己達は何か、と問われれば。忍以外の何者でも無いとしか答え様が無かった。

 生まれた時から忍と共に暮らし。彼等の背を見て育ち。

 又、忍になる事を義務付けられていた自分達である。

 だから忍であるとしか言い様が無いし、其れ以外には、成り得ない。



 ならば彼もか、と問われれば。

 其れには、答を窮する他無かった。



「・・・・・・古今東西、人を喰らうのは鬼か悪魔って相場は決まってるんだけどね」

は鬼でも悪魔でも無い」



 取り合えず、と場を移した広い応接室。

 血に汚れた物から真新しい服に着替えさせられ。

 ソファに座らされぐるりと大人達に囲まれた二人の子供は。

 其れでも気丈に、掛けられた問いにきっぱりと否定を返す。

 けれど大人達は、其の答に到底納得出来る筈も無く。



「じゃあ何だ?まさかタダの人間ですってワケでもねぇだろ?」

「到底そうは見えなかったが」



 左右から同じ顔の、しかし目の色も髪の色も違う美丈夫から発せられる声。

 そう思われるのは当然かも知れない。

 彼等は、此れは鬼か、と思う瞬間を、目の当たりにしたのだ。

 ――――――思い出しただけで、未だに強烈な吐き気が襲う様な。



「・・・・・・アイツは、人として見られた事の無かった人間だから」



 ぽつり、と。小さな声が零れた。

 見れば座る金の髪の。苦しく歪んだ哀しそうな、顔。



「・・・・・・そして、自分が人だという自覚を持たない人間だった」



 黒い髪が続ける。吐息混じりに。

 痛そうに其の胸元を掴み。

 眉根を顰める大人達に、ぽつりぽつりと言葉を吐き出す。



 十五になるまで、道具でしか無かった。

 空の色も。風の香りも。何も知らずに。暗い地下牢に、閉じ込められていた。

 不定期に与えられていたのは、淀んだ水と、虫の集る残飯と、死んだ人間の腐肉だけで。

 其れだけを糧にして、ずっと生きてきた、人。



「・・・・・・死ななければどうでも良い、そんな扱いを、されて生きてきたんだ」



 少しはマシになっていた筈だったのに、と。

 泣きそうに歪む子供達の顔。

 其の様子に、大人達は聞いてはいけない物を聞いたかと、目を見合わせ。

 苦い沈黙が、場を支配した。




 




 




 




 




 










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