パキリ、とが指を鳴らす。

すると落ちていた鳥の残骸は、其々1枚の紙屑と化し。

青白い炎に包まれて炎上する。





其の光景を目の当たりにしながら。

俺は、何故彼が此処に居るのだと、突発的事項に頭を悩ませていた。




 




 




 




 




 




 
ふしぎのせいねん




 




 




 




 




 




 
「な・・・・・・何者だ、貴様っっ!?」





ガシャッッ、と上げられた銃口は全て、新たにこの場に加わった人物に向けられる。

けれどは其の様子に頓着せず。





ふあり、と動く大気。

無意識に受け止めようと伸ばした腕は、痛みに竦み。





そして彼は。

重みも重力も感じさせない仕草で。

音も軽く、俺の横に、降り立った。

・・・・・・以前にも思った事だが、コイツの背には、見えない翼でも生えているのではないか?





「ロイ、怪我してる。大丈夫か?」

「ああ、大した事は――――――」





心配そうに見下ろしてくる黒い瞳に、答えかけ。

しかし其処で、はた、と気付く。





「・・・・・・お、前・・・・・・言葉が・・・・・・」

「ああ。うん。もう覚えた」





覚えた・・・・・・?覚えた、だと?

俺が拾った(?)時は、俺やマースの名前しか言えなかった彼が?

たったの3日で!?





思わず振り仰いでみれば。

視線に気付き、ん?と首を傾げてくる姿。

・・・・・・・・・・・・一体幾つになるんだね、君は・・・・・・・・・・・・





其処へ、飛んで来たのは銃弾の威嚇。





「我々の問いに答えろ!!貴様は何者だ!!」

「お前も軍の狗か!?」





飛んで来た怒号に我に返る。

そうだ。今はこんな事を考えている場合では無い。

如何やってが此処へ来たのか、あの鳥は何だったのか。

考えるのは、目の前の彼等を如何にかしてからだ。





しかし、そう思ったのも束の間。





「五月蠅いよ、オタク等」





凛、と張った耳に残る声。

すい、と俺の前に立つ。目の前の敵兵を睨め付けながら。





「俺は今超絶に機嫌が悪い――――――此処で引くなら、見逃してやるけど?」





ぞっ、と背筋が粟立った。

肩越しから捉えた、彼の表情は。

まるで、氷で作られた彫像。





「ふざけるなっっ!!」





咄嗟にの腕を引こうと手を伸ばす。

だが、今我々が居るこの場の何処に、2人分の弾を遣り過せる場所があるというのだろう。

見下したかの様な物言いに、火を吹く銃口。

腹の底にまで響く様な銃撃の音が、木霊し。





けれど、予測していた痛みも衝撃も、この身を襲っては来なかった。





来る衝撃に耐えようと閉じていた、瞼をそろりそろりと持ち上げる。

先ず見えたのは。

掴んだまま、後ろへ引く事が出来なかった、の腕。

其処から視線を上へ上へと持ち上げ。





次に見たのは彼の、複雑に組んだ両の指の形。

そして。





「土遁、翔砂の壁」





俺と彼の正面。

幾つもの弾を減り込ませた、薄い壁の様な砂塵だった。





瞠目する俺の目の先で、は小さく息を吐く。

まるで、聞き分けの無い子供を相手にしているかの様に。





「俺は今さっき言ったな?此処で引くなら見逃してやると」





彼の服を掴んでいた俺の手は、彼の指に取られ。

優しく、外され。





「折角忠告してやったのに・・・・・・聞き入れなかったのは、お前達だ」

怨むなら、己の莫迦さ加減を怨むんだな。





平坦な声で其れだけ言い放った後。

細い細い腕を、翻す。





――――――直後。

響き渡ったのは、断末魔の様な叫び。




 




 




 




 






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