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スパッ!!と枝が鋼糸によって輪切りにされれば。
カカカッ!!と木の幹に手裏剣が刺さる。
端から見ていれば、此れは立派な死闘だ。
繰り出される何もかもに、殺傷能力が在り過ぎる。
だがしかし。
「無計画!!行き当たりばったり!!だから何時も仕様もない生傷絶えねーんだこのバカ!!」
「お前は細か過ぎるんだよ掠り傷くらいで何時も何時もネチネチとっ!!」
「親切心で言ってやってんだろうがこの大雑把!!」
「んなモンでっけえ世話だ神経質!!」
合間を縫って聞こえる怒号は、低次元な言い合い。
ギャラリーには判らない、過去の事まで引き出して。
双方、大分頭に血が昇っているらしい。
叫びの間に息を切らせながら。
其れでも一発殴ってやらないと気が済まないとばかりに相手に立ち向かう姿は、意地というか何というか。
「あーもーイイ加減頭きたっ!!」
「ソレはこっちの科白だっ!!」
イヤもう既に充分キテます。
思わず入れたくなった突っ込みも、当り前だが二人には届かず。
金と黒。二つの影が、不意に止まる。
漸く終わりか、否此れで終わりな筈が無いと成り行きを見守っていたギャラリーの目の前。
互いの左手。凝縮するのは――――――片や嵐。片や光。
・・・・・・コレはちょっと、イヤ可也ヤバイんじゃなかろうか。
戦いを知るからこそ判る。肌に感じる、其の威力。
在れはどちらも、たった一撃で難無く人の命を狩る事の出来る力だ。
ヒヤリと危険を感じて、総帥が止めようと身を乗り出した、矢先。
「螺旋丸!!」
「千鳥!!」
叫びながら、二人の脚が地を蹴った。
双方真っ直ぐ、相手を見据える視線は逸らされる事が無い。
待て、と言おうとした声は出なかった。
ぶつかり合う気迫の余波が、突風となって見物人達まで襲う。
思わず腕を上げて顔を庇う。二人の子供を中心に、巻き起こった砂埃。収まるまで身を硬くして遣り過ごし。
頼むから出来立てほやほやの死体が二つ転がってません様に、と視線を上げれば。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・え・・・・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・げ。」
二人の拳は、見事に乱入者に止められていた。
其の存在を認めて漸く我に返ったらしい。
子供達は人形の様に硬直し、目に見えて青褪める。
そんな二人の凝視、更には驚愕に目を丸くしたギャラリー達の視線に晒されて。
日光の元、黒い髪がさらりと揺れる。
俯いていた顔が、上げられた。二人の子供の拳を止めたまま。
金糸と黒糸に目を向ける。其の色は、世に二つと無いだろう朱金と青銀。
彼は一つ溜息を吐くと、次に大きく息を吸い込んで。
「・・・・・・・・・・・・いーい加減にしろ、お前等ーーーーっっ!!」
怒声は、驚く程に中庭に木霊した。