Ver.Hero





 神羅カンパニー。

 ライフストリームを、資源として実用化する事を成功させた、一大企業。





 ・・・・・・ああ確かに。正しく、一大企業、だよな。





 カワイコちゃんの気配を辿って着いた先。

 ミッドガルとかゆーオモシロイ作りの街の一角のボロい宿屋の一室で。

 PCの画面を見ながら、だらだらと流れる字を斜め読み。





 人様が楽して生活するにゃ欠かせない、水道整備やら電気なんかの光熱関係やら。

 他にも?小さいもんは生活雑貨から、でかけりゃバイクや車やジェット機の製造?

 うわ、武器関係まで。んなとこまで噛んでんの?

 ・・・・・・あー、果てにゃ軍隊持ってます、てか。





 いろんなトコロに手ぇ出してんね。

 ココまで来たら、もーなんてーの?一大企業っつーより一大国家?





 しかも何?ゴーインなゴリ押しで色んなトコから反感買ってて?

 ついこないだまではウータイとかゆートコと戦争おっぴろげてた、と。





 ・・・・・・ああソレで。

 俺がウータイ出身だっつった時、検問官がイヤそーな顔したワケね。





 けど仕方ないじゃん。

 降りた先が、ホントにモロ、そのウータイだったんだからさ。

 一応、調べられてもそう簡単にボロが出ない様に、仕込みはしてきたけど。

 ウータイかぁ・・・・・・失敗だったか、な?





 ・・・・・・・・・・・・ま、いいや。

 胡乱な眼で見られはしたけど、無事に入れたし。





 ぽすん、と硬いベッドに転がって、枕元に置いてあった書類を取る。

 ぴらり、と揺れたその表面に表示されていたのは、合格、の文字。

 平たく言っちゃえば、神羅の、軍への入隊許可証だ。





 まーた軍関係かよ、とは思ったけどさ。

 ターゲットのうちの2人、神羅の軍に所属してるらしい美人さんと黒髪さんに近付くには、コレが1番手っ取り早いだろうし。

 カワイコちゃんも、きっと今頃同じモノ持ってこの街に向かってるハズだから。





「・・・・・・いや、もしかしたらもー着いてる、かな?」





 入隊式まであと3日もない。

 正しくいうなら2日と半日だ。

 そろそろ来ておかないと、やばいだろ。

 あーゆー縦社会は厳格を重んじるもの。

 初っ端から遅刻しましたーではすみませんからー。





 って、そーゆー俺も、慌ててコッチ来たんだけど。

 いやもー焦ったね。

 ガイアから貰った情報整理して、入隊式まで1週間切ってるのに気付いた時は。





 その後の俺の行動なんて、自分で言うのも何だけどもーカミワザ的でしたとも。





 ウータイの街の一部の人間に偽の記憶植付けて。

 あたかも俺はココで生まれ育った人間です、ってな暗示をみんなに掛けた後。

 ゴミ置き場から壊れたふっるいノート型のPC拾って直して。

 ソレでデータバンクにハッキングして戸籍作りましたともさ。

 ついでに(?)神羅の入隊許可証の偽造も、ね。





 だってそれくらいやんないと、後でどこからどーボロが出るか判ったもんじゃない。

 個人情報って曖昧な様でいてけっこーシッカリしてるから。

 しかも一応、企業、なんて肩書きが付くトコへ潜入するんだ。

 石橋は叩いて渡るべし。うん。





 で、ソコまでやんのに掛かった所要時間はたったの1日。

 ソレから速攻ウータイ出発して、やっとこさミッドガルに着いたのは今朝、だ。





 さすが俺。ぶらぼー俺。

 ・・・・・・・・・・・・なんか自分で自分褒めても虚しいだけだからもーやめとこ。





 備え付けの時計を見てみればちょーど午後3時。

 お昼にはちょっと遅いかな?な時間帯。

 だけど人間レベルまで力を封印してる以上、エネルギーの補給は人と一緒。

 ぶっちゃけ腹が減る。

 コッチ来てから仕込みと移動で殆ど食ってねぇから特に。





「腹が減っては戦は出来ぬ、と申しますし」





 どっか食いに行こ。

 ついでに、おのぼりさん宜しく観光するのもイイ。

 ほんっと、見るからにオモシロイ造りをした街だから。





 よっ、と身体を起こして外出の仕度。

 殆ど身ひとつで来た俺の荷物なんてPCくらいだ。

 イカガワシイデータは見た端から全部デリートしてるから、空き巣が入って持ってかれても大丈夫だし。





 取り敢えずモンスター退治して得た全財産の入った財布だけ持って、部屋を出る。

 どっか美味しい店ないか、フロントにでも聞きに行こう。

 そう思って、ぽてぽてと緊張感なく廊下の角を曲がろうとした時だ。





「ぅわっ」

「っと」





 いいタイミングで、正面衝突。

 思わず仰け反った俺の身体に突進してきた、急いでいたらしいソイツはパッと離れ。





「す、すみま、せ・・・・・・」

「いや、こちらこ・・・・・・そ・・・・・・」





 双方、言い掛けた科白が途切れた。

 ・・・・・・まーさーかー、こーゆー出会い方をするとは、ね。

 コレって王道パターン?ソレとも捻りナシ?





「・・・・・・あ、んた・・・・・・」





 目を丸くした俺を見て、そして。

 息を呑んで一言呟いたのは。





 やっぱりコッチも眼を見開いた、あのカワイコちゃんだった。

























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