「眼が覚めて間もないのに、急激な運動をするからですよ」



担ぎ込まれた少年に、これ見よがしな溜息吐きながら、医師は優雅に紅茶を飲む。

大人しくシーツの上に沈んだ少年は、もう指一本すら動かすのも億劫そうで。

けれど律儀に、すみませんと小さく謝った。



「・・・・・・が謝る必要は無い。元はといえばこのウスラトンカチが」

「仕掛けてきたのはサスケだろ」



当然の如く付いてきた二人の子供が、又も不穏な空気を背負い始める。

少年は深々と、本当に深々と溜息を吐いた。



「・・・・・・・・・・・・ナルト、サスケ」



頼むから無駄な体力を使わせるな、と。

言外にそういった気配を滲ませる少年に途端、ぐっと唇を噛み大人しくなる子供達。

そんな二人に、少年は次に小さな笑みを向け。



「トコロでお前ら、どーしてココにいんの」

状況から考えるに、俺ってば神隠しの森の時空の歪みにハマッちゃったと思ったんだけど?

まさかお前ら、追っ掛けて来たとか、そんな向こう見ずな事やったってゆーんじゃないだろね。



にこり、にこにこと。笑って訊ねる少年の目だけは妙に真剣で。

まさか其の通りです、とは軽く言えそうに無く、しかし其の沈黙こそが、答となってしまう。



「・・・・・・お前らね。前にも言ったろ?空間に関与する術は、下手したら禁術の部類に入るんだぞ?」



溜息混じりに呟く少年に、子供達はますます口を噤むばかりだ。

禁じ手となる術の大半は難易度が高い。一歩間違えれば、術者をも巻き込む。

其れは例え、獣を裡に飼う子供でも。血に愛された子供でも。

まあ、不覚にもタカが時空の歪みに跳ばされてしまった自分も悪いのだが、と。



「・・・・・・ま、来ちゃったモンは仕方ねーか」



少年は、苦笑一つ落として二人の頭を撫でた。




 




 




 




 




 










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