「うそん!!??」





イキナリ。ほんっと突然。

シーツと身体の間に空いた真っ黒い穴に。

俺は、間抜けな声を上げるしかなかった。




 




 




 




 




 




 
ふしぎのせいねん




 




 




 




 




 




 
落ちる。堕ちる。おちる。・・・・・・オチル。

ドコから、ドコへ?

・・・・・・さっきまで俺、ベッドの上にいたハズなんだけどなー。モチ、自分の部屋の。

なのにナニユエ空中?

なーんも無いお空の真っ只中なワケ?





しかもまだ落ちる。ひゅーっと、落下中。

いっそ軽快なくらいに。

穴の出口はかーなーり、高い場所だったとゆーコトですかい。

・・・・・・ああ、風の音が耳に痛いよ。





「つか何でこんな目に〜!!?」





ついさっきまで、キッチョーな魔術書片手にほくほくしてたハズなのにっっ。

何度も何度もソレこそスッポンみたいにしつこくシツコクッ、持ち主を脅したり持ち上げたりして。

よーやく、ホンットよーやく。

「だーもううっせぇ!!わーった貸してやる貸せばいーんだろーがっ!!」

と快く(?)貸してくれたブツをっっ。

呪術とは違った構成とか魔法陣とか、舌噛みそうな長ったらしい呪文とか。

ウキウキ気分で鼻歌混じりに読み出したばっかだったってのに!!





はうっ!!もしかして蛮っっ!!?アイツひょっとして!!?

ねちっこく「貸〜し〜て〜」攻撃した俺への腹いせに、魔術書になんか呪いでも掛けた!!?

いや、呪術は俺の専売特許か。





・・・・・・・・・・・・つーか、ちょっとまて?

・・・・・・・・・・・・鼻歌混じりに??

・・・・・・・・・・・・ハナウタマジリニ???

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・そーいや、読んでたトコって、ちょーど空間転移に関する術式の辺りだったよーな・・・・・・





・・・・・・もしかして、俺って、鼻歌混じりに・・・・・・

じゅ、呪文なんか・・・・・・口ずさんでませんでした??





「うわ〜ん俺のバカ野郎ー!!!」





叫んでみても状況は変わらない。

つか、更にヒドイ方向へ。





上から下へ掛かる重力と。

下から上へ掛かる風圧とで。

身体全体、辺に圧力掛かって気分ワルイ。

しかも漸く見えてきた大地は。

・・・・・・大地・・・・・・は・・・・・・





「ちょっと待てぇぇぇええいっっ!!?」





なにゆえ!!?何故ドンパチ起こってるワケ!!?

つーかコレまるっきり戦争じゃねぇ!!?

はっ、もしかしてココって激戦区っっ!!?





「よりによってどーしてんなトコに・・・・・・っっっ!!!」





思わず舌打ち。

でも悪態吐いたトコロで事態が好転するワケでもないし。

つかもー地面目と鼻の先だしっっ!!?





右手の親指を素早く口元に持ってって、ギッ!と犬歯で噛む。

思った以上に深く切れて、見る見るうちに赤い玉を作ったその指を、すいっと空中に滑らせた。

――――――コレが、俺の望みに対する、俺からの代償だ。





「っ、風っっ!!」





言の葉に力を込めて、呼ぶ。

途端、甘い華に群がる蜂の様にワラワラと。

大気の中に潜む、姿無きモノ達が集まってきて。





「頼むっっ!!」





幾ら俺でも、んな高いトコから落ちたらタダじゃ済まない。

死にはしないけどさ。つか、コレっくらいじゃ死ねないっつーのがホントのトコロなんだけど。

痛覚判らないから怪我するのは別に構わないし。

だけど身体の損傷は行動力の低下に直結。

右も左も判らない、しかもこんな戦地のど真ん中で立ち往生するワケにはっ!!





なんて一瞬考えてたら。

轟っっ!!!

そんな俺の意を汲んでくれたのか、風が上昇気流を作ってくれた。

地面まで、後10数メートル、ってトコロで。

・・・・・・真下にいた、何人かが煽りを喰らって吹き飛んでたけど。

やっはっは。気にしない気にしない。





重力・風圧の上に更にGか掛かって、胃の中のモン全部逆流しそうだったのぐっと堪えつつ。

叩き付けられて五体バラバラになるよかマシってなモンで。

そのままふわりと地面に着地。





ほっと一息・・・・・・と思いきや。

飛んで来る来る、鉛玉の雨アラレ。





「うわわわわっっ!!?」





思わず踊りはねましたとも。

あーもー!!ちゃんと敵と味方と無関係者との区別くらい付けろっつーの!!

・・・・・・え?無理?・・・・・・当り前かやっぱり。





ま、コレも何かのチャンス、ってコトにして。

何事も前向き姿勢が肝心。

さっき読んでた魔術書の中身試しで使ってみちゃえvv





「風の盾っ!!」

踊り続けるのも面倒臭くなって、右腕一振りして壁を作る。

おお、初めてにしては上出来。

コレでひとまず小休止。





だけど、そうは問屋が降ろさない、ってのが世の常。





「Freeze!」





ビィン・・・・・・と。

張り詰めた声が、俺の鼓膜に響いた。




 




 




 




 






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