング)あげたよね」

「ああ」

「クラの中にいた女王サマの欠片なんだけど」

「・・・・・・ああ」

「時間跳躍する時に、そのリングの中にぶち込んでやったんだよね」

「・・・・・・・・・・・・ああ・・・・・・・・・・・・ってマジか!?」

「おおマヂです。」





 って、なになにクラってば。慌ててリング引っ張り出して。





「ちょ、捨てないでよっ、力作なんだよソレ!?」

「あんなハタ迷惑で物騒なモノ持ってられるか!!」

「確かに前はハタ迷惑で物騒だったかもしんないけど!!ソレはだいじょーぶだから!!」

「何がどう大丈夫なんだ!?」

「だって『俺』が混ざってるもん!!だからだいじょーぶなんだもん!!」





 ぎゃいぎゃい言い合って、押し問答して。

 渋々、ホンットーに渋々、クラは踏み止まってくれた。





「・・・・・・で?」

 ほえ?なに?

「『俺』が混ざってる、って何だ」

 ああ。そのコト。





「うん俺のねー魂の本性ねー宝玉ってゆーちょっとどころかかなり普通じゃない魂なんだけどねー」

「・・・・・・普通じゃないのは知ってる。で、其れが?」

「アーグが特殊なんだよ」

「・・・・・・アーグ?」

 あら、知らないこの単語?

「命が命として存在し得る為に備わっている力。人間とかだと、息したり心臓動かしたりする無意識下の、うーん一番近い表現は生命力?」

「生命力?」

「そう。そのキャパがでっかくてね。その上特殊なの。何にでも溶けて、何にでも同化する。んで、同化したら俺の意思で性質を変えられる」

「へぇ・・・・・・と、、言う事は」

「うん、災いが破邪に変わってる」





 ふぅん、とクラは手の中のリングをしげしげと見やった。

 でも、モトは同じだからね。

 この時代の女王サマは、もしかしたら自分の欠片を持ってる者が敵でないと、判断してるのかもしれない。

 そう言ったら、クラはすっごいイヤそーな顔した。

 まあ、分らんでもないけどね、その気持ち。

























<<バック                    ネクスト>>
<<バック トゥ トップ>>