ひたり、と。一瞬止まって。

ゆったりゆったり、声が響いた方へ、顔を、視線を向ける。





――――――ソコに居たのは。

突風に煽られた、纏まりの無い短く黒い髪。

強さを秘めて鋭く輝く黒い瞳。

そして、所々破れ、埃と血痕とで汚れた、青い服の。

まろやかな頬の形をした、線の細い青年だった。




 




 




 




 




 




 
ふしぎのせいねん




 




 




 




 




 




 
「Don't move then.」





・・・・・・・・・・・・ヤバイ。

イヤ〜な汗が、背中を伝った。

ヤバイ。ヤバイですよおかーさん(<おかーさんて誰さ?)。

何言ってるのかゼンッゼン判りません。

感じからして、元の『世界』の英語に似てるけど。

聴いた事の無い言語です。

もしかしてアレか?

アーク――――――物質が、物質として存在する為の力――――――が違うのか?





「Are also you the people of ISHUVARU」





イヤだから何言ってんのか判りませんて。

てゆーか何その手。

イツでもドコでも指鳴らす準備万端な、その白い手袋に覆われた手は。

しかも何やら甲に魔法陣めいた赤い模様。

何かイヤンな気配がソコからヒシヒシと感じられるのは・・・・・・気の所為じゃないな。うん。





「It answers.otherwise――――――」





・・・・・・・・・・・・って、をいをいこらこらちょっと待て。

そりゃイキナリ出てきた俺に警戒心抱くのは当り前だと思うけーどーさー。

俺にばっかり神経尖らせて周りへの注意力散漫にしちゃってどーすんの?

ああ、後ろ後ろ。

何か黒っぽい人が機関銃の銃口向けてるって。





「z、You――――――っ!!?」





黒っぽい人がにた、と笑った瞬間、俺は思わず動いていた。

そのまま青服青年の元へ突っ込み、彼の身体を胸の内へ引き摺り込む。





「風っっ!!」

ヒョオッッ!!





・・・・・・ふう。間一髪。

撃ち放たれた幾重もの弾丸は、俺の作った風の盾に薙ぎ払われた。

俺が動いてから、3秒も経ってないハズ。

・・・・・・ちょっとナマったか?

ま、でも凡人の目に見える様な動きじゃないのは確か。

事実、抱き込まれた青年も、俺の動きに付いていけずに目を大にしてる。

こーゆー時、アイツラの修行に付き合っててホント良かったって心底思うよ。





まあ、ソレはさておき。

我に返ってジタバタ暴れ出した腕の中の青年も何とかしなきゃだけど。

何やら喚いて銃を連射してるあの黒っぽい人、先にどーにかしなきゃねー。

取り敢えずあの銃器はジャマ。

てなワケで。





「刀水輪」





大気中の水分を凝縮させたまるーい水の輪っかで。

スパパパパン!!とキレーイに輪切りにしてやる。

ついでのダメ押しだ。喰らっとけ?





「凍結蔦」





力在る言葉と一緒に、たんっ、と右の爪先で地面にリズムを刻んでやった。

途端。俺の足元から這う様に延びた氷の蔦が。

黒っぽい人を雁字搦めにして、ピキピキ音を立てながら身体半分以上凍らせる。

ま、凍らせた、ってゆっても表面だけだし。

なっても霜焼け程度だ。

無駄な殺生はしない様に、って止められてるからなーアイツラに。

有り難く思えよ?





「It・・・・・・It takes!」





あ、そうそう。青服青年。





つい、と顔を下に向けてみると。

俺より背が低かったらしい青年が、すっごい目で睨んできていた。

でも暴れるのは止めたみたいだ。腕力じゃ俺に敵わないって悟ったかな?

何か訴える様に、俺の背後と俺の顔を、交互に見る。





・・・・・・・・・・・・何か、途轍もなくイヤな予感が・・・・・・・・・・・・





そろー、っと。そろー、っと。

・・・・・・・・・・・・うわぁ。やっぱり。

何時の間にか、ソコには黒っぽい人のお仲間らしき人々が。

しかもダース単位で銃器付きですか。





「・・・・・・あ〜・・・・・・」

ちょーっと、困っちゃうなあ。

取り敢えず?行動不能にした上でとんずら?

ソレが1番だろーなー。

よし。そうと決まれば逃げますか。逃げませう。





「一先ず風の牙っ、ついでに凍結蔦っ、オマケだ黒煙舞っ!!」

思い立ったら即行動。

取り敢えず、殺傷能力の低い小さなカマイタチを無数に作って相手に嗾け。

ヤツラの気を削いだトコロで、膝から下全部を氷付けにして地面に貼り付けて足止めして。

ついでに目晦ましの煙幕も広範囲に。





ソレから俺はガシィッッ!!と青年の腰を抱き。

どころか米俵みたいに担ぎ上げ。





「He plans to carry out you and what!!?」

「口閉じてないと舌噛むぞっっ!!」





耳元でがなり立てる文句らしきモノにも聞く耳持たず。

忍時代に重宝した俊足で、戦場を駆け出した。




 




 




 




 






<<バック                    ネクスト>>
<<バック トゥ トップ>>