いやー、まいったまいった。

何が参ったって、あんまりヨロシクナイのがうやうやふよふよしてる建物内で。

決して得意じゃない筆記にメンドクサイ精神鑑定。

そして最後のシメの実技、って時に。





出てきたのは、明らかに「ワタクシ人間ではアリマセン」って人。

――――――イヤソレは多分、俺だから見抜けたんだろうけど。

しかもその人が、この国の最高権力者だってんだから、世の中イロイロあるモンだ。





ついでに、建物の外から1波乱ありそうな気配。

なんか漂ってきてんのよ。殺気が。もしかしてテロ?

・・・・・・この国の防衛対策って、一体どーなってんだろね?




 




 




 




 




 





ふしぎのせいねん




 




 




 




 




 





練成陣を描く道具は?とか聞かれて、ああハイ大丈夫です持ってます、と腰のポーチを指差す。

やっぱこの、腰にポーチ、ってのだけはね。無いと落ち着かない。

今まで、外出る時はいっつも着けてたから。





因みに入ってんのは式神用の札が300枚くらいどっちゃりと、髪の毛より細い千本の束。

・・・・・・・・・・・・イヤまあコレは使わないんだけど。

整理もせずに置いてたのをそのまんま鷲掴んで持ってきちゃったからなぁ。

まあでも、ちっちゃな練成陣彫り込んだ小型のナイフも10本くらい入ってるし。





さて。

ソレじゃ俺がこの2年、独学で会得した錬金術のお披露目といきますかね。

――――――とか思ってポーチからナイフを取り出したはイイんだけど。





「どうした、。早く始めないか」

「・・・・・・・・・・・・少し、待って頂けますか?」

「うむ?如何してだね?」

「いえ、ちょっと・・・・・・外が騒がしいな、と」





促す試験管さんと訪ねてくる人外・・・・・・いやいや大総統サマにそう答えて、俺はちろり、と背後の扉に視線を向ける。

何やら段々、イヤな気配がこっちに近付いて来てます。

アレ蹴破られるのも時間の問題?





「何も聞こえて来ないが・・・・・・気の所為じゃないのか?」





試験管さんはそう言うけどね。

俺が騒がしいってゆってんのは、音とかじゃなくて気配の事だよ。

もう、直ぐソコまで、来てる。





俺はナイフ持ってない方の右手を、ごそっとポーチの中に突っ込んだ。

――――――そして。





「軍部最高責任者、キング・ブラッドレイ!!」

「貴様の命、我等『黄昏の嘆き』が貰った!!」

「――――――っっ!!?」





バターンッッ!!と開け開かれた扉。

そして、ダダダダッッ!!と、機関銃が連射される音。





・・・・・・・・・・・・あー、やっぱ、そう来たか。

まあ予測はしてたから、俺も間髪置かずに、唱えながらありったけの符をばら撒いてやる。





「宿陽道、飛空!!」





幸か不幸か、俺の声は銃撃の音に掻き消されてあんまり響かない。

だって乱入者さん達、銃弾なんかあるだけぶち込んでます、って感じ。

そんなワケで、硝煙がもうスゴイの何の。1メートル先も見えないくらいに立ち昇ってくれちゃって。

懐かしささえ感じる、火薬の匂いが目に沁みる。





「・・・・・・・・・・・・やった」

「やったぞ!!キング・ブラッドレイの命を盗った!!」





あー確かに、不意打ちの上こんだけ鉛玉ぶち込んだら、盗れるだろーねぇ。

でもソレはあくまでホントの不意打ちだったら、だ。

俺が気付いてる時点で即アウトだよ。





薄い煙幕じみた硝煙が徐々に晴れる。

イキナリ銃弾のアメアラレでびきびきに固まってた軍の関係者さん達は、自分が蜂の巣になってない事に驚きつつそろそろと目を開けて。

大総統サマだけは、ふつーに手を腰の後ろに組んでどーんと立ってたけど。

さて、乱入者さん達はどんな反応をしてくれるかな?





「――――――なっ!!?」

「如何いう事だ!!?」





どーゆー事ってそりゃあ、ねえ?

俺が飛んでくる銃弾の全てを、式を盾にして相殺しただけなんだけど。

その証拠に、紙片がヒラヒラそこら中に舞ってるっしょ?

・・・・・・・・・・・・ああああ折角の300枚が・・・・・・・・・・・・

こんだけ作るの、けっこーめんど・・・・・・イヤ大変だったのに。





取り敢えず、今がちゃーんす。

茫然自失の乱入者さん達の足元の床に、持ってたナイフを投げ付ける。

慌てて避けようとしても遅いって。

ついでに、すい――――と右手を動かし。





パキリ、と小さな練成反応。

ナイフを中心に、床がどろっ、と泥と化し、彼等の足を膝まで呑み込む。

そして。





「「「っっぎゃああぁぁあああっっっ!!?」」」

「あ。ごめん手元狂った」





何時かみたいに、でもロイがいるからホンットに銃器だけ輪切りにしようと思ったんだけど。

俺の起こした風はうっかり奴等の二の腕辺りまで輪切りにしてしまって、俺は思わず謝ってしまった。

























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