二人の子供に拠って破損した建物や庭の、修繕費。
其れを働く事で返したいと言った少年の言葉は、元総帥のみならず現総帥すら口を濁したが。
「人様に迷惑を掛けたんです。当然でしょう?」
有無を言わせぬ意思を持って言われては、反論も出ない。
子供達も、自分達が事を起こした手前、仕方が無いと諦めているし。
しかし、次にサラリと流された科白に、色めき足ったのは1人だけで無く。
「まあ、俺の体調が完璧に戻って、俺達が帰るまで、という期限付きになりますけど」
「え?って、帰り方知ってんのか?どうやって?」
「まさかナルトみたいに行き当りばったりじゃないだろうな」
詰め寄る様に身を乗り出した子供達に。
何を当り前の事を、と少年は苦笑した。
「お前等ね・・・・・・術は俺の本職だぞ?」
ベッドの上。クッションで上体を支えたまま、笑って子供達を手招く其の仕草。
誰もが思う。
此れが、『心』在る時の少年の姿か、と。
血に塗れていた指は白く細く、優しげに子供達の頭を撫で。
人形の様に虚ろだった眼は、柔らかい光を湛え。この子供達が可愛いと、心底愛していると公言して憚らない。
人の肉片を喰らっていた、あの時の狂気は微塵も感じられず。
余りにも落差が在り過ぎて、空恐ろしささえ、感じた。
――――――恐ろしい。
こんな、不安定で脆く、歪みに歪み切った。
否、歪み切っているどころでは無い。既に何処かが壊れている。この少年の精神は。
でなければ、如何してひとつの肉体に共生させ収める事が出来ようか。
人を喰らう程の強烈な殺人衝動と。人を愛し慈しめるだけの深い慕情を。
「・・・・・・ソコまで言うならしょーがねぇな。精々こき使ってやるよ」
溜息混じりに零した現総帥に、浮かべられた少年の淡い微笑。
透明で、儚くて・・・・・・本当に、振れた途端溶けて無くなる雪の結晶の様だ。
其れは、何処か見る者の心を、痛ませる。
そんな彼等の心情を知ってか知らずか、目の前の少年は只、笑みを浮かべるだけで。
「・・・・・・おい、キンタロー」
「何だ」
「コイツはオメーとグンマ、後はジャン辺りにでも任せる。異世界の事とかイロイロ聞きてーんだろ?」
「・・・・・・そうだな。そうして貰えれば有り難い」
「ナルトとサスケ、だったか。オメー等はコタローの相手だ。言っとくが、手ぇ抜くとダメージすげぇぞ」
「ソレは肉体的に?ソレとも精神的に?」
「両方」
聞いた途端、どんなダメージだ、と眉を顰める子供達の表情に少年はプッと噴出し。
大人達は、年相応の其の笑みに漸く安堵の息を漏らした。
何はともあれ、暫く異界の忍達はコチラの世界に居座りそうである。
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