沼地に嵌った感じでのたのたして機敏に動く事も出来ない乱入者さん達は。

駆け付けた兵隊さん達によって、敢え無く御用。





んでもって。

壁の所々に弾痕が残ってたり俺の符の成れの果てがふよふよしていたり。

ついでに火薬の匂いが充満してたり血の匂いが仄か〜に漂ってたりする試験場では。





「此れでは、試験を続ける訳にもいかないな」

「だが、彼は如何する?」

「1人の受験者に、試験を二度受けさせた事例など、今まで無いぞ」





今後の俺の試験の事が、ボソボソと口論されていた。




 




 




 




 




 





ふしぎのせいねん




 




 




 




 




 





!!」

「・・・・・・ロイ」





あーでもないこーでもないと言い合っている試験管さん達の合間を縫ってやってくるロイに、ことん、と首を傾げる。

イヤだって。彼が近寄ってくるとは思ってもみなかったから。





――――――だってあの時。

いくら良く使う手だからといって。

ロイが俺の手を振り払ったあの時と同じ事を、俺はまた彼の前でしたんだから。





「・・・・・・あー、ロイ、大丈夫なのか?」

「其れを聞きたいのは私の方だっ、大丈夫なのかっ?」

「うんまあ俺は大丈夫だけど・・・・・・」

「――――――そ、うか・・・・・・・・・・・・」





ぐわしぃっっ!!と俺の肩を掴んで、ぐわんぐわん揺さぶる勢いのロイは、俺の返事にほう、と息を吐く。

でも俺からしてみれば、ロイの方が心配なワケで。





「つか俺の質問にも答えてよ。ロイは大丈夫なのか?」

「ああ、私は上にいたからな。弾はそんなに飛んで来なかったし――――――」

「違う。そーじゃなくて、」





遮った俺の顔を見て、ロイは俺の質問の真意に気付いた様だ。

俺が聞きたいのは、怪我をしたのかどーかとかいう事じゃない。

俺に、近付いても平気なのか、という事だ。





「――――――ああ、大丈夫、だよ」

「そ、っか」





小さい苦笑を見せながら、掴んでいた俺の肩を放して、姿勢を正すロイに、俺も小さく笑う。

有言実行。

ロイは、ホントに克服しようとしてくれてるみたいだ。

俺への、恐怖を。





――――――嬉しい。





そんな、ちょっとした感動に浸ってる俺に、ロイの次に近寄って来たのはなんと。





「いや、実に見事な練成術だった」





はっはっは、とか笑う大総統サマ。

慌ててロイが敬礼する。

ソレに大総統サマは、いや良い楽にしたまえ、と前置きして。





「君がさっき練成したのは、土と水と風かね?」

「え、あ、ハイ」

「ふむ。ナイフの練成術で床を土にし、指輪の練成陣で其処に水を加え、ブレスの練成陣で鎌鼬を作り出した、という処か」

「・・・・・・そうです」





ドンピシャだよ。





「君が今身に着けている装飾品は、全て手作りかね?」

「あ。判りますか?」

「まあ、練成式というものは編み出した本人にしか判らんモノだというが・・・・・・其の首飾り、形が練成陣だろう?」

「ええ、このチョーカーは火の練成陣を模して作ってます」

「ほう。という事は、君は4大元素全てを操るというのか」





しかも色々と目敏い。

やっぱ人間じゃないからか?ううむ、侮れん。

ってゆー事は。次に来るのはやっぱり?





「――――――で、銃弾を止める際に使われた紙だが。彼れは、錬金術なのかね?」





・・・・・・・・・・・・そら来た。

隣でロイが違うのか?ってな顔で驚いてる。どーするよ、をい。

誤魔化しようにも、この人相当なタヌキさんみたいだからなぁ。





「――――――アレは符です」

「フ?・・・・・・といえば東の国の、ミソシルとかいうスープに入っている?」

「イヤ全然違います。俺のオリジナルの術式で。錬金術を元にしてるんですけど」





結果、ホント20%ウソ80%くらいで、言い丸める事にする。

・・・・・・ドコまで信じてくれるか判んないけどな。





「紙を1度練成してその時の形状を記憶させてまた元に戻して、使う時に予め決めたキィワードによって瞬時に練成し直すんです」

「ほう、そんな事が出来るのかね。いやはや、東の国には面白い練成術師がいるものだ」





あ。いちおー納得してくれた?

・・・・・・・・・・・・いや、そーでもないな。だって目がウソこくんじゃねぇよヲラってそー言ってるよ。





「まあ、君の練成術に関する講義はこれくらいにして」

「はあ」

くん。君は試験に合格だ」

「ああハイありがとうござ・・・・・・は?」

「だから君は国家錬金術師資格試験に、合格したと言っておるのだよ」





一種バクダンの様なその大総統サマの発言に。

わざっ!!と周囲の試験管さん達や見学者さん達がざわついた。





「し、しかし閣下、決定を下すにはまだ・・・・・・」

「判断材料が些か足り無いかと、私も思います」

「今回は試験を中断せざるを得ない状況に陥ってしまい、試験本来の充分な審査も出来ておりませんし」

「本来、試験の結果というものは、試験管内で良く吟味した上で発表されるもので・・・・・・」

「しかし、筆記、精神鑑定共に問題は無く、実技に至ってはは先程見た通り。此れ程までの人材だ、充分に資格があると思うがね?」

「は、しかし・・・・・・」





恐れ多くも大総統サマに1番最初に楯突いたのはロイ。

続けてわらわらと、試験管さん達が口々に寄って来る。





・・・・・・つーか、試験管さんや見学人さん達の反論なんて、十中八九、ロイへのヤッカミなんだろうけどね。

俺くらい優秀なヤツを連れて来られて、ロイのお株が上がるのは避けたいって?

バッカらしい。





「くどい。私が良いと言っているのだ。速攻に手続きを」





そんなおバカな彼等の左ジャブも、大総統サマの右ストレートで呆気なくノックダウン。

イイ気味だ。ぐぅの字も出せません、ってね。

だけど。





「そういう事だ。精々軍の為に励んでくれたまえ。異国の錬金術師よ」





はっはっは、と笑いながらそう言い残し試験場を後にした大総統サマに。

どうやら俺はちょっと。

イヤかーなーり、目を付けられちゃったかもしんない。





コレから先、のんべんだらりと、いい感じに手を抜いて・・・・・・なんて。

そんな感じで日々恙無く過ぎれば良いんだけど。

























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