Ver.Hero





 次元の隙間を通り抜けて、降り立った先は荒野、だった。





 焼けた野原に瓦礫の山。

 砂埃に埋まるジープやライフルの成れの果て。

 風が吹くたびかろんと崩れる、布きれまとった白骨死体。





 ・・・・・・荒野、っていうより、激戦跡地だった様だ。

 しかもまだ新しい。2〜3年、くらい前か?





 争いってのはなんでこーも絶えないんだろうな?

 何時の時でも、何処の世界でも。

 まあ、ぼやいても仕方ない。

 意思を持つ生命が群生する以上、衝突ってのは免れないもんだからね。





 兎にも角にも、やって来ましたアタラシイ異世界。

 ・・・・・・この星の管理者が俺を招待した、てのがちょっと癪だけど。

 来る事決めたのは俺だ。

 あの金髪蒼い眼のカワイコちゃんに会う為。

 ――――――あのコの望みが、叶えられる様手助けしてやる為、に。





 ああ、でもでも。

 あのコのいる処から、ココはかなり離れてる模様。

 だって気配が感じられない。





 カワイコちゃんの願いを叶える。

 それには、あの子が今まで歩いてきた時間の中の、過去に戻った方が断然早いって思って。

 ガイアにゴリ押しして、あのコの時間軸ずらしてココに飛ばしてみたんだけど。





 す、と眼を閉じて。

 探るのは、目印の気配。

 星の息吹と俺の力で練り上げた、具現させた力。

 俺に呼応する、俺の欠片。





 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・





「・・・・・・っ、だめだー」





 ヤバイ。見当たんない。

 よっぽど遠いトコにいるのか。

 ・・・・・・・・・・・・もしくは失敗して違う時間軸に落としちゃった、か?




「まさか」





 そんなハズないない。

 確かに時間を飛び超える術は途轍もなく難しいけど。

 俺にはその知識がちゃんとあるし力もあるし。

 媒体になる呪具の変わりはライフストリームが充分以上にしてくれた。

 第一、宝玉たる俺の呼び掛けに、高位である時の精霊が振り向かないハズがない。





 だとしたら。

 どっかから横槍が入った・・・・・・?

 ・・・・・・あり得なくはない。

 あの子が哀しむ元凶になったヤツなら、それくらいやってのけそうだ。

 あの、生存本能だけで存在してるちょっと(?)厄介な生命体なら。





 さて、どーするか。

 むーん、と腕を組んでみた。

 その時、だった。





 ぴぃん、と。

 意識の端に引っ掛かった、一本の糸。

 ソレは蜘蛛の糸みたくすっごく細くて。

 ちょっと空気が動いただけで切れそうなモノだったけど。





「・・・・・・見ーつけた」





 思わず、口元が綻ぶ。

 大気が風に乗って、また大気に戻って。

 ココまで、俺のトコまで届けてくれた。

 微弱だけど確かな気配。





 遠い。

 此処から、遠い場所。

 けど、間違いない。





「ちゃんと、戻って来れてる、ね」





 だとしたら、俺がまずすべき事は。

 俺が、したい事は。





「――――――うん。会いに、行こう」





 方角は、北西。

























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