「いや、くん。別にそんな、気にしなくたって良いんだよ?」

「イエそれフツーにムリですから」



 見舞いの定番、豪華な果物籠を手にやってきた元総帥は。

 告げられた少年の言葉に、困った様な顔をした。

 其れでも少年は、対峙する男性の表情を気にするでも無く。



「先立つ物が無いんで、身体で、って事になりますけど」

「イヤでもあの子達、まだ十を過ぎたばかりなんじゃないのかね?君だって、私から見れば」

「けど腕は確かですよ?アナタだって見たでしょう?・・・・・・俺はまだ、本調子じゃないけど」

「そういう意味じゃ無くてだね・・・・・・あの子等も、君も、未だ子供だと言っているんだよ」

「子供で在る事が免罪符になるなんて俺は思ってません。アイツラだって、ソレ位判ってるし」

「しかしだね・・・・・・」

「――――――そろそろ白旗上げたらどうですか、マジック様?」



 尚も言い募ろうとした男性を、背後からやんわりと止める、声。

 見れば黒髪に赤い眼の青年が、トレイを持って苦笑じみた表情を浮かべながら。

 差し出されるのは、香り立つ紅茶。



「壊したモノを当人が弁償するのは当り前です。くんの言ってる事は道理に適ってる」

「しかしだね、ジャン・・・・・・」

「迷惑を掛けてしまった人達に恩返しがしたいというのも。アナタは彼の素直な気持ちを、無碍にするんですか?」

「いや、そういう訳じゃないんだがね」

「しかも結構頑固みたいですよ。アナタや俺達がコレ以上何を言っても聞かないんじゃないかな」

「だが・・・・・・」

「何も前線で戦うだけが仕事じゃ無いんです。研究の助手、書類整備、出来る事は幾らでもありますよ」

「・・・・・・判った・・・・・・受け入れよう」



 何処か疲れた様に。小さく吐息を落としながら零す。

 けれど、と続けられた言葉。

 組んだ指の上から少年を見る彼の視線は、真摯で、優しい。



「君達は大切な客人だ・・・・・・其の事を、忘れないでいて貰えると嬉しい」



 男性の言葉に、少年は一度大きく眼を瞠り。

 其れから、はにかむ様に笑みを零して小さく頷いた。




 




 




 




 




 










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