著名な人物の論文にあった。
物語の中の舞台。夢の中で見た場所。
其れは皮一枚、隔てた他空間で、確かに存在しているのだと。
「あの島があった処も、空間の歪みが関係していただろう?」
不思議の子供達からの説明を受け、総帥の分身はそう言った。
恐らくは異次元。平行世界と呼ばれる世界からの来訪者なのだろうと。
彼等も、死んだ男も――――――そして、彼の少年も。
「ナルホドねぇ・・・・・・有り得なさそうで充分有り得る話だよな」
乱暴な手付きで己の頭を掻きながら、総帥が溜息混じりに零す。
其れは夢物語だ。
彼等にとっては現実で、だからこそ事実を言ったのだろうが。
常識ならば気が振れているのかと白い目で見られても仕方無い。
しかし、と。総帥は考える。
少年を負い掛けて来たという、二人の子供。
彼等の態度に、声に、そして瞳に。
嘘は見当たらなかった。
其れに何より、多聞なこの分身の言葉に、間違いは無いのだ。
誰一人、頭ごなしに否定する者は一人もいない。
「・・・・・・普通なら、ナニ馬鹿な事言ってんのさって一蹴にしてのけるんだろうけどなー」
「あの子達も、すっごい驚いてたよねぇ。僕等がアッサリ話を受け入れた時さ」
「気持ちは判らんでも無いがのぅ」
「まあ、わてらもよう似た事に遭遇した事ありますさかいなぁ」
しみじみ呟く総帥の弟に、従兄弟の博士が笑い。
意味深に頷く侍に、京を思わせる美人がはんなりと微笑む。
実際、此れくらいで現実逃避をする様な見解を彼等は持っていなかった。
此れしきの事を甘受出来なければ、アレはどうなのか。
「網タイツの魚人や、オカマ言葉の雌雄同姓体を知ってるけぇのぉ」
「・・・・・・コージ、頼むからあのナマモノ達の事は口に出すな。沸いて出て来そうで怖い」
「喋る毒キノコとかビートマニアのラッコとかもいてはりましたなぁ」
「・・・・・・アラシヤマ。お願いだから思い出させないでくれる?」
のほほん、と言う侍と京美人に、げっそり、とした感を拭えない兄弟。
在る意味穏やかな会話だったが。
がしがしと髪を掻きつつ零した総帥の言葉に、再び沈黙した。
「まあ、取り敢えず・・・・・・コレからアイツラをどーすっかだよな」
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